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【実録】会計事務所(公認会計士・税理士)の経理・税金・経営相談

大阪市北区の築山公認会計士事務所(築山哲税理士事務所)です。
身近な疑問の解説と役立つ情報の提供をさせていただきます。

借入金の返済が負担に(倒産だけは回避する)

2020-04-04 12:05:00 | 廃業、会社清算
「銀行らかの融資は借りられるときに借りておく」というのが企業経営の鉄則といわれています。「チャンスに備えて」「一時的な落ち込みに備えて」余裕資金を確保しておくためです。

しかし、これが当てはまるのは企業経営が成長期あるいは安定期にある場合です。衰退期に突入した企業の中には借入金の返済負担に耐え切れず倒産(非自発的な活動停止)を余儀なくされる場合もあります。

◆繰上げ返済

企業が衰退期に突入したならば、もう「チャンス」は巡ってきませんのでそのための資金は不要です。また、落ち込みは一時的ではなくいつまでも続きますので「借入れでしのぐ」という方法は通用しません(自らの首を絞めるだけです)。

手元の資金を他のことに使ってしまう前に借入金の返済をすることです。いわゆる繰上げ返済をしてしまうと金融機関との関係が消滅して以後の融資が受けられなくなりますが、衰退しているのですからもう借りる必要などありません。金融機関の評価など気にする必要はないのです。

◆借入金残高を現状のままにして借り換える

繰り上げ返済ができない場合には、いわゆる「借換え」します。

当初の借入金額が6000万円の5年間(60か月)で均等返済(月額100万円)
3年経過後の借入金残高は2400万円

ここで2400万円を同じく5年間(60か月)返済という条件で新たに借り入れて、既存の借入金の返済に充てれば毎月の返済額は40万円に減ります。

◆リスケ

リスケ(正しくはリスケジュール)とは返済条件の見直しのことです。一般的なリスケは、元金の返済をストップして金利のみを支払うという方法です。リスケをしてしまえば、今後は新規の融資を受けることができません。ですから、リスケをするのは最終的な手段と考えなければなりません。

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★金融機関との交渉は口頭で済ますことができない(早く行動を起こす!)

コロナショック!

「〇〇ショック」、資本主義社会である限り仕方のないことですが、本当に辛い出来事です。特に今回のコロナショックというのは予測不能で、誰もが意表を突かれた格好です。また、現時点では治療薬の開発や治療方法の確立のめどが立っていないことから、終わりが全く見えません。その意味で、今回の「ショック」は過去最悪かもしれません。

この先、「縮小」「廃業」「倒産」を余儀なくされる会社が続出することでしょう。特に中小零細企業では、短期間の間に様々な決断を迫られます。その中で、厄介なことのひとつが金融機関との交渉です。決算書や試算表などの会社の諸数値を提示して、さらに膨大な契約書その他の書類を用意しなければなりません。金融機関との交渉は口頭だけで済ませることは絶対にできませんので、とにかく早く行動を起こさなければなりません。約定どおりの返済ができなくなってからでは手遅れです。倒産(非自発的な活動停止)という不名誉だけは避けなければなりません。

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個人事業者(事業主)の廃業手続

2020-02-13 19:15:00 | 廃業、会社清算
個人事業者(事業主)の廃業手続は会社と比べて非常に簡単です。「会社」という得体のしれない存在の後始末(消滅手続)が無用だからです。

個人事業者は事業を始めるとき、「誰にも相談せず」、「どの役所にも手続をしないで」、「いつの間にか事業を始めていた」という人がほとんどです。廃業するときもこれと同じことがいえます。

◆営業を停止する

廃業をするからにはどこかで営業を停止しなければなりません。売るのをやめるので、仕入もストップしなければなりません。従業員は解雇して、事務所・店舗・工場・倉庫は引き払わなければなりません。これで、外見上は幕が引かれたことになります。

あとは、事業をしていない「一個人」として事業をしていたころの「後始末」をします。

◆売上代金を回収する

掛売りをしている場合には、営業停止時に未入金部分が残るのでこれを回収しなければなりません。営業を停止したからといってこの分の請求ができないということはありません。

◆在庫や設備の処分

在庫や設備は処分します。売却できる場合には売却し、できない場合には廃棄します。在庫や設備の処分は必ずしなければならないわけではありません。在庫や設備の置き場所があるのであれば放置しておいてもかまいません。

◆仕入や給与の支払い

営業終了時に支払いが済んでいない仕入代金や給与を支払います。営業を停止したからといって支払いが免除されるわけではありません。

◆私生活用に転用できるもの

店舗や事務所、車両や備品などで私生活用に転用できるものがあればそのまま転用することができます。商品が生活用に消費できる物(食料品、衣料品、衣料品など)であれば消費してもかまいません。

◆残った借金

借金が残った場合は大変です。事業用の借入金であっても、廃業したからといって免除されるわけではなく、利息の支払いと元金の返済はいままでどおり続けなければなりません。それが無理な場合は、返済期間の延長や利息のみの支払いにしてもらいます。それでも無理な場合には破産をするしかありません。また、借金を残して死亡した場合には、家族などの相続人が返済しなければなりません。

◆最後の確定申告

個人事業者の廃業手続で、唯一役所が関わってくるのが所得税の確定申告です。廃業した年についても、翌年の3月15日までに確定申告をしなければなりません。例えば、令和元年9月末に廃業した場合には、平成31年1月1日から令和元年9月末までの事業所得を確定申告しなければなりません。また、廃業届も提出しておく必要があります。消費税の課税事業者である場合には消費税の申告も必要です。

なお、自己所有の事業用土地建物や車両を売却した場合には、事業所得ではなく譲渡所得となり、事業所得とは異なる申告方法になるので注意が必要です。また、この売却が廃業した翌年以降になる場合も申告は必要です。

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★廃業後の屋号と看板
廃業後は、もう屋号を使用してはいけません。また、看板も下げなければなりません。ただし、廃業処理が長引く場合には、屋号については「以前その屋号を使用していたこと」、看板については「廃業事務手続のための拠点であることを明らかにするため」であれば使用してもいいと思います。

★廃業後の事業用預金口座
個人事業者は氏名に屋号を付した名義の預金口座を開設していることが通常ですが、廃業後はこれを解約したほうがいいです。ただし、廃業処理に関する入出金がなくなるまでは解約しなくてもよいです。廃業すれば事業用預金口座は不要です。それに、いつまでも事業用預金口座に入出金があると、税務署に「本当は廃業していないのでは」と疑われます。

★長期間休業する場合の税務手続(廃業と同じ扱い)
個人事業者が長期間休業して、年間を通して事業所得が生じなくなれば、廃業したということになります。もし、活動を再開する場合には、あらためて開業届を提出しなければなりません。一方、会社は事業をすることだけが目的ですので、法務局で登記されているかぎり(解散登記をしていない場合)長期間休業しても以前の姿のまま営業を再開できます。

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会社清算における中小企業経営者の立場

2019-12-06 16:00:00 | 廃業、会社清算
経営者は会社を清算するに際して、自らの立場を十分認識しておく必要があります。そうでなければ行動する目的と方向性が定まりません。

「経営者」「清算人」「株主」「債権者」「債務者」「保証人」と、中小零細企業の経営者には、「ときには利害が対立する」「複数の立場」があるのです。「複合的な」立場に立っていますので、複合的に判断しなければなりません。これが非常に難しく、悩まなければならないことが多いです。

◆清算人(通常は元経営者)

経営者(代表取締役)は会社が解散をして営業活動を停止すると、代表者として会社を運営するという立場を退くことになります。解散して以降の清算活動は「清算人」に委ねられます。

中小零細企業の場合には、この清算人に元代表取締役(経営者)が就任することが通常です。ただし、就任する義務はありませんので、誰か別の人、それも今まで会社と無関係であった人が就任してもかまいません。

◆株主(会社に対する出資者)

中小零細企業の場合には、経営者(代表取締役)が会社に対する大部分の出資をしていることが通常です。清算の際の元経営者(代表取締役)は、清算人として会社の資産を換金して負債を返済し、残った財産(これを残余財産という)を「株主つまり自分」に分配するという立場なのです。

経営者が株主として会社に対して出資するのは、おそらく設立時だけだと思います。この出資した額が法務局で登記されているとともに、貸借対照表に資本金として計上されています。残余財産が資本金よりも「多いか」「少ないか」、今までの経営者人生の総決算です。

経営者以外に株主がいる場合には、出資割合に応じて平等に残余財産を分配しなければなりません。

◆社長借入金(会社に対する債権者)

中小零細企業では、会社の資金が不足すれば経営者(社長)が個人の資金を株主としての出資とは別に会社に投じなければなりません。これを社長借入金(役員借入金)といいます。社長借入金は金融機関からの融資と同じ「負債」です。負債ですので会社は社長借入金を経営者に返済しなければなりません。

社長借入金の返済は株主への残余財産の分配よりも優先します。金融機関からの借入金や仕入代金と返済の順位は同じですが、道義的に考えれば社長借入金は後回しになります。社長借入金が最終的に残った場合には、免除、つまり経営者(社長)個人としての回収をあきらめることになります。

◆社長貸付金(会社に対する債務者)

中小零細企業では会社から経営者(社長)へお金を貸すことがあります。これを社長貸付金(役員貸付金)といいます。中小零細企業では、経営者が会社のお金を自由に使うことができます。そんなことから、いつの間にか経営者の知らないうちに社長貸付金が生じてしまうのです。会社の清算にあたっては、会社はこの社長貸付金の返済を経営者から受ける必要があります。

金融機関からの借入金や仕入代金の未払が残っているのであれば、社長貸付金を回収して返済と支払いに充てなければなりません。

◆保証人(経営者が会社の借金を肩代わりする)

会社が金融機関から融資を受けるに際して、返済能力の乏しい中小零細企業では経営者個人が保証人になることが通常です。保証人は会社が返済できない場合に、会社に代わって返済するわけですから、会社が清算して消滅したとしても経営者(元)の保証人としての返済義務はそのまま残ります。

株式会社と有限会社は「有限責任」といわれます。株主の出資した資金が底をついたならば、その時点で残っている負債は返済する必要はないということです。しかし、現実には経営者が保証人となって、会社の資金で返済ができない場合は、経営者がその私財でもって返済しなければならないこともあります。とりわけ金融機関からの借入金では、経営者が保証人になるのが当然のようになっています。

◆経営者としての退職金(残余財産が資本金よりも多い場合)

清算に際して元経営者は在職中の功労に対する退職金を受け取ることができます。会社に不動産や保険契約の解約返戻金があるなど余裕があれば、資本金以上の残余財産が残ります。この場合に、残余財産の分配を受けるよりも退職金を受け取れば税金が少なくなるのであれば退職金を受け取る方が得です。

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★会社清算には専門家(税理士、司法書士など)の道案内が必要不可欠です!

会社の清算を意識して、会社の資産負債や権利義務の処理方法を考え出してみると、思いのほか複雑で一筋縄ではいかないことに気がつきます。特に、上記の複合的立場をどのように調整するかについて悩む人が非常に多いです。さらに、選択する方法によって課税関係が大きく異なり、結果として税額も相当変わってくる場合があります。

会社清算には専門家(税理士、司法書士など)の道案内が欠かせません。会社の清算を意識したならば、できるだけ早く専門家に相談してください。専門家に詳細で具体的な「清算スケジュール」を作成してもらい、それに沿って清算作業を進める必要があります。

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会社の“終活"読本―社長のリタイア<売却・廃業>ガイド―
内藤 博,金子 一徳,戸田 正弘
日刊工業新聞社


会社清算に関する役所と専門家

2019-12-03 11:30:00 | 廃業、会社清算
会社の清算手続には様々な役所や専門家が関連してきます。ほとんどの経営者は会社の清算をするのは初めてですので、清算を意識するようになったならば、まずは関連する役所や専門家に相談しなければなりません。

◆税務署など税務関係の役所

会社は、清算結了の日(消滅する日)までの所得について、申告納税をしなければなりません。なお、税額がゼロであっても申告だけは必要です。申告書の提出先は、平常時と同じ「税務署」「都道府県税事務所」「市役所(町村役場)」の3か所です。また、申告以外に清算したことなどの届けをしなければなりません。

◆法務局(登記手続)

会社を清算するには(消滅させるには)、法務局に手続をしなければならないことを知らない経営者が非常に多いです。会社という存在を管理しているのは法務局という役所なのです。会社を設立するには法務局で設立登記をしなければならないように、会社を清算するには法務局で清算登記をしなければならないのです(清算の前段階としての解散登記も必要です)。

かといって、法務局だけで手続をすればいいのではありません。法務局は、会社が資産を換金して負債を返済していなければ登記の申請を受け付けてくれません。法務局は会社清算についての最後の手続をする役所ということです。

◆その他の役所

社会保険については年金事務所、従業員を雇用している場合にはハローワークでの手続も必要です。許認可が必要な業種については該当する役所での手続が必要です。

◆税理士(会計事務所)

上記のとおり、会社は清算する日までの所得を申告しなければなりませんので、自ら申告手続ができない場合には税理士(会計事務所)に依頼することになります。すでに税理士に依頼しているのであれば、その税理士に依頼することが望まれますが、その税理士が引き受けてくれないのであれば他に依頼するしかありません。

清算すると税理士の関与が終わるので(報酬をもらえなくなるので)、清算の仕事を引き受けてくれない税理士も多いです。清算のような後ろ向きの仕事を嫌う税理士もいます。また、清算に詳しくない税理士もいます。

◆司法書士

上記のとおり、会社の清算は法務局への登記手続が必要ですので、自らこの手続ができない場合には司法書士に依頼しなければなりません。

◆弁護士(通常は依頼不要)

ケースによっては、弁護士に依頼しなければならないこともあります。しかし、資産の換金がスムーズに進み、従業員・仕入先・金融機関などの債権者ともめていない場合には弁護士への依頼は不要です。通常は、税理士(税務関連の役所)と司法書士(法務局)で手続は完結します。

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★解散と清算
会社が消滅するまでには「解散」と「清算」というプロセスを経なければなりません。「解散」とは、会社が通常の営業活動を停止させることをいい、解散をすると営業活動(仕入れて売る)はできず清算のための活動しか行えなくなります。「清算」とは、会社を消滅させるべく資産の換金をして負債を返済し、残った財産を株主に分配することをいいます。法務局へは解散および清算結了の登記が必要です。

★会社の乗り捨て(会社名義の悪用、予期せぬ債権者の出現)
営業活動を停止して、資産の換金と負債の返済は済ませているけれども、役所関連の手続は一切していないことがあります。この状態でいると、まずは税務署から申告の督促があります。法務局からは何も連絡がないかもしれませんが、会社としては存在したままです。そこで、「誰かに会社の名義を悪用される」、「予期していなかった債権者が出現して支払いを迫ってくる」こともあり得ます。ですから、上記の役所関連の手続の全てを必ずして、会社を完全に消滅させておかなければなりません。

★会社の休業(メンテナンスが必要)
解散の登記はしないで休業(休眠)をするという方法もあります。しかし、休業中も税務申告と一定の登記手続は必要ですので、休業は活動再開の可能性がある場合と、事情により直ちに清算手続ができないという場合に限定されます。

★みなし解散(放置しておくほうが得?)
みなし解散といって、一定期間必要な登記をしていない「株式会社」については法務局の職権で解散したとみなされ、登記簿でもその旨が表示されます。「面倒な手続などしないで放置しておけばいいんだ!」と思うかもしれませんが、登記していないことについての「過料」を科されます。また、会社は依然として存在するのですから、会社名義を悪用される、予期せぬ債権者が現れるリスクは消えず、このリスクについて法務局は一切保護をしてくれません。

★破産(裁判所が介入する)
資産をすべて換金してもすべての負債を返済できない場合には、そのまま会社を清算することはできず、「破産」という手続を経なければ清算はできません。破産とは、裁判所の介入によって返済できない負債を整理する(免除する)手続です。破産をするには弁護士に申立ての手続を依頼します。なお、破産に比べて利用される件数ははるかに少ないですが、「特別清算」という方法もあります。

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大廃業時代・創業社長の事業の継なげ方 終い方
塩原 勝美
オーズ合同会社


会社の廃業と清算(はじめに)

2019-12-01 09:40:00 | 廃業、会社清算
★廃業の時は必ずやってくる

廃業というと「事業に失敗した」「逃げ出した」「後継者がいない」など、後ろ向きのイメージを持たれがちですが、廃業はスポーツ選手でいえば「引退」、サラリーマンであれば「定年退職」です。事業を始めたならば、いずれは廃業の時はやってくるのです。避けなければならないのは、廃業の時期についての判断を誤って周囲に迷惑をかけてしまうことです。また、廃業の意味や手続を知らずに予期せぬトラブルを起こしているケースも目立ちます。

未来永劫にわたって存続する企業は、ほんの一握りの例外です。もっとも、存続しているのは会社という法人格や商号(社名)という「器」であって、その中身(取扱商品、設備、役員、株主、従業員など)は30年もすれば「総入れ替え」になりますので、実質的には「創業→廃業→創業」というサイクルを繰り返しているのです。「創業者精神はどこへ」「創業地や創業者を知らない社員がほとんどになった」「役員も株主も外国人だらけ」などがそれを物語っています。

★廃業に「裏技」はありません

廃業に「裏技」はありません。借金の棒引きには「破産」という周囲に対する損害、自身には回復させることができない不名誉が伴います。最近は中小零細企業でも「会社の売却(M&A)」が行われるようになりましたが、これはごくまれなケースです。

円滑に廃業をするには、会社の現状を正確に把握して、余裕のある段階で廃業の決断をし、必要とされる処理や手続をひとつずつ根気よくしていくしかないのです。時が来れば、会社が自然に消滅するということはありません。

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◆廃業とは(舞台裏の後片付けが必要)

廃業とは事業をやめることです。小売店であれば、仕入はストップし店員を解雇して、残った在庫は処分し店舗は引き払います。こうなれば、誰が見ても営業活動を停止したということがわかります。もう、お客さんも来ません。

しかし、舞台裏の後片付けはまだまだこれからです。予想以上に長引くこともあります。難航することもあります。

◆倒産と廃業の違い

倒産とは会社の資金繰りが回らなくなって営業活動を継続できなくなることをいいます。倒産も廃業をする原因のひとつですが、一般的に廃業とは「自主的に」事業をやめることをいいます。

◆会社の消滅(解散と清算、法務局で登記が必要)

廃業をしても(営業活動は停止しても)会社は消滅しません。会社は「法務局」で「清算結了登記」をするまで存在します。会社を消滅させる手続を「清算」といいますが、この手続は会社の資産と負債、権利と義務を完全に消滅させなければできません。また、清算の前段階として「解散」という営業活動を停止した旨の登記も必要です。

廃業しようとしている会社経営者の大部分が、この清算および前段階としての解散という登記の手続について知りません。営業活動を停止すれば自動的に会社が消滅すると思っている人が多いです。

◆資産の換金

会社を清算するのであれば、会社に資産を残しておくことはできません。すべての資産は換金あるいは廃棄しなければなりません。売掛金(売上代金)は回収、在庫や設備は売却あるいは廃棄します。

しかし、次のように資産を換金しようとすれば思いもよらない難問を突き付けられることもあります。

「今住んでいるのは会社名義の土地建物(清算後も住み続けたい)」
「本社ビルの土地には結構な含み益がある(売却した場合の税金が心配)」
「会社契約の生命保険(解約した保険金の扱い)」

◆負債の返済

廃業したからといって、仕入代金や給与の支払い、金融機関からの借入金の返済が免除されるわけではありません。会社が存在している限り、債権者は執拗に追いかけてきます。すべての負債の返済が済むまでは会社の清算ができませんので、負債はもれなく把握しなければなりません。

「社長借入金」、経営者が会社に貸しているお金です。会社からすれば経営者から借りています。社長借入金も負債ですので返済しなければなりません。「経営者が保証人」になっている負債が返済できない場合には、経営者が個人の資金で返済しなければなりません。

◆残った財産(現金)

資産をすべて換金し、負債をすべて返済した結果、現金が残る場合(これを残余財産といいます)にはこれを株主に出資割合に応じて分配します。

◆最後の納税

清算による資産の売却で利益が生じれば、それについての法人税を納めなければなりません。資産の売却が消費税の対象である場合には消費税の納税が必要です。また、残余財産(清算の結果残った財産)の分配を受けた株主に所得税が課税されることがあります。経営者に退職金を支払えば、経営者に所得税が課税されることがあります。

◆借金が残る(破産手続に移行)

資産をすべて換金しても、すべての負債を返済できない場合には直ちに会社を清算することはできません。「破産」という手続を経なければなりません。破産とは、裁判所の介入によって返済できない負債を整理する(免除する)手続です。

破産はいわゆる「倒産」の一形態です。非常に不名誉な幕引きで、経営者個人としての信用も失われます。なお、破産に比べて利用される件数ははるかに少ないですが、「特別清算」という方法もあります。

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★廃業のスケジュール

取引先や従業員に廃業する旨と営業活動停止の時期を告げる

営業活動停止(従業員の解雇)=解散

資産の換金と負債の返済

残余財産の分配=清算結了

会社の業種業態や規模にもよりますが、最低でも決断から1年は要すると考えなければなりません。具体的な手続をリストアップして実施順に並べ、難航しそうな部分は入念な対策を立てておく必要があります。

★廃業手続の活動拠点

従業員は解雇し、在庫や設備の処分も終わり、あとは事務手続を残すのみとなったのであれば、経営者の自宅でもかまいません。

★廃業手続中の生活費

引き続き会社から給料(役員報酬)を引き出すことができます。廃業手続中によそで働いて給料をもらうこともできます。年金も受給できます。

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