【実録】会計事務所(公認会計士・税理士)の経理・税金・経営相談

大阪市北区の築山公認会計士事務所(築山哲税理士事務所)です。
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会社を売る(株式の売却だけでは済まない)

2020-10-10 12:15:00 | 廃業、会社清算
最近では、「不動産」「絵画」「貴金属」同様、「会社」が売買の対象であることが一般にも認知され、上場企業だけでなく株式を公開していない中小零細企業でも会社の売買が行われるようになってきました。

廃業を考えている中小零細企業の経営者には、会社を清算して残余財産の分配を受けるのではなく、会社を手放して株式の売却代金を獲得するという選択もあるということです。

◆株式を売る

会社を売るというのは簡単なことです。自身が保有している株式のすべてを誰かに売却すればいいだけです。中小零細企業場合には株主は経営者だけであることが通常ですので、株式を売却するにあたって株主間の利害調整も不要です。株式の売却は口頭でもできますが、後の紛争を防止するために契約書を作成しておかなければなりません。

◆取締役を辞任する

会社を売るということは、以後はその会社との関りを一切なくすということですから、取締役も辞任しなければなりません。取締役を辞任するには株主総会の決議だけでなく、法務局で辞任の登記をしなければなりません。

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上記のとおり、会社を売るための事務手続は非常に簡単です。しかし、事務的な書類に記載する項目には様々な利害が絡んでくることから一筋縄にはいきません。

◆株式の売却価格

株式を公開していない会社の場合は株式の売買が日常的に行われることがありませんので、「株価」というものが存在しません。しかし、会社を売るのですから何とかして株価を計算しなければなりません。「純資産」「配当」「将来性(今後の収益)」などを考慮して、売り方と買い方の双方が納得できる価格を計算するしかありません。

◆従業員や取引先

会社が売られるとオーナー(株主)も経営者も代わることから、当然ながら経営方針も以前とは大きく変わってきます。一方、従業員や取引先はそのままですから、新たな経営方針に戸惑い、場合によっては会社からの離脱を余儀なくされます。

◆残された借金

これが問題です。今後の会社の収益力で返済ができるのであればいいのですが、できそうにない場合には会社を買ってくれる者などいません。

◆会社売買の仲介業者

最近、中小零細企業の売買を仲介する業者が複数存在します。当然、「業者」ですので採算の取れる案件しか仲介をしません。

◆営業譲渡

会社を丸ごと売却するのではなく、その営業の一部のみ、「特定の得意先との取引関係」「店舗」などを売る(譲渡する)という方法もあります。営業譲渡をすれば会社は「もぬけの殻」になりますので、清算するしかありません。

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★夢物語であることが現実

最近では会社の売買をするということがすっかり認知されているのは事実ですが、中小零細企業の場合にはそう簡単に「取引」が成立しません。その理由は、いうまでもなく中小零細企業経営が「一身専属」であることです。取引先は経営者の能力や人間性を信じて取引に応じます。従業員もそうです。会社が売られて経営者が代われば、いままでの人間関係が崩壊してしまいます。

中小零細企業において会社の売買が成立するのは、極めて特殊なケースに限られてきます。例えば、会社が特殊な権利である特許権や独占販売権などを保有している場合です。

「会社(株式)を売ってお金に換える」は夢物語であるといっても過言でありませんので、このような期待は抱かずに通常の廃業方法を選択しなければなりません。

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