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【実録】会計事務所(公認会計士・税理士)の経理・税金・経営相談

大阪市北区の築山公認会計士事務所(築山哲税理士事務所)です。
身近な疑問の解説と役立つ情報の提供をさせていただきます。

誰かが助けてくれる(大手企業のようにはいかない)

2020-10-13 18:00:00 | 廃業、会社清算
大手企業が倒産の危機に瀕した際には、金融機関による債務免除(借金の棒引き)、国の補助金などによる支援が行われ、さらにはスポンサーも登場します。やがて、その企業は息を吹き返して、しばらくすると何事もなかったように活動を続けています。

しかし、このようなことは中小零細企業ではありえません。

◆倒産することによる社会的影響

大手企業の場合には倒産し消滅することの社会的影響が非常の大きいです。大手企業は取引先も従業員も多く、企業の消滅によって多くの雇用が失われ、その企業に依存している地域経済へも多大な影響を及ぼします。そこで、公的支援が行われるとともに、取引先も協力をしなければならない状況となるのです。

◆経営陣の総入替え

大手企業が危機を乗り越えて、今までどおりの場所と社名で活動を継続していたとしても、その中身は以前とは全く違ったものとなっています。経営陣は総入替えとなり社内の雰囲気は激変し、取扱商品と製造販売方式、人事制度などは様変わりです。「もう二度と経営不振には陥らない!」と全社一丸となっての再スタートをするのです。ぬるま湯体質は一掃され、危機を招いた輩の姿は完全に消えています。

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★周囲の人も苦しいんです!

中小零細企業では関連している取引先や従業員に経済的な余裕がなく、これ以上の取引条件の悪化や給料の引き下げには耐えられません。一部、余裕のある者もいるかもしれませんが、そのような者ほど「見限り」が早く、危機を察知すると早々と去ってゆくものです。

★余裕のあるうちに廃業をする(倒産の不名誉は避ける)

中小零細企業の場合には倒産の危機に瀕しても誰も助けてはくれません。「助けるに値しない」からです。

倒産(破産などによる債務の切捨て)をしたならば、経営者は社会的信用と人間関係を失い、以後の人生においてそのことが大きなハンディとなり行動が制限されてしまいます。冷静に、客観的に考えれば「廃業すべき時期」は見極めることはできます。廃業の準備は余裕のあるうちからしなければならないのです。

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会社を売る(株式の売却だけでは済まない)

2020-10-10 12:15:00 | 廃業、会社清算
最近では、「不動産」「絵画」「貴金属」同様、「会社」が売買の対象であることが一般にも認知され、上場企業だけでなく株式を公開していない中小零細企業でも会社の売買が行われるようになってきました。

廃業を考えている中小零細企業の経営者には、会社を清算して残余財産の分配を受けるのではなく、会社を手放して株式の売却代金を獲得するという選択もあるということです。

◆株式を売る

会社を売るというのは簡単なことです。自身が保有している株式のすべてを誰かに売却すればいいだけです。中小零細企業場合には株主は経営者だけであることが通常ですので、株式を売却するにあたって株主間の利害調整も不要です。株式の売却は口頭でもできますが、後の紛争を防止するために契約書を作成しておかなければなりません。

◆取締役を辞任する

会社を売るということは、以後はその会社との関りを一切なくすということですから、取締役も辞任しなければなりません。取締役を辞任するには株主総会の決議だけでなく、法務局で辞任の登記をしなければなりません。

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上記のとおり、会社を売るための事務手続は非常に簡単です。しかし、事務的な書類に記載する項目には様々な利害が絡んでくることから一筋縄にはいきません。

◆株式の売却価格

株式を公開していない会社の場合は株式の売買が日常的に行われることがありませんので、「株価」というものが存在しません。しかし、会社を売るのですから何とかして株価を計算しなければなりません。「純資産」「配当」「将来性(今後の収益)」などを考慮して、売り方と買い方の双方が納得できる価格を計算するしかありません。

◆従業員や取引先

会社が売られるとオーナー(株主)も経営者も代わることから、当然ながら経営方針も以前とは大きく変わってきます。一方、従業員や取引先はそのままですから、新たな経営方針に戸惑い、場合によっては会社からの離脱を余儀なくされます。

◆残された借金

これが問題です。今後の会社の収益力で返済ができるのであればいいのですが、できそうにない場合には会社を買ってくれる者などいません。

◆会社売買の仲介業者

最近、中小零細企業の売買を仲介する業者が複数存在します。当然、「業者」ですので採算の取れる案件しか仲介をしません。

◆営業譲渡

会社を丸ごと売却するのではなく、その営業の一部のみ、「特定の得意先との取引関係」「店舗」などを売る(譲渡する)という方法もあります。営業譲渡をすれば会社は「もぬけの殻」になりますので、清算するしかありません。

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★夢物語であることが現実

最近では会社の売買をするということがすっかり認知されているのは事実ですが、中小零細企業の場合にはそう簡単に「取引」が成立しません。その理由は、いうまでもなく中小零細企業経営が「一身専属」であることです。取引先は経営者の能力や人間性を信じて取引に応じます。従業員もそうです。会社が売られて経営者が代われば、いままでの人間関係が崩壊してしまいます。

中小零細企業において会社の売買が成立するのは、極めて特殊なケースに限られてきます。例えば、会社が特殊な権利である特許権や独占販売権などを保有している場合です。

「会社(株式)を売ってお金に換える」は夢物語であるといっても過言でありませんので、このような期待は抱かずに通常の廃業方法を選択しなければなりません。

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余力を残して廃業する(残余財産が十分あるうちに)

2020-09-26 10:30:00 | 廃業、会社清算
会社を廃業するにあたって確認しておきたいのは、会社設立以来どれだけの資金を投じて、その資金が会社を清算する際にどれだけの現金として残っているかです。

◆投下した資金の形態は資本金と社長借入金

経営者が会社に投じる資金は資本金と社長借入金に分かれます。

〇資本金
会社を設立するにあたっては一定金額を資本金として出資しなければなりません。会社はこの資本金を基に活動をします。なお、この金額については登記が必要です。また、決算書では貸借対照表の純資産の部に「資本金」として表示されます。

〇社長借入金(役員借入金)
経営者は資本金以外にも会社に資金を提供することがあります。それは社長借入金で、決算書の貸借対照表の負債の部に「短期借入金」あるいは「長期借入金」として表示されます(この勘定科目には金融機関からの借入金も含まれています)。資本金が登記事項であり法務局で所定の手続をしない限り出資も返金もできないのに対して、社長借入金はいつでも資金の提供を受けて、会社に資金さえあればいつでも返済できます。なお、社長借入金は無利息であることが通常です。

◆「(廃業時に残る)現金>資本金+社長借入金」が理想

「(廃業時に残る)現金」が「資本金+社長借入金」よりも多いということは、経営者が投じた資金が利益を生んだ(増えた)ということです。当然これが理想ですので、廃業の際にはこの状態でなければなりません。

◆まずは社長借入金の返済を受ける

廃業に際しては、まずは社長借入金の返済を受けます。借入金という負債の返済は、資本金の返金(株主への残余財産の分配)に優先するからです。これは会社という組織の原則です。

社長借入金の返済を受けても経営者には課税されません。経営者からすれば貸付金の回収であって、役員報酬のような利得ではないからです。

◆次に残余財産の分配を受ける

会社を清算する際には資産(在庫や設備など)はすべて換金して、仕入代金や税金などの支払うべきものはすべて支払わなければなりません。その後に残った現金は、会社の出資者である株主に返金します。これを「残余財産の分配」といいます。

残余財産が出資額よりも多い、清算時の貸借対照表でいえば資本金よりも現金が多い場合には、残余財産の分配を受けた株主に課税がされます。出資分が増えたという利得があるからです。

◆退職金を受け取る(残余財産への課税がなくなる場合も)

経営者が退職金を受け取れば残余財産が減って、残余財産に対する課税も減らすことができます。しかも、退職金については一定額までがそれを受け取る経営者に課税されませんので、節税対策としては会社および経営者個人にとって非常に有効です。

◆今まで会社からもらった役員報酬

会社からもらってきた役員報酬は社長としての対価ですので、投下資金である「資本金+社長借入金」の返金とは違います。なお、この役員報酬についてはすでに課税も済んでいますので廃業に際しては税金のことを考える必要はありません。

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★余力を残しての廃業が望まれます
廃業の時期というのはある程度客観的に予測することができますので、廃業は上記のように残余財産があるうちにすることが望まれます。

★生命保険と倒産防止共済
決して資金繰りが楽でない中、コツコツと支払いを続けてきた生命保険契約の保険料と倒産防止共済(経営セーフティ共済)の掛金、いずれも本来の目的には利用しなかったけれども(そのほうがいいのですが)、解約により一定の現金が得られますので廃業のときに思いのほか威力を発揮します。

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「取締役として来てほしい」という誘い(渡りに船!?)

2020-09-19 11:30:00 | 廃業、会社清算
会社を廃業することが脳裏をよぎり出せば、そのことがそれとなく言動に表れてしまいます。そんなとき、誰かがそれを聞きつけて、「うちに取締役として来てくれないか!」という誘いが「なぜか?」あります。

我が国の中小零細企業のほとんどは、会社の重要業務を代表者(社長、代表取締役)ひとりが担っており、会社の存続と発展のためには片腕となる人材の育成や獲得が喫緊の課題であることが非常に多いです。「社内には適切な人材がいない」「経営の苦労を知っている人材にしか任せられない」というのが社外に人材を求める理由です。

しかし、このような誘いが「渡りに船」であるかについてはいくつかの検討が必要です。

◆決算内容の確認(最重要!)

「取締役として来てほしい」という誘いを受けた場合には、必ずその会社の過去数年間の決算書を見せてもらう必要があります。「面倒を見てもらう立場であるから決算書を見せてくれとはいえない」といって遠慮する必要がありません。

取締役として加わるということは、代表者(代表取締役)とともに会社を経営するということです。経営の指針や目標の多くは決算数値として表れますので、取締役に就任するにあたっては必ず過去の決算書を検討しておく必要があります。

ところが現実には、過去の決算内容をほとんど知ることがないまま取締役に就任するケースがあります。「代表者が決算書について無知」という理由(悪意はない)であればまだしも、代表者が意図的に「不都合を隠している」のであれば注意が必要です。「決算書については後から説明するとの返事」「断片的な数値しか見せてくれない」は特に要注意です。

◆ビジョンと経営計画

「なんとなく楽になれそうだから」という理由で外部から取締役を招くというケースがあります。取締役を招く限りは、明確なビジョンや経営計画があり、共に行動をするという強い意志が必要です。

◆社内における代表者の近親者

中小零細企業では社内に代表者の近親者がいてキーパーソンとなっていることがあります。ありがちなのが、代表者の態度が近親者に対しては甘くなり近親者が経営の足かせとなっていることです。事前の近親者との面談は欠かすことができません。

◆個人保証

中小零細企業の場合に避けて通れないのが「個人保証」の問題です。代表者の個人保証では限界に達している場合には特に話し合いが必要です。

◆代表者の健康状態

代表者の健康状態も大変重要ですが、これについては年齢と外見、生活態度などで判断するしかありません。

◆自身の会社は清算する

取締役に就任するからには自身の会社は清算して(消滅させて)、その会社の業務に専念しなければなりません。

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★自身の会社を廃業する理由?(相手側の視点)
当然ですが、相手側にも視点があります。その第一は、「なぜ廃業するのか?」「自身の会社の経営に失敗した者に能力があるはずがない?」です。

★「取締役」の意味
「対外的な印象や評価」「取締役という地位の拘束力(雇用関係であれば簡単に逃げられる)」がその理由で、経営に参画させる意図など一切ない場合もあります。。

結局、上手くいなないケースがほとんどです。こんな誘いには乗らずに、潔く過去は忘れてゼロから出直すのが賢明です。

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決算申告をしていない(不正確でもとりあえず申告する)

2020-06-27 11:45:00 | 廃業、会社清算
決算申告をしていない会社の多くは、決算申告作業ができる経理担当者を雇用しておらず、会計事務所(税理士)にも依頼していません。かといって自身で決算申告をする能力もありません。さらに、中には業績不振が長期化している会社もあり、経営者はすっかり意気消沈して法律やモラルなど念頭になく、決算申告に必要な帳簿や領収書などの基礎資料さえ備わっていないこともあります。

しかし、決算申告は会社が存在している(法務局で登記されている)限りは必ずしなければなりません。

★極めて粗雑な決算申告方法

決算申告をするには専門知識や会計ソフトのほか、預金通帳や領収書などの基礎資料が必要です。しかし、この基礎資料を残していないとか紛失しているということがあります。このような状態であっても、「なんとかして」決算申告はしなければなりません。

どうすればよいのでしょうか?

過激な言葉ですが、「極めて粗雑な方法」で決算申告を済ますしかありません。基礎資料が不足する部分については「記憶や推定」に基づいて「スケッチ感覚」で決算書と申告書を作成してしまうのです。

試験でいえば、結果は「不合格」であることが明らかでも受験だけはするのと同じです。試験ではこのようなことをしても全く意味はありません。しかし、会社は決算申告を必ずしなければなりませんので、たとえ「でたらめな決算書や申告書」であっても「決算申告をするという義務」を「とりあえずは」果たしたということになります。何もしないよりかは「マシ」なのです。

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◆この方法では金融機関からは相手にされない(融資は受けられない)

この方法では金融機関からは相手にされません。決算書があまりにも不正確では、金融機関は会社の実情を把握できません。一見、もっともらしい決算書であっても、金融機関は融資の審査に際して決算書の関連資料の提出を求めるとともに、決算書について様々な質問をしてきますので必ずボロが出でしまいます。「こんないい加減で実態の把握できない会社に融資はできない」となるのです。

金融機関からの融資が受けられるようになるのは、この方法から脱皮して正当な方法で決算書が作成できるようになってからです。

◆大変なのは税務調査

この方法で決算をしている場合に一番大変なのは税務署の税務調査です。税務署は決算書の基資料である帳簿、預金通帳、領収書などまでも調べるからです。そこで、基資料がないので説明できない、基資料と矛盾するなどといたことが続出します。また、税務署は独自に資料収集をしていますので、この資料と決算書の矛盾点については徹底的に追及してきます。

◆この方法が有効な場合もある

この方法でも十分な場合もあります。

「金融機関からの融資は受けていない、あるいはこれ以上は受けない(今後は返済するだけ)」

「著しい業績不振で逆立ちしても法人税は課税されない(さらに消費税も免税事業者である)」

「本当に!本当にですよ」、このような状況にあるのであれば、「通帳、領収書がない・・・」「専門知識がない・・・」などといって躊躇していないで、なんとかして決算申告を済ませることです。そうすれば、一気に前進できます。また、この状況であれば、会計事務所(税理士)に依頼する場合も報酬はそんなに高額にはなりません。

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