goo blog サービス終了のお知らせ 

【実録】会計事務所(公認会計士・税理士)の経理・税金・経営相談

大阪市北区の築山公認会計士事務所(築山哲税理士事務所)です。
身近な疑問の解説と役立つ情報の提供をさせていただきます。

決算申告をしていない(状況によって対応は異なる)

2020-06-20 10:00:00 | 廃業、会社清算
会社は存在している限り(法務局に登記されている限り)決算申告を行う必要があり、申告期日が近づくと税務署(税務署のほか都道府県税事務所と市町村、以下同じ)から申告書の用紙と納付書が送られてきます。

無申告状態でいると、税務署から申告するようにと電話や書面で再三にわたり催促があります。しかし、決算申告作業ができる経理担当者も雇用しておらず、会計事務所(税理士)にも依頼していない場合には、とりあえず返事だけをしておくしかありません。そして、再度の催促に怯えながら過ごすこととなります。

========

一言に決算申告をしていないといっても様々な状況が考えられ、その状況によって対応も異なってきます。

◆休業状態になった場合

休業(休眠)とは、会社が提供する商品やサービスの需要がなくなる、商品やサービスの供給能力がなくなるなどして、会社がその活動を停止している状態をいいます。このような場合、会社を「清算」するか、そのまま「休業」にしておくかについて考えなければなりません。

「清算」とは会社を消滅させてしまうことで、清算をすれば法務局の登記からも消えてしまいます。しかし、清算する場合であっても清算結了するまでは通常どおり経理業務(日常の記帳と決算)を行う必要があります。

「休業」とは会社を法的には存続させておきながら一切の活動を停止することで、法務局での登記はそのまま残しておきます。休業の場合には「利益ゼロ=課税されず」としての申告を会社が存在している(法務局で登記されている)限りは続けなければなりません。

◆著しい業績不振の場合(今後も営業は継続する)

著しい業績不振に陥っている会社の共通点は、金融機関からの膨大な借入金を抱えもうこれ以上融資を受けられないということです。融資の申込みには決算書が必要ですが、融資を受けないので決算申告をするモチベーション(?)がなく、決算申告が滞っている場合があります。また、目先の経費を削減したいという理由だけから後先を考えずに、自ら決算申告を行う能力がないにもかかわらず、経理担当者は解雇し会計事務所(税理士)との契約を解除しています。

大変かもしれませんが、営業を続ける限り決算申告は欠かせません。「融資を受けないので決算書は必要ない」「業績が悪いので法人税は課税されない」とはいきません。金銭出納帳、売掛帳、買掛帳などの基礎資料(専門知識がなくても作成できる帳簿)を整備し、自社で経理担当者を雇用する、あるいは会計事務所に依頼して遅れを取り戻すことです。

◆破産などの法的手続を行う予定

借入金の返済や仕入代金・給与などの支払いができず、破産や民事再生といった裁判所や弁護士が介入する法的手続を行う場合も決算申告は必ず行わなければなりません。記帳と決算をしていなければ財産(資産と負債)の状況は把握できず、税金という債務も確定しません。財産を正確に把握して、「もう、返せない(払えない)」ということを正確な数値を基に明らかにしなければ破産や民事再生はできません。

◆その他の場合

昨今、上記以外の理由で決算申告をしていない会社が目立ちます。そのひとつの原因が会計ソフトの普及です。会計ソフトメーカーの「誰でも」「簡単」というキャッチフレーズを真に受けて会計ソフトを導入したけれども、専門知識が必要な部分につまずいて決算申告ができないという事態に陥るというケースです。

決算申告が自力でできない場合には、経理担当者を雇用するか会計事務所(税理士)に依頼するしかありません。

=========

★極めて粗雑な決算申告方法

これは一般的にいえることですが(決してご自身が楽できるように解釈しないでください)、休業状態にある会社や著しい業績不振に陥っている会社はどう転んでも課税されない状態であることが多いです。そのような場合には「極めて粗雑な決算申告方法」でも目的は十分果たせると思います。

「極めて粗雑な」といえば大変過激な言葉かもしれません。決算書や申告書を「スケッチ感覚」で作成してしまうのです。当然、不正確な結果しか得ることができません。しかし、無申告よりは「マシ」です。また、状況(特に逆立ちしても課税されない状態)によっては大勢に影響ないかもしれません。

★業績不振であっても消費税と源泉所得税には注意!

業績不振であっても消費税の申告納税が必要となることはあります。また、源泉徴収が必要なことがほとんどですので源泉所得税には注意が必要です。

【PR】記事の内容と直接的な関連はありません。



廃業後の人生(会社は休業、個人事業者で再スタート)

2020-06-13 09:30:00 | 廃業、会社清算
廃業する会社の多くは経営者が高齢で後継者もいません。

「(仕事が減って)いつの間にか社員もいなくなった」
「借金もない(会社が縮小する過程でゼロになった)」
「余生は年金で暮らせる」

草木が枯れるように、自然に、静かに、人知れず廃業していきます。

========

経営者が現役世代である会社の廃業も目立ちます。特に昨今は製品やサービスのライフサイクルが著しく短期化しているために、会社設立後10年程度での廃業が多くなってきています。そうであるならば廃業ではなく「転業」も一法なのですが、設立から10年も経過すれば経営者もすっかり中高年者の域に達していることがほとんどで、設立時と比較して気力と体力は衰え、さらに激変する社会への適応力も失われているので転業は不可能といえます。

◆廃業という「経歴」

会社を廃業したならばどこかに「就職」しなければなりません。その際、履歴書の経歴欄に事業に失敗して廃業したことをどのように記載すればいいのでしょうか?

正直に書いて、正直に説明するしかないと思います。「特技」「技能」には絶対になりません。

◆借金が残っている

廃業時に会社の借金が残ってしまい、代表者個人がその保証をしていたことから、廃業し会社が消滅した後もその返済を少しずつ続けなければならないことがあります。この返済が滞ると債権者が勤務先に連絡をしてくる場合がありますので(給料の中から強制的に回収しようとする)、約束した条件は必ず守る必要があります。

◆事業をしていたころの関係者との接触

廃業後も事業をしていたころの関係者と接触することが考えられます。廃業するまでに、「依頼のあった納品や仕事は済ませ」、「返すべきものは返し」、「支払うべきものは払い」であれば一切負い目を感じる必要はありません。

「やめて(会社を廃業して)気楽になっただろ?」、「サラリーマンは気楽でいいよな!」、「やめることができる人は羨ましいよ!」などの嫌味をいわれても気にする必要はありません。

◆個人事業者として再スタートする

会社で事業をしていると税務申告や社会労働保険などの手続が複雑で費用(税理士報酬など)も掛かることから、それを理由に会社を廃業するケースが目立ちます。この場合、会社の事業を経営者個人に引き継いで、個人事業者(個人事業主)として再スタートすることも可能です。ただし、取引先によっては法人としか取引をしない場合もありますので、事業規模は相当縮小するのを覚悟しておかなければなりません。

◆再起!(会社は休業にしておく)

比較的若くして廃業した場合には再起することも可能です。特に廃業の原因が、災害や業界の一時的な低迷など、突発的でいずれは収束するものである場合には状況が好転するのを待てば再起できます。再起するには、新たに会社を設立しなければなりませんが、廃業時に将来的な再起を考えているのであれば、会社を清算する(消滅させる)のではなく「休業(休眠)」にすることも検討すべきです。

【PR】記事の内容と直接的な関連はありません。



廃業を決めたら最初にすること

2020-06-09 17:45:00 | 廃業、会社清算
廃業をして会社を消滅させるには一定の手順を踏まなければなりません。特定の作業や手続を飛ばせば前に進めないようになっています。

◆金融機関からの借入金の返済(代表者の個人保証に注意!信用保証協会の仕組みにも!)

廃業しようと決めたならば、会社に金融機関からの借入金がある場合には、まずはこれを返済してゼロにすることです。金融機関は、融資した資金が返済できるよう様々な手を打っていますので、「廃業するので返せません」とはいえないようなシステムになっています。

まずは、代表者個人の保証です。会社が返済できない場合には代表者が私財をもって返済をしなければなりません。わが国の中小零細企業の借入金の大部分が代表者個人の保証付きです。

次に、担保提供している資産です。代表者個人の保証では不足しそうな場合には資産を担保として提供しなければなりません。担保として提供する資産が代表者名義の自宅であれば、会社が返済できない場合には代表者は住む場所を失います(住み続けるとしても賃料を支払う必要があります)。

信用保証協会の保証にも注意が必要です。信用保証協会は会社が返済できない場合に「立替払い」するにすぎません。信用保証協会は立替払い分を、まずは会社に請求し、会社が支払えない場合には経営者個人に請求してきます。このことを知らない人が非常に多いです。

◆役所関係の手続

役所関係の手続も無視することはできません。税務申告、社会・労働保険関係手続など、必要な手続を怠っていると役所から執拗な督促を受け、手続を済ませるまでは許してもらえません。その督促の厳しさは金融機関以上かもしれません。

◆従業員への通知

従業員を雇用しているのであれば解雇をしなければなりません。経営者にとっては非常につらい決断ですが、正直に会社の実情を説明して、いずれは給料が支払えなくなることをはっきりと告げなければなりません。従業員にしても、給料がもらえない会社に勤めるわけにはいきません。

◆得意先の絞り込み(廃業までの収支計画)

廃業をすると決めたならば得意先を増やす必要はありません。むしろ、採算の悪い取引先との関係は解消しなければなりません。廃業するまでには様々な支出がありますが、その支出が十分賄えるような水準であれば、できる限り得意先は絞り込んでおくべきです。そうしておけば設備や従業員は減らせ、業務量は減り、代表者は廃業に向けての業務に集中できます。

◆関係先への連絡(この先はいっきに手続を進める)

関係先に廃業する旨を告げたならば、もう後へは引けません。得意先は新たな商品やサービスの提供先を探さなければなりません。仕入先は代金を確実に回収しなければなりません。

関係先への連絡後の収支はとくに入念に予測計算しておき、支払い不能に陥らないようにしなければなりません。関係先への連絡が済み、関係先が了解してくれたのであれば、やがて営業活動は停止になります。

◆登記手続(解散、清算結了)

会社を廃業して消滅させるには、法務局で解散と清算結了という登記手続をしなければなりません。この手続をしなければいつまでも会社は存在していますので、いつ何時、債権者が表れて支払いの督促を受けるかもしれません。また、誰かに会社の名義を不正に使用されるというリスクもあります。

名実とも解散し清算も結了しているのであれば、登記をしていればもう誰からも文句をいわれる筋合いはありません。

【PR】記事の内容と直接的な関連はありません。



廃業と倒産の違い(借金は返せるか)

2020-05-16 12:30:00 | 廃業、会社清算
廃業と倒産の違いについてよく聞かれます。ほとんどの人は倒産についてマイナスイメージを抱いています。そして、廃業と倒産を混同して、廃業をためらうことがあります。

◆廃業は自主的に事業をやめること

廃業も倒産も事業をやめて会社が消滅する点においては変わりありませんが、廃業は自主的に事業をやめることをいいます。一方、倒産は事業をやめるしかない状況に追い込まれて事業をやめることをいいます。

廃業の場合は、「経営者が高齢になり後継者がいない」「扱っている商品やサービスの需要が減ってきている(かといって転業することもできない)」などを理由に、将来的に事業が成り立たなくなることを見越して自主的に事業をやめます。当然、返すべきものはすべて返して、支払うべきものはすべて支払います。

倒産の場合は、「金融機関からの借入金が返せない」「仕入先などへの代金が支払えない」「従業員の給料も支払えない」といった状況に陥り事業継続が不可能となります。そして、弁護士や裁判所が介入して事態を収拾します。そこには経営者の意思はほとんど反映されません。

◆廃業のプロセス

会社は次のようなプロセスを経て廃業をします。

取引先や従業員に廃業する旨と営業活動停止の時期を告げる

営業活動の停止(販売の停止、従業員の解雇)=解散

すべての資産を換金してすべての負債を返済する=清算作業

残余財産の分配=清算結了(会社は消滅する)

倒産との決定的な違いはすべての負債、つまり「借入金は返済する」「仕入代金や給料は支払う」ということです。

◆倒産のプロセス

倒産のプロセスは次のとおりです。

業績不振などを理由に借入金の返済や仕入代金などの支払いが滞る

会社に対する信用不安から営業活動に重大な支障が生じる

負債(借入金や仕入代金などの未払い)を整理しないと収拾がつかない

裁判所の介入によって資産を換金して可能な限り負債を返済する

会社を消滅させる(切り捨てられる負債がある)

廃業との違いは、すべての負債を返済することができないということと、裁判所という国の機関が介入するということです。

倒産の結果、通常は会社が消滅しますが、会社を存続させることに社会的な意義がある場合には存続させるという方法が選択されます。しかし、中小零細企業では、倒産の結果として会社を消滅させることが通常です。

◆倒産は弁護士に依頼しなければできない

「借金を返さずに済むのであれば・・・」と倒産を選ぶ経営者がいますが、倒産をするには弁護士に依頼して所定の手続をしなければなりません。当然、弁護士に相応の費用を支払わなければなりません。倒産確実(すべての負債が返済できない)という状況になって、弁護士にも依頼せず「のらりくらりする」「債権者を煙に巻く」などしていても一向に事態は収拾に向かいません。

◆倒産は経営者にとって以後の人生のハンディとなる

上記のとおり、倒産は債権者(融資をしている金融機関、販売代金が回収できていない仕入先など)に損害が及びます。金融機関の担当者は社内の評価が下がり、仕入先の経営者や従業員は生活に窮します。当然、これらの人々からは恨まれます。だから、倒産した会社の経営者は社会的信用を失い、以後の人生において大きなハンディを背負うことになるのです。

◆廃業は静かな幕引き

廃業と倒産とでは雲泥の差であることをご理解いただけると思います。

中小零細企業が永続することは不可能であるといっても過言ではなく、いずれは廃業しなければなりません。「気配」を感じたならば廃業の準備をしなければならないのです。倒産と廃業の分かれ目が、その判断の時期にあることが非常に多いです。

【PR】記事の内容と直接的な関連はありません。



代表者の死亡による会社の廃業(残された者がすべきこと)

2020-05-09 19:30:00 | 廃業、会社清算
代表者の死亡により、会社を廃業しなければならないことがあります。代表者の死亡に関して注意しなければならないのは、代表者が死亡しても、会社は直ちに消滅しないということです。会社は消滅しませんので、会社の資産(現金、預金、売掛金、在庫、設備など)と負債(借入金、買掛金など)もそのまま残ります。

◆新たな代表者を選任する(必ず登記をする)

会社を代表するのは「代表取締役」、一般的には「社長」と呼ばれる人です。会社という組織は代表者がいなければ動きませんので、代表者が死亡した場合には新しい代表者を選任しなければなりません。そして、新たに選任された代表者を法務局で登記をします。「実質的代表者」では社内ではともかくとして対外的には認めてもらえません。

◆会社を「継続する」か「清算する(消滅させる)」かの選択

代表者の影響力が大きい会社の場合には、代表者が死亡すればそのまま廃業になることが多いです。代表者が死亡したら最初に検討しなければならないのは、会社を継続するか清算するか(消滅させるか)の選択です。

会社を継続する場合には、新たな代表者は「代表取締役(社長)」として前代表者の業務を引き継ぎます。会社を清算する場合には、新たな代表者は「清算人」として会社を消滅させるべく清算手続(資産の換金と負債の返済)を行います。

◆既存の関係者の協力を仰ぐ(閉じこもるとか、新たな人物を安易に招入れたりしない)

代表者が死亡すれば、残された人たちは気が動転するのは当然のことです。しかし、今まで会社が成り立ってきたということは、代表者の周りに協力してくれる人たちがいたからです。そこで、代表者が死亡したならば、まずは関係者に丁重にあいさつをしに行くことです。訳もなく身構えて、閉じこもるとか、実情をよく知らない新たな人物を招き入れるのは混乱の原因となります。

◆債権者の取り立てが激しい場合は弁護士に依頼する(破産や民事再生を検討する)

代表者の死亡と同時に債権者(融資を受けている金融機関や仕入先など)が押し寄せて返済や支払いを迫ってくる場合には、会社経営が危うかったということです。また、代表者の生前の行いに問題があり不評を買っていた(恨まれていた)可能性があります。

とても素人では太刀打ちできませんので、弁護士に依頼してとりあえずの収拾をつけてもらうしかありません。その次に、破産や民事再生などの法的手続を検討することです。

=======

自身が関わっている会社の代表者が死亡した場合、どのような行動をとるかはその人の立場によって大きく異なります。

◆一従業員

「私は知りません(関係ありません)」で通用します。会社が存続できそうにない場合には、直ちに次の仕事を探さなければなりません。給与が未払になっている場合には当然請求ができます。

◆後継者候補(片腕)

「知りません。わかりません」と、あっさりとはいえないと思います。自身の今後、「会社に残るか」、「ほかに道を探すか」によって対応を決めることです。前者を選択する場合には矢面に立つ覚悟が必要です。

◆代表者の家族(会社の役員あるいは従業員)

道義的に逃げられないと思います。また、立場によっては法律的な責任が生じることもあります。とにかく、事態が収拾するまでは会社に残るしかありません。それには、代表取締役あるいは清算人に就任することです。

◆代表者の家族(会社とは直接関係がない)

関係者へのあいさつはするしかないと思います。また、代表者が会社の保証人になっている場合には、その保証人としての地位を相続により引き継がなければなりません。

◆代表者の家族(会社に資産がある場合)

会社に不動産や預貯金などの資産がある場合には、代表者の家族はそれを死守しなければなりません。代表者は会社の株式の大部分を保有していることでしょうから、それを相続により取得して会社の支配権を確かにする必要があります。

【PR】記事の内容と直接的な関連はありません。