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【実録】会計事務所(公認会計士・税理士)の経理・税金・経営相談

大阪市北区の築山公認会計士事務所(築山哲税理士事務所)です。
身近な疑問の解説と役立つ情報の提供をさせていただきます。

会社の廃業と代表者の家族(廃業したくても廃業できない)

2020-05-03 23:30:00 | 廃業、会社清算
昨年の12月、このブログでは新たに「廃業、会社清算」というカテゴリーを設けました。当たり前ですが、そのときは「コロナ」でこんなことになるとは全く予想もしていませんでした。

今のような状況で、冷静な判断をするのは並大抵のことではありません。しかし、これは声を大にしていいたいのですが、廃業(場合によっては倒産)の手続は、それを理解して適切なスケジュールを立てればそんなに難しくありません。

廃業しても、倒産しても、再起することはできます。このブログが少しでもお役に立つことを願っております。

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会社を廃業すると代表者以外の様々な人に影響が及びますが、中小零細企業の場合にはとりわけ代表者の家族への影響が大きく、その対応に思いのほか手間がかかることがあります。

◆家族が役員あるいは従業員である

家族が役員あるいは従業員として会社から給与収入を得ている場合には、会社の廃業とともにその収入が途絶えます。会社からの給与収入が主な収入源でそれを生活の糧にしているのであれば、新たな収入源を探す必要があります。

会社の資金に余裕があるのであれば、役員あるいは従業員である家族に退職金を支給することができます。しかし、これは会社に相当な残余財産、つまり清算時に残る資産でもってすべての負債を返済することができ、さらに資金が残る場合に限られます。

◆家族が株主である

家族が株主である場合には、残余財産の分配を受けることができます。残余財産とは、清算時に残った資産から負債を差し引いたもので、返すべきもの(払うべきもの)を支払った後に残る資金のことです。

株主は残余財産がなければその分配を受けることができません。代表者の家族である株主であっても、返すべきもの(払うべきもの)をそっちのけにして会社から資金を引き出すことはできないのです。

◆家族からの借入金がある

会社が代表者の家族から資金を借りている、つまり、家族が会社に資金を貸していることがあります。この場合、その家族は会社にその返済を求めることができますが、それには会社にそれを返済するための資金がなければなりません。

◆家族が会社の借入金の保証人になっている

家族が会社の借入金の保証人になっている場合には、会社がその返済ができなければ肩代わりをしなければなりません。この肩代わりは会社が清算し消滅した後も続きます。

◆家族が会社名義の不動産に住んでいる

家族が会社名義の不動産に住んであり場合には、会社を清算してその不動産が他者の所有となれば、その者に対して賃料を支払わなければなりません。この賃料が高額で支払えないのであれば、他に自宅を探すしかありません。また、事情によっては退去を求められる場合があります。

◆家族が会社に不動産を賃貸している

会社を清算すれば会社との賃貸関係がなくなり、賃貸収入もなくなります。引き続き賃貸収入を得たいのであれば他に賃借人を探さなければなりません。

◆家族が会社と一切の関りがない

家族が会社と一切の関りがない場合には、会社の廃業に関する諸手続の一切に家族は関係してきません。しかし、代表者の会社からの収入(役員報酬や賃料など)で生活をしている家族は新たな生活費の源泉を確保しなければなりません。

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★廃業に備え会社と家族の関係を徐々に減らしていく
中小零細企業の場合、代表者の家族と会社の関係が深く、その関係を廃業するからといってすぐさま解消させることが容易でなく、廃業の妨げになることがあります。廃業を意識するようになったのであれば、まずは廃業が家族に与える影響を認識して、会社と家族との関係を徐々に解消していく必要があります。ただひとつの関係のために「廃業したくても廃業できない」ということにならないようにしなければなりません。

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決算申告をしていない(廃業もできません!)

2020-05-01 17:30:00 | 廃業、会社清算
コロナ・・・、本当に大変なことになりました。税務申告に関しては申告期限の延長や納税の猶予が認められています。期限内に申告や納税が困難な場合には、これらの扱いの適用を受けるべきです。しかし、延長や猶予はいつまでも認められるわけではありません。廃業する場合には、必ず申告に納税という手続を考慮したうえで行動してください。

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会社を清算するには、すべての負債を返済しなければなりません。この負債の中には税金も含まれます。ですから、会社を清算するには決算申告をして、その分の納税も済まさなければならないのです。

「苦しいのだから、当然国は助けてくれる」は甘いです。むしろ、税務署のほうが金融機関などの債権者よりも強硬な手段に出ることがあります。

◆通常事業年度の申告(解散するまで)

会社が解散(営業活動を停止)するまでは通常どおりの申告をしなければなりません。例えば、12月決算(事業年度が1月1日から12月31日まで)の会社が、9月30日に解散した場合には、1月1日から9月30日までの9か月間については今までどおりの申告が必要です。

◆清算事業年度の申告(解散の翌日から)

会社が解散(営業活動を停止)した翌日からは清算事業年度となります(最長1年間で、1年で清算が終了しない場合は以後1年区切りを何度でも)。清算活動が始まると、今までのような売上や仕入は生じません。しかし、清算活動による「資産の売却益」「債務の免除益」「残余財産の分配」の結果として、清算活動独自の課税関係が生じ法人税、消費税、源泉所得税を納税しなければなりません。

会社が解散し清算に突入したことは登記を通して税務署に知られますので、税務署はそれを見逃すことはありません。税務署をないがしろにしての清算はあり得ないのです。

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廃業しようとする会社の中には、決算申告をしていない会社があります。「面倒なので」「費用(経理事務員の給与や税理士報酬)がもったいない」というのがその理由です。

◆経理担当者は解雇し、税理士との契約は解除している

一般的に廃業しようとしている会社は資金繰りも苦しいことから、後先を考えずに目先の経費を削減したいという理由だけから経理担当者は解雇し、税理士との契約を解除していることが多いです。

その後、自身で記帳・決算・申告を試みるも全く歯が立たず、申告期限は過ぎ去り、税務署からの強硬な申告納税の催促から逃げ回っているという有様です。当然、このままでは会社を清算することさえできません。

◆とにかく税理士に相談する(思いもよらない妙案があるかもしれません!)

記帳・決算・申告をしないまま申告期限が過ぎ去り途方に暮れている場合には、とにかく税理士に相談することです。契約を解除した税理士には相談できないでしょうから、別の税理士に相談します。

税理士であれば、状況に応じた対応を心得ています。帳簿もなく領収書を紛失していても、簡単に済ませてくれる場合もあります。費用も驚くほど安い場合もあります。これは、税理士の勘と経験です。教えることも、言葉や文章にすることもできません。当然、ネット上で調べることもできません。

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会社を廃業する際に残る不動産(解散の延期も)

2020-04-17 19:00:00 | 廃業、会社清算
会社を廃業する際に不動産が残る、「売りたいけれども買い手が現れない」「事情により売ることができない」ということがあります。

◆買い手が現れない(解散の延期)

会社の廃業に際して会社が所有する不動産を売ろうとしても、一向に買い手が現れない場合には解散を延期するしかありません。解散後は清算作業(資産の換金と負債の返済)を行いますが、不動産は売却して換金しなければ清算を済ませることができないからです。

また、解散をすると以後は清算業務しか行えませんので、「本業の利益で不動産の維持費を賄う」「不動産を自社では使用しないで誰かに貸す」という選択肢が失われます。

◆金融機関の抵当権が設定されている(競売あるいは任意売却)

不動産に金融機関の抵当権が設定されていて、その不動産を売却しなければ金融機関からの借入金が返済できない場合の清算手続は大変です。金融機関の許可なしに不動産を売却できないからです。

「抵当権」というのは法務局で登記もされている極めて強力な権利です。返済ができない場合には裁判所が介入する「競売」というという手続によって強制的に不動産は売却され、金融機関はその売却代金を回収に充てることができます。競売によらず「任意売却」という方法で不動産を換金することもできますが、それには金融機関の同意と介入が必要です。

抵当権の対象となっている借入金の返済が現状の資産で十分できる場合には、全額を返済して抵当権を抹消してもらうことです。そうしておけば不動産を自由に売却することできます。

◆経営者個人で買い取る(課税関係が深刻な事態を招く場合もある)

不動産を経営者個人で買い取るという方法があります。その資金がない場合は、経営者個人が金融機関などから借りて買い取ります。それも無理な場合は、経営者が退職金代わりに土地を引き取ります。

なお、この経営者との取引は「適正な」取引価格でなければ税務上の問題が生じます。高くても、低くても問題です。高ければ会社に利益が、低ければ経営者に所得が生じそれぞれに法人税あるいは所得税が課税されます。

◆賃貸しており第三者が使用している

不動産を会社とは無関係の第三者に賃貸している場合も厄介です。賃借人がそう簡単には退去してくれず、賃貸したままでの売却ができなければどうにもなりません。

◆経営者の自宅にしている

会社所有の不動産を経営者の自宅にしている場合があります。会社を清算して、その不動産が他者の所有となれば、その者に対して賃料を支払わなければなりません。この賃料が高額で支払えないのであれば、他に自宅を探すしかありません。また、事情によっては退去を求められる場合があります。

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★不動産は会社に余力があるうちに手放す
会社の廃業に際して不動産の処分が難航する場合があります。「最後の砦」や「世間体」はもっともなことですが、会社の廃業を意識しているのであれば、できるだけ早い段階で不動産の処分方法を検討し、実行可能な選択肢が多いうちに行動する必要があります。

★優良不動産が残る場合(不動産賃貸業への転業)
十分な賃貸収益を生む不動産が残る場合には、本業はやめて不動産賃貸業に転業するという選択もあります。この場合には、引き続き経理業務や決算申告が必要となります。また、経営者の年齢や健康状態によっては早期に会社の後継者を育成しなければなりません。

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廃業しても残る負債(株主有限責任とは名ばかり)

2020-04-09 18:30:00 | 廃業、会社清算
廃業しようと思っても、今の状態では負債(金融機関からの借入金や仕入代金の未払いなど)が残るので廃業に踏み切れない経営者(同時に会社の株主=出資者でもある)がいます。「株主有限責任」とはいうものの、「会社にこれ以上の支払能力がないので払えない」とはいえない事情がそこにはあるのです。

◆金融機関からの融資に対する経営者の個人保証

中小零細企業の場合、会社が金融機関から融資を受ける際、経営者個人がその保証をすることが当然のようになっています。つまり、会社が廃業をして返済できなくなっても、経営者個人がその私財をもって金融機関からの借入金を返済しなければならないのです。

経営者の個人財産が担保提供されている場合には、この担保提供資産でもって返済(代位弁済)することになります。担保提供資産が経営者の自宅である場合には、経営者は住まいを追われるのです。

◆信用保証協会の保証は「立替え払い」に過ぎない

中小零細企業では、金融機関から融資を受けるにあたって信用保証協会からの保証を受けることがほとんどです。この信用保証協会の保証というのは、会社が返済できない場合の「立替え払い」に過ぎませんので、信用保証協会は立替え分の請求を会社に求めてきます。この請求は、会社が清算によって消滅した後は経営者個人に対してそのまま続きます。

◆債権者(金融機関以外の仕入先など)はそう簡単には引き下がらない

債権者(金融機関以外の仕入先など)に対して経営者が個人的に保証することはまずはありません。それだけに、債権者は会社の財務状況の変化には敏感で、会社の危機を察知するとすかさず取引条件の変更や取引停止といった行動に出てきます。

資金繰りに窮すれば、安易に債権者へ支払いをストップする経営者がいますが、そのようなことをすれば、たちまち会社の信用は失墜し、仕入もできず、売上は激減し、会社は活動停止へと追いやられます。

このような事情から、廃業するにあたっては、金融機関からの融資の返済は当然として、債権者への支払いも全額済まさなければならないのです。これができなければ廃業ではなく「倒産」となってしまいます。倒産ですので、経営者は、会社のみならず自身の信用や人間関係までも失い、以後の人生において大きなハンディを背負うことになります。経営者として再起することが不可能になるだけでなく、特定の地域での居住さえ困難となってしまいます。

◆最後に残るのは社長借入金だけ(清算に際して免除する)

清算をするには一切の負債を残せませんので、会社の資金で負債の支払いができない場合には経営者個人が肩代わりをします。

経営者による肩代わりの結果として、最終的に残るのは「社長借入金」という負債だけになります。当然、資産はゼロです。会社に返済原資はありませんのでの社長借入金を返済することはできません。清算に際しては負債を残せませんので、経営者は社長借入金を免除しなければなりません。

なんとも悲しい結末ですが、廃業する会社の中にはこのようになる会社が少なからずあります。しかし、倒産(破産)によって自身の信用や人間関係を失うわけにはいきませんので、このような選択をするしかないのです。

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★税金や社会保険料
当然、税金や社会保険料も払わなければなりません。「苦しいのだから、当然国は助けてくれる」は甘いです。

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残余財産(株主への分配は最後)

2020-04-07 15:00:00 | 廃業、会社清算
残余財産とは、会社が清算する際に残る財産のことです。会社を清算するにあたっては、全ての資産を換金し、全ての負債を返済しなければなりませんが、残余財産とはその結果として残った財産(通常は現金)のことです。残余財産は、株主にその持ち株割合に応じて分配します。

会社においては、株主が残余財産の分配を受ける権利よりも債権者(仕入先、従業員、金融機関など)が返済を受ける権利が優先されますので、資産を換金したならば、まずは債権者への返済に充当しなければならないのです。負債を返済しない限り残余財産は確定しないということです。

株主は会社に出資をしますが、会社が活動している間は出資した資金を特定の株主にだけ払い戻すということは認められません。株主への出資の払い戻しが認められるのは、会社が清算をして残余財産を分配するときだけなのです。

◆残余財産が資本金(出資額)よりも多い場合

残余財産が資本金、つまり株主の出資額よりも多い場合、その出資額を超える部分の分配は株主に対する配当となります。配当ですので株主に所得税が課税されます(株主が法人の場合は法人税が課税される)。

資本金(出資額)・・・1000万円
残余財産・・・1200万円

1000万円の出資が1200万円に増え、出資額に上乗せして株主に分配されるわけですから、株主は200万円の利益(所得)を得たということです。

◆残余財産が資本金(出資額)以下の場合

残余財産が資本金(出資額)以下の場合、株主に対する課税はありません。

資本金(出資額)・・・1000万円
残余財産・・・1000万円

出資した額が増えていないので所得は生じません。

資本金(出資額)・・・1000万円
残余財産・・・800万円

1000万円の出資が800万円に減ったわけですから、株主は200万円の損をしたということです。

◆残余財産はマイナスにはならない(株主有限責任)

残余財産がゼロとなり、株主がその出資額のすべてを失うことはあります。しかし、残余財産がマイナスになるということはありません。

資本金(出資額)・・・1000万円
資産・・・1000万円
負債・・・1500万円

この場合、資産よりも負債が500万円多いですので500万円の負債は返済できません。

しかし、株主はこの返済できない負債について会社に代わって返済する義務はありません。株主は出資した1000万円を失うだけです。追加で500万円を負担する義務はありません。これを「株主有限責任」といいます。

500万円の返済を受けられなかった債権者は500万円の損害を被ることになります。

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設立当初に出資した資本金が、その後「何に使われた」とか「増えたか減ったか」について会社が活動している間は意識することがありません。このことが明らかになるのは会社を清算するときだけなのです。

ほとんどの中小零細企業では、経営者(社長)が全額を出資しています。経営者が会社を設立してから清算するまでの「実入り」は「全期間の役員報酬の合計」と「残余財産」です。残余財産がマイナスであれば実入りは減るということです。

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