趣味人Tの伝言

日々の趣味活動についてご紹介

スラブ軌道-9

2023-11-27 08:10:21 | gallery:省力化軌道

第9回では防振型スラブ軌道と、スラブ軌道に使用される締結装置について紹介します。

初期のスラブ軌道は武蔵野線や湖西線といった都心近郊部に大量敷設されましたが、防振構造ではありませんでした。このためスラブ軌道=うるさいという印象を持っている方も多いかと思います。

 

防振スラブ軌道が開発された経緯は1972年に暫定開業した山陽新幹線まで遡ります。

新大阪-岡山間で合計約16kmのA形スラブ軌道が敷設され、開業前に高速走行試験を実施しました。

その結果、有道床軌道と比べて騒音・振動が大きいことが判明し、対策を講じることになりました。

まず1974年から1975年にかけて、姫路駅構内、長坂寺高架橋、小坂西高架橋において軌道スラブとCAモルタルの間にスラブマット(防振ゴム)を挟んだ防振A型スラブ軌道が試験敷設され、普通スラブとの振動及び騒音の比較検証が行われました。

上の写真は当ブログで何度か登場している姫路駅構内の下り通過線の防振A形スラブ軌道。

座面式のA-51形(防振A型、初期)で、平板スラブ用の逸脱防止ガードが設置済みです。

さらに山陽新幹線の岡山~博多間ではスラブマットのばね定数を高くした防振B型も試験敷設されましたが、実用には不十分と判断されました。その後、東北新幹線ではスラブマットのバネ定数をA型よりも下げて敷設し、このタイプを改めて防振A型と呼称され汎用されるようになりました。

 

防振スラブ軌道にはA型からH型まで8種類があり、E型を除いた7種が平板軌道スラブになります。

A、B、Dはスラブマットのバネ定数による違いのため、外観から判別することは困難です。F型はスラブマットの代わりに弾性樹脂をてん充したもので、C型とH型は軌道スラブの質量を大きくすることで振動・騒音低減を図った設計になります。(C型は形状変更、H型はコンクリートの比重増加)

在来線向けA-155形スラブ軌道の違いを見てみましょう。

上:武蔵野線の普通スラブ+直結8形締結装置

軌道スラブの下と突起の間にCAモルタルのみてん充されている普通スラブ軌道です。

 

下:紀勢本線海南駅の防振スラブ+直結8形締結装置

高架化は1998年ですが、平板スラブと型枠施工のCAモルタルの組み合わせです。

 

下:鹿児島本線吉塚駅構内の防振スラブ。連続立体交差化により2004年に竣工しました。

パンドロール締結装置にロングチューブ施工の新しい形態です。

 

梅小路短絡線の廃線跡にできた梅小路ハイラインには防振型スラブ軌道を間近で観察できるスポットがあります。断面を観察すると黒いスラブマットが挿入されているのが良く分かります。

 

防振G型スラブ軌道は溝付きマットと中抜き構造が採用されています。日野土木実験所や小山試験線の試験を踏まえ、1984年に高架化した古河駅付近の区間において防振A型と改良版の防振G型が敷設され、比較検証が行われました。この区間は60kgレールが採用されています。

上の写真は古河~野木間にある防振G型とA型の境界部。施工延長からの推定ですが、左奥の突起が分割されている所から手前側が防振G型スラブ軌道になります。この防振G型スラブ軌道は国鉄標準規格JRSにも登録されていることから、平板防振スラブの完成形とも言えます。

 

外観が大きく変わったのは防振C型とE型で、これらはスラブマットの形状や特性変更とは異なるアプローチで設計されています。まずは小山試験線に敷設された防振C型から見てみます。

パッと見は弾性枕木直結軌道のように見えますが、突起コンクリート間は一枚の軌道スラブで形成されています。突起の高さが低いことからも分かるように、平板軌道スラブの上面に枕木状の突起をつけて中間質量を大きくしています。隙間にはバラストを撒くことで消音効果も期待できます。

防振E型は組立式の枠型スラブ軌道となっています。これは施工管理の容易な形状の部材をPC鋼棒で緊締して組み立てる方式で、設計安全率の向上や軌道スラブの更換作業効率向上を図っています。

スラブマットは東北新幹線向けの防振A型と同様のばね定数となります。また、長手方向部材と左右を繋ぐ間隔材の間には緩衝材が挿入されています。枠内には消音バラストを散布できる構造です。

 

一体型の防振枠型スラブ軌道は、1985年に開業した東北新幹線の上野-大宮間(日暮里駅付近)に試験敷設されました。掘割部で跨線橋が架かっているため、観察にはもってこいの場所です。

スラブマットは防振G型と同様の溝付で、枠内に消音バラストが散布されています。

直線、急勾配の明かり区間で軌道延長200m以上という条件に近いため選定されたようです。

 

最後にスラブ軌道用の締結装置についてご紹介

タイプレート締結式の軌道スラブには直結5形締結装置が使用されました。

直結5形は板バネ内側の端部でレールを抑える構造です。また、板バネやタイプレート、絶縁カラーなどは50T形レール用の規格品となっていますが、さすがに50Tレールとスラブ軌道の組み合わせは現代では見れないかと思います。

 

直結5形は山陽新幹線においてボルトの弛緩や板バネの脱落等の問題が生じたため、以後の新設区間では改良型の直結8形が主に使用されます。

直結8形の板バネは配線用の片サドルを逆さまにしたような形状が特長です。

 

一方で、座面式の軌道スラブには直結4形が使用されます。

直結4形は板バネが上下とも固定ボルトを跨いでいるような形状です。絶縁カラーの有無により明かり区間用とトンネル用の2種類があります。さらに、60kgレール用の板バネは明かり区間用とトンネル用で形状が分かれています。絶縁カラーやバネ受け台は50T形レール用が使用されます。

 

A-151形(座面式スラブ)+直結4形と、A-155形(平板スラブ)+直結8形の境界部

座面式と平板はタイプレートの有無もあるため軌道スラブの厚みが異なります。

 

直結7形は高さ調整余裕量が多く、土路盤上など将来的に路盤沈下の可能性がある箇所の敷設に使用されています。板バネはS字状をしており、タイプレートのショルダーにより上下30mm、更にタイプレート下に調節パッキンを挟むことで上下20mmの調整が可能です。

 

近年ではパンドロール社の締結装置が採用されている場所も増えてきました。

クリップ形は先端側でレールを抑えるEクリップ形と、先端が外側を向いているPRクリップ形、左右対称で性能・施工性を改良したファーストクリップ形の3種類があります。

上:パンドロール Eクリップ形

下:パンドロール PRクリップ形

下:パンドロール ファーストクリップ形

 

パンドロール Vanguard (ヴァンガード)

住友商事のHPによると、この締結装置はレール腹部をゴム製のくさびで挟み込み、レールを持ち上げて保持する極めて独創的な締結装置で、高い防振・防音効果があるそうです。

つづく

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スラブ軌道-8

2021-08-23 00:10:25 | gallery:省力化軌道

今回は量産化された枠型スラブ軌道を見ていきたいと思います。

試験線を紹介したスラブ軌道-7も合わせてご覧ください。

 

1997年に開業した北越急行ほくほく線は本格的に枠型スラブ軌道が採用されました。

もともと国鉄が北越北線として計画した路線のため、1978年の工事実施計画の時点でスラブ軌道の採用が盛り込まれていました。

ほくほく線では一部区間で開床式高架橋が採用されており、なおかつ側壁がないこともあって非常に開放的な高架橋となっています。開床部の軌道スラブには転落防止のグレーチングが設置されています。

十日町駅付近は通常の高架橋。分岐器周辺は合成まくら木直結軌道です。線内ではノーズ可動クロッシングも多数導入されていますが、十日町は制限速度の関係で固定式のようです。

雪対策としてスプリンクラーが設置されています。2015年に特急はくたがが廃止され、通過線は休止線となってしまいました。苔むした路盤コンクリートに時代変化を感じます。

 

1994年に開業した智頭急行智頭線では智頭-恋山形間の橋梁に枠型スラブ軌道が敷設されています。

初期の施工でよく見られる軌道スラブの番号が確認できますね。

突起間が5mなので、100枚なら500mほどの区間であると分かります。

 

1999年に開業した井原鉄道井原線

星田川橋梁に50mほどですが枠型スラブ軌道が敷設されています。

 

愛知環状鉄道は1988年に開業した路線ですが、JR東海の岡多線から引き継いだ区間もあることから国鉄/JRに準じた軌道構造が採用されています。(その7から記事を移行しました。)

2004年の愛知万博輸送に備え複線化された区間は、開業時に突起コンクリートが打設済みであったためスラブ軌道が採用されました。ただ、関西空港線の例のように平板より枠型の方がメリットが大きいため枠型スラブ軌道が採用されたようです。開口部のバラストは騒音対策で散布されています。

トンネル内はレール締結部に凹凸のある見慣れない枠型スラブが敷設されていました。

 

2011年に開業した函館本線野幌駅の高架区間にも枠型スラブ軌道が敷設されています。

JRの在来線において枠型スラブ軌道が本格的に採用された例は殆どなく、また2010年代の施工とあって珍しい例になります。野幌はスラブ軌道-1でも紹介しましたが、消音バラストの入った袋がみっちり敷かれています。

 

1992年に開業した山形新幹線の福島アプローチ線は枠型スラブ軌道が採用されています。

日暮里付近の試験線の結果を踏まえ、約600mの区間に敷設されています。

単線なので車内から観察出来ないのが痛手です。

 

その後、北陸新幹線の高崎-軽井沢間を皮切りに新規開業区間へと波及していきます。

これらの地域では寒冷地仕様の平板スラブと枠型スラブが用意され、明かり区間用とトンネル区間用で締結装置の固定方法が異なる計4種類が基本形式となりました。(一部曲線用もあります。)

 

東北新幹線の延伸区間では積雪量が少ない八戸付近などで枠型スラブ軌道が採用されています。

90年代以降はパンドロール型締結装置が増えてきたことも特筆できますね。

 

2004年以降に開業した九州新幹線でも枠型スラブ軌道は本格的に採用されましたが、この頃から四隅にRを付け、内側の開口部に勾配を付けた改良型が登場します。この改良によって軌道スラブ製作時の型枠脱却作業性が向上しており、製作費の低減が実現しました。

さらにスラブ1枚あたりの締結金具の数を片側8個から7個に変更しています。

2022年に開業した西九州新幹線も同様の軌道構造で建設されています。

保守基地にトンネル区間用のAF-57形が設置してありました。手前は明かり区間用のA-55です。

座面式のためタイプレートが無く、スラブの厚みや上面の形状が異なります。愛知環状鉄道のトンネル区間の物と同様ですね。

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スラブ軌道-7

2019-07-14 20:23:09 | gallery:省力化軌道

7回目となったスラブ軌道の記事ですが、今回は枠型スラブ軌道の試験線について紹介します。

スラブ軌道の進化と共に登場した枠型スラブ軌道ですが、平板スラブと比較して軽量で表面と内部の温度差に起因するソリが少ないなどメリットが多くあります。そんな枠型スラブ軌道の歴史を振り返ってみたいと思います。枠型スラブの中で最も古いのは1960年代に登場したL-150形スラブ軌道でしょう。

L型はレール直下に帯状の緩衝材を配置し、軌道スラブを支持する構造をしています。軌道スラブは4ヵ所ほど開口部があるラダー状で、外側も路盤から浮いていることからレール直下のみで支持していることが良く分かります。また、突起コンクリートが矩形な点も主流のA型とは異なります。このL-150形はえちごトキめき鉄道の浦本トンネルと総武本線の中川放水路橋梁に試験敷設されています。

 

その後、軌道スラブの軌間内を大きくくり抜いた枠型スラブが登場します。

1971年に関西本線の朝日駅構内にスノーフリーの枠型スラブ軌道SA-155形が敷設されました。

SA-155形はコンクリート桁直結軌道に挟まれる形で敷設されており、軌道スラブの周囲は鉄板で覆われています。スノーフリーを謳うくらいですから、桁にも開口部があるのか気になるところです。

下の写真が枠型スラブの両端にあるコンクリート桁直結軌道。こちらも枠型となっています。

また、朝日駅から少し離れた本線上には土路盤向けRA-116形も敷設されていましたが、近年バラスト軌道化されています。恐らく米原のように軌道スラブの沈下サイクルが短くなったのではないかと思われます。

 

1972年、羽越本線の金浦-仁賀保間の複線化に伴い、260mほどスラブ軌道が敷設されました。

そのうち白雪川鉄橋についてはSA-145形とSA-155形が敷設されています。

SA-145形は全長4mで締結具が片側7個、SA-155形は全長5mで締結具が片側8個です。

横から見るとL型のようなラダー状のスラブに見えますが、これは枠の中に枕木のような台を載せているためです。恐らく転落防止の金網を設置するために設置したと思われます。開床式の軌道構造は降雪時の除雪作業軽減に貢献しそうですね。

 

山手貨物線の池袋付近には新田堀踏切と鎌倉第一踏切が残っていました。

しかし旅客列車の増大による踏切解消を目的として、立体交差化が1994年に行われました。

併走する山手線は掘割構造となっていたため、貨物線の軌道を掘り下げて橋を延長する工事となったそうです。その際に延長した堀之内橋と宮仲橋の路盤に枠型スラブ軌道が採用されました。

立体交差化は宮仲橋付近から始められたため、こちらも同様の枠型スラブ軌道が敷設されています。この開口部が2分割の枠型スラブは山手線の土路盤上枠型軌道と同じ物に見えます。

堀之内橋には205系のレリーフが掲げられていました。205系は1985年の登場ですが、この絵はJRマーク付きということで1987年以降の姿、かつスカートの設置開始が1996年頃なので、製作時期はある程度絞れますね。(上にも書いた通り、橋の竣工は1994年です)

 

1994年に開業した関西空港線は様々な省力化軌道の試験線が敷設されています。

スラブ軌道は平板スラブ、平板防振スラブ、枠型スラブの3種類が敷設されました。

平板スラブと枠型スラブの境界を捕らえることができました。枠型スラブは平板と比べ幅がやや狭く、中央に開口部を設けることで建設費と材料費削減を実現しています。また、緩衝材のCAモルタルは不織布のロングチューブに入れるロングチューブ工法が採用され、CAモルタルの注入量の削減と施工性の向上を実現しています。防振スラブは防振マットの弾性により外側のCAモルタルの剥がれが顕著だったようですが、ロングチューブ施工法はそのような症状に見舞われる心配もありません。

前述の枠型と比べると中央枠の四隅の角が落とされていますね。応力集中を防ぐためでしょうか

また、突起と軌道スラブの間のてん充層には合成樹脂が採用されているため白っぽく見えます。

こちらも平板スラブで採用されているCAモルタルは敷設後20年経過後にヒビ割れが発生していたのに対し、健全な状態を維持していることが確認されています。

 

量産された枠型スラブ軌道は次回に続きます。

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2021/08/21 加筆修正

2024/2/16 日暮里、恵比寿を別記事に移行

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スラブ軌道-6

2018-06-17 21:02:47 | gallery:省力化軌道

2021/08/21 山手線の画像追加、加筆修正

 

その6では土路盤上スラブ軌道についてまとめました。

土路盤上スラブ軌道RA型が初めて営業線に敷設されたのは1971年のことです。

東海道本線の平塚-大磯間に建設された相模貨物駅にRA-116形が100mほど敷設されました。

翌年の1972年には大阪駅構内や灘-三ノ宮間にもRA-116形が試験敷設されました。

RA型は土路盤を転圧し、アスファルトを主とした下部舗装・上部舗装を施工してその上に軌道スラブを据付します。舗装路盤と軌道スラブの間にはセメントモルタルを填充します。また、スラブの裏に凹みをつけることで填充されたセメントモルタルにより抵抗力を得る点は初期のA型と同じです。

上記2枚は大阪駅構内のフィルム写真です。

その後これら試験線は撤去されてしまいましたが、各地に敷設されたRA型は今も現存しています。

 

羽越本線 金浦-仁賀保 下り線 

1972年の複線化に際し従来線の海側に新線を敷設しました。

このうち白雪川鉄橋を含む260mほどがスラブ軌道で敷設されています。

 

羽越本線 小波渡-三瀬 下り線

1978年の複線化に際し、山側に上り線のトンネルが新設されました。

従来の海沿い経由の線路は下り線となりましたが、その際に線路改良が行われスラブ軌道化されたようです。トンネル内はコンクリート路盤のためA型でしたが、明かり区間はRA型が敷設されました。

 

しなの鉄道 信濃国分寺-大屋 下り線 (旧信越本線 上田-大屋間)

1972年、大屋-上田間の複線化で敷設されました。軌道スラブには番号が振られていますね。

この区間は曲線中での施工性や低盛土区間における地盤の挙動調査を目的として敷設されました。

 

中央本線 田立-南木曽 下り線

1973年の電化及び複線化に伴い敷設されました。近くには旧線の廃線跡も残っているようです。

RA-116形はスラブ長さが1mとA型の標準長5mと比べるとかなり短尺です。

その理由は、地盤支持力が一様ではなく長尺だと不等沈下を招く恐れがあるためとしています。

 

湖西線 近江塩津駅構内

両渡り線の手前に敷設されています。短区間ながら上下線とも施工されています。

この区間では16mの高盛土区間における性能評価が行われました。

当該盛土は経時沈下量が少なく土路盤上スラブ軌道の採用に適した条件が明確になりました。

 

東海道新幹線 豊橋駅構内12番線

相模貨物駅に続いて敷設されたのが豊橋駅12番線のRA-16形。かつては上り本線にも設置されていましたが、2000年頃に一部の区間で高低調整量が30mmに達したため、軌道スラブを扛上し早強性セメントアスファルト填充材による補修が施されました。しかし経年による補修サイクルが短くなってきたことから2013年にバラスト軌道化されました。

12番線のRA-16形は1971年に敷設されたもので、前述の上り本線区間より2年前に敷設されたものですが、高速走行する列車は通過しないため比較的健全な状態を保つことが出来ていた考えられます。しかし、こちらも2017年の時点で軌道スラブの枚数が減っており、2018年には完全にバラスト軌道化されてしまいました。

 

上越新幹線 本庄早稲田駅構内熊谷方

本庄早稲田駅の熊谷方の掘割区間に200m程ですが土路盤上スラブ軌道が敷設されています。

RA-116形やRA-16形と異なり締結装置が片側3ヵ所のやや長めの軌道スラブですね。

2004年の本庄早稲田駅の開業に伴い分岐器を挿入することになり、継足しスラブ方式で土路盤上スラブ軌道の分岐器が設置されています。

新幹線のスラブ軌道分岐器についてはスラブ軌道-3で紹介しています。

 

北陸新幹線 高碕-安中榛名

RA型スラブ軌道を採用するにあたって、複数の軌道構造が存在すると連続した施工ができないため建設コストが増える、また軌道構造の継ぎ目では軌道狂いが生じやすいといった問題点が挙げられました。このため北陸新幹線以降、適切な支持条件を満たした切土や盛土にコンクリート路盤を施工したスラブ軌道が適用されるようになりました。

高崎-安中榛名間の掘割区間がその土路盤向けA型及びAF型スラブ軌道の最初の施工区間になります。また枠型スラブ軌道のCAモルタル施工において、ロングチューブの中に填充するロングチューブ工法が確立されたことから、建設コストの削減を図ることが出来るようになりました。

山手線 渋谷-代々木 内回り

在来線に戻ります。1992年、山手線において各種省力化軌道の試験線が敷設されました。

舗装軌道や弾性枕木軌道などスラブ軌道以外の省力化軌道も積極的に開発が進んでいた時期です。

この区間では比較的良好な土路盤上に軌道スラブを敷設し、バラスト軌道に対する沈下特性が比較検証されました。軌道スラブはA型の平板と枠型が使用され、既存バラストにCAモルタルを注入した強化層で支持する構造とし、周囲はアスファルト舗装されています。

この軌道の沈下速度はバラスト軌道の約1/10と進行が緩慢であるという結果が得られています。

E型舗装軌道やTC型省力化軌道も並び、省力化軌道の見本市のような区間です。

 

p.s. スラブ軌道-5にA-143/152/161形を、スラブ軌道-4にM-131/141形を追加しました。

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スラブ軌道-5

2017-08-09 01:00:59 | gallery:省力化軌道

その5ではA型スラブ軌道の試験線と初期型を紹介します。

A型スラブ軌道は現在も改良を重ねながら採用されているスラブ軌道の実質的な標準構造です。

↑全国で見られるA型スラブ軌道。防振型や枠型を含めバリエーションは多岐に渡ります。

この形態になるまでにいくつもの試験線が敷設され、検証結果が反映されていきました。

 

開発当初は勾配や曲線半径等の線路条件により、A-151~A-153形の3種類を使い分ける想定をしていました。実用化が進むにつれて、明かり区間ではA-153(A-55)をベースとした突起有り・タイプレート式に一本化されていきます。

総武快速線中川放水路橋梁の下り線に敷設されているA-151形は半径800m以上、勾配10‰以上の区間向けに開発されたスラブ軌道です。在来線のスラブ軌道としてはえちごトキめき鉄道(旧北陸本線)の浦本トンネルに続いて2番目に古いもので、昭和44年(1969年)12月に敷設された試験線です。

座面式の締結装置が採用されているため軌道スラブの長手方向に溝が掘られています。

ここの締結装置の形状は圧縮スプリングを用いたあまり見かけないものでした。

ちなみに上り線は同じく座面式のL型。異なるスラブ軌道が並ぶ光景も試験施設ならではです。

 

常磐緩行線の綾瀬-亀有間にあるA-151形試験線は昭和45年(1970年)7月に敷設されました。

この区間の架線にはエアセクションが設置されているため迂闊に停車出来ませんね。

後で気が付いたのですが、手前から2番目の軌道スラブはA-161型でした。(下写真矢印)

A-161形は軌道スラブが6mで締結装置は片側に10個配置されています。

単線区間のため前面展望か後面展望でないと線路状態を確認できません。

圧縮されていますが、締結装置は板バネを用いた直結4形という座面式でよく見られる形状。

中川放水路橋梁と同時期の施工ということもあり、その他の変更点は特に無さそうです。

 

スラブ軌道が長距離に渡って敷設されたのは山陽新幹線の岡山-博多間が最初です。

新幹線向けのスラブ軌道は標準軌・60kgレール用のA-51形とA-55形が設定されました。

A-51形はA-151形ベースの座面式でトンネル用、A-55形はA-153形ベースのタイプレート式で明かり区間用として敷設されています。

新大阪-岡山間のスラブ軌道率は僅か5%ですが、その中で姫路駅構内と姫路-西明石間の長坂寺高架橋にはA-51形の防振A形スラブ軌道の試験線が敷設されています。↑長坂寺高架橋、↓姫路通過線

どちらも平板スラブ用の薄型逸脱防止ガードが設置されています。

 

A-51形とA-55形は寒冷地向けに改良を加えられ東北・上越新幹線の80~90%もの区間に適用されています。保守基地にて研修用と思われるA-51形とA-55形の並びを見ることが出来ました。

手前がA-55形、奥がA-51形。座面式のA-51形の方が軌道スラブの厚みがありますね。

A-51形の直結4形締結装置は調整幅が少なく、通りが狂いやすい区間では整備が大変なんだとか

 

武蔵野線の新小平駅と前後区間にはA-152形が昭和48年(1973年)に敷設されました。

A-152形は半径800m以上、勾配10‰以下の線路条件で使用されることを想定した設計です。

スラブ相互間の突起を無くし、底面に設けられた凹みによりスラブの移動を防止しています。

締結装置は座面式の直結4形。上り線には何故か2枚だけA-153形も紛れていました。

余談になりますが新小平駅は1991年の水没事故により新秋津方の軌道が破壊されたため、復旧の際にバラスト軌道へ変更されています。擁壁などに駅構造物が隆起した痕跡が今も残っています。

 

北朝霞駅構内から新座駅にかけてもA-152形が敷設されていました。

武蔵野線は高架区間が多く、スラブ軌道が長距離に渡って敷設されているケースが多いです。

軌道スラブの端部を望む。

締結具が外れている場所がありますが大丈夫なんでしょうかね…

この区間にもA-152形に混ざってA-153形が敷設されています。

もしかしたらA-152形を敷設する際の位置基準にしているのかもしれません。

 

新大阪の新幹線ホーム25・26番線は昭和49年(1974年)12月から共用が開始されました。

突起が無くA-152形の新幹線版(A-52形?)に見えますが、締結装置はタイプレート式の直結8形(直結5形の改良版)のためスラブの上面はフラットです。

開業初期の21~24番線は直結軌道、1985年に増設された20番線はA-55形、2013年に増設された27番線は弾性枕木直結軌道と、施工時期に開きがあるため見事にバラバラなのが面白いです。

 

奈良線の木津~上狛間に架かる木津川橋梁。

橋梁内部をよく見ると一部区間だけスラブ軌道になっていますね。

運転台から近くを撮ってみました。このスラブ軌道はA-143形というここだけでみられる形式。

軌道スラブの長さは4mで座面式の直結4形締結装置が採用されています。(軌道延長48m)

この部分だけわざわざコンクリート路盤を敷いており、中々お金が掛かっているとお見受けします。

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2018/5/28 加筆修正

2022/11/23 加筆修正

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