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【実録】会計事務所(公認会計士・税理士)の経理・税金・経営相談

大阪市北区の築山公認会計士事務所(築山哲税理士事務所)です。
身近な疑問の解説と役立つ情報の提供をさせていただきます。

余力を残して廃業する(残余財産が十分あるうちに)

2020-09-26 10:30:00 | 廃業、会社清算
会社を廃業するにあたって確認しておきたいのは、会社設立以来どれだけの資金を投じて、その資金が会社を清算する際にどれだけの現金として残っているかです。

◆投下した資金の形態は資本金と社長借入金

経営者が会社に投じる資金は資本金と社長借入金に分かれます。

〇資本金
会社を設立するにあたっては一定金額を資本金として出資しなければなりません。会社はこの資本金を基に活動をします。なお、この金額については登記が必要です。また、決算書では貸借対照表の純資産の部に「資本金」として表示されます。

〇社長借入金(役員借入金)
経営者は資本金以外にも会社に資金を提供することがあります。それは社長借入金で、決算書の貸借対照表の負債の部に「短期借入金」あるいは「長期借入金」として表示されます(この勘定科目には金融機関からの借入金も含まれています)。資本金が登記事項であり法務局で所定の手続をしない限り出資も返金もできないのに対して、社長借入金はいつでも資金の提供を受けて、会社に資金さえあればいつでも返済できます。なお、社長借入金は無利息であることが通常です。

◆「(廃業時に残る)現金>資本金+社長借入金」が理想

「(廃業時に残る)現金」が「資本金+社長借入金」よりも多いということは、経営者が投じた資金が利益を生んだ(増えた)ということです。当然これが理想ですので、廃業の際にはこの状態でなければなりません。

◆まずは社長借入金の返済を受ける

廃業に際しては、まずは社長借入金の返済を受けます。借入金という負債の返済は、資本金の返金(株主への残余財産の分配)に優先するからです。これは会社という組織の原則です。

社長借入金の返済を受けても経営者には課税されません。経営者からすれば貸付金の回収であって、役員報酬のような利得ではないからです。

◆次に残余財産の分配を受ける

会社を清算する際には資産(在庫や設備など)はすべて換金して、仕入代金や税金などの支払うべきものはすべて支払わなければなりません。その後に残った現金は、会社の出資者である株主に返金します。これを「残余財産の分配」といいます。

残余財産が出資額よりも多い、清算時の貸借対照表でいえば資本金よりも現金が多い場合には、残余財産の分配を受けた株主に課税がされます。出資分が増えたという利得があるからです。

◆退職金を受け取る(残余財産への課税がなくなる場合も)

経営者が退職金を受け取れば残余財産が減って、残余財産に対する課税も減らすことができます。しかも、退職金については一定額までがそれを受け取る経営者に課税されませんので、節税対策としては会社および経営者個人にとって非常に有効です。

◆今まで会社からもらった役員報酬

会社からもらってきた役員報酬は社長としての対価ですので、投下資金である「資本金+社長借入金」の返金とは違います。なお、この役員報酬についてはすでに課税も済んでいますので廃業に際しては税金のことを考える必要はありません。

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★余力を残しての廃業が望まれます
廃業の時期というのはある程度客観的に予測することができますので、廃業は上記のように残余財産があるうちにすることが望まれます。

★生命保険と倒産防止共済
決して資金繰りが楽でない中、コツコツと支払いを続けてきた生命保険契約の保険料と倒産防止共済(経営セーフティ共済)の掛金、いずれも本来の目的には利用しなかったけれども(そのほうがいいのですが)、解約により一定の現金が得られますので廃業のときに思いのほか威力を発揮します。

【PR】記事の内容と直接的な関連はありません。