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大国のエゴに沈んだNPT再検討会議 (各紙)

2005-05-28 23:44:20 | on Peace
【ニューヨーク会川晴之】核拡散防止条約(NPT)再検討会議が決裂した最大の原因は、核軍縮をめぐる核保有国と非同盟諸国の厳しい対立にある。米国は今回の会議で核実験全面禁止条約(CTBT)を拒否する姿勢を貫き通すなど、核軍縮問題に触れることを一切拒んだ。この姿勢が中東諸国の強い反発を誘引、「会議を壊そう」という“負の連鎖”が拡大した。
日本や欧州諸国など多くの国は、今回の会議でNPT強化策の採択を目指したが、失敗に終わったことでNPT体制の弱体化は否めない。
ただ今回の会議では収穫もあった。国際原子力機関(IAEA)の抜き打ち査察を可能とする追加議定書に慎重な姿勢を示していた南アフリカ、ブラジルなどの国々が同議定書の重要性に触れ、普遍化に向け一歩近づいたのも事実だ。 (毎日新聞のサイトから)

【ニューヨーク=石黒穣】全体会議は、会議開催の事実を記録した事務的文書採択、加盟国の演説の後、セルジオ・ドゥアルテ議長が閉幕を宣言。議長は閉幕のあいさつで、「条約が全加盟国から全面的な支持を受けているとの確信を強めた」とだけ述べた。
会議の決裂が決定的になってから、日本などはドゥアルテ議長に対し、全会一致による合意文書に代わり、議長声明を出すことを働きかけたが、議長は加盟国の立場の隔たりを埋めることができないとして、断念した。
アナン国連事務総長は、会議が何の成果も生まなかったことについて、「核の脅威に対して安全を高める決定的な機会を逃した」として、「遺憾」を表明。全体会議の各国演説でも日本、欧州連合(EU)などから遺憾表明が相次いだ。
会議は開幕直後から議題の決定でもたつき、3週目に実質協議に入っても、米国、イラン、エジプトの33か国が自国の利害が絡む分野で一歩も譲らない姿勢に終始し、合意文書の作成が進まなかった。 (読売新聞のサイトから)

【ニューヨーク27日宮崎智三】核拡散の恐れが現実化する中、会議の完全な失敗は、今後の世界の核情勢に重大な影響を及ぼしそうだ。
日本やカナダなど二十カ国以上が発言し、合意できなかったことへの遺憾の意や失望感を強調した。米国とイランは「条約違反」「会議の失敗を望んでいた」などと名指しで互いを批判した。
二日に開幕した会議は議題などをめぐる空転が続いたうえ、核軍縮の現状や中東問題の扱いなどで非同盟諸国と米国などとの意見対立が最後まで埋まらなかった。広島から大勢の被爆者や市民が傍聴したほか、四日には広島市の秋葉忠利市長が演説し、二〇年までの核兵器廃絶を訴えた。 (中国新聞のサイトから)

各紙が伝えるとおり、といってもハッキリとそうは書いていないが、NPT再検討会議が決裂した最大の原因はブッシュ政権の核拡大路線であることは明らかだ。ブッシュ政権の強硬路線に対抗せざるを得ない(というのもヘンな言い方だが)立場にある非同盟諸国は、アメリカが譲歩しないのなら…、ということにならざるを得ない。
しかし、問題はこれだけではない。日本をはじめとしたアメリカの友好国は、どれほど真剣に、アメリカに非核化を訴えてきたか? 広島と長崎の市長は一貫して核廃絶を訴え続けてはいるが、日本政府はどうだったのか? あえてアメリカに、核廃絶を直接訴えることはしてこなかったのではないのか? 日本国内にあるアメリカ軍基地に、あるいは日本に寄港する米軍の艦船に核兵器は無いと本気で思っている日本人は、おそらく半分もいないだろう。日本の市民は、政府の非核三原則に、アメリカに関する特約条項があると思っていると言っても、決して言い過ぎではない。
日本のエネルギー政策も、核兵器廃絶からは遠いものだ。原発燃料の再処理施設は、原発だけでなく原爆製造にも有効であるので、世界の趨勢は、核の平和利用を隠れ蓑にしないために、核燃料の再処理はしない方向へ向かっている。この事実を、日本のメディアは、しっかりと伝えただろうか? 大広告主である電力会社に遠慮するような報道しかしていないと言われても仕方のない状況なのではないか?
核の脅威は、核兵器だけのものではない。原発などの核施設やその廃棄物による被曝の問題にも目を向けなければならない。今回の失敗から立ち直らなければ、地球に未来はない。

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1 コメント

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核のない平和な世界に向けて、できることから (真田しゅうりん)
2005-05-29 06:19:50
TBありがとうございます。

私の記事には日本の原子力政策の矛盾には触れていなかったのですが、貴記事のとおりだと思います。核のない平和な世界に向けて、できることから取り組んでいきたいと改めて思いました。
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