goo blog サービス終了のお知らせ 

【実録】会計事務所(公認会計士・税理士)の経理・税金・経営相談

大阪市北区の築山公認会計士事務所(築山哲税理士事務所)です。
身近な疑問の解説と役立つ情報の提供をさせていただきます。

代表者の死亡と会社清算(代表者の家族はどうすべきか)

2021-05-28 15:00:00 | 廃業、会社清算
ほとんどの中小零細企業は、代表者が死亡すれば会社の機能がストップし、廃業を余儀されます。また、中小零細企業では廃業に関する諸手続を代表者の家族がしなければなりません。

◆「私は会社とは関係ありません!」は通用するのか?

中小零細企業では「家族経営」や「同族経営」が当然というのも過去のこととなり、昨今では代表者の家族が会社とは一切無関係というケースが増えてきました。「関係がない」というのは、役員や従業員ではなく、出資や資金の貸付もしていないということです。

このようなケースにおいては、代表者が死亡して廃業の手続をしなければならなくなったとしても、代表者の家族は「私は会社とは関係ありません!」ということが法律上は可能です。それは、サラリーマンの家族が勤務先の出来事と無関係であるのと同じです。

◆会社が世話になった人へのあいさつ(道義は守るべき)

「会社」という存在は、残された家族にとっては得体が知れず、どのように扱っていいのかわからないものです。

まずは会社が世話になった人へあいさつに行くことです。会社関係者は、代表者死亡後の「電話」「メール」「郵便物」で徐々に明らかになっていきます。その人たちと接触すれば、今後の方向が見えてきます。健全な会社経営をしていたのであれば、関係者の中から必ず協力してくれる人が表れます。そのような人たちを大切にすることです。

◆代表者が死亡しても会社は消滅しない

代表者が死亡しても会社という「法人格」は残ります。会社が残るということは、会社の資産(預貯金や設備など)や負債(未払の仕入代金や金融機関からの借入金など)もそのまま会社に残るということです。

このあたりが家族にとっては気になるところです。

「預金はどれだけあるのだろうか?」
「会社の借金を肩代わりしなければならないのだろうか?」

◆会社に残された資産

代表者の個人財産(会社とは関係のない預貯金など)と違って、会社に残された資産(預貯金や設備など)は直ちに家族のものにはなりません。このあたりが、「会社」の難しいところです。

◆会社の負債

会社に残された負債(未払いになっている仕入代金や金融機関からの借入金など)、これが怖くて会社に近寄らない家族が多いです。「私は会社とは関係がない!」からといっても、もしかしたら恐ろしい債権者がいて、家族に言い掛かりをつけてくるかもしれないからです。

代表者個人が会社の負債の保証人になっている場合には、家族が保証人としての立場を引き継がなくてはなりません。会社が金融機関から融資を受けるには、ほとんどの場合に代表者個人の保証が必要となります。

========

★家族が清算人に就任して会社を清算する
会社と関係がなかった家族が会社の清算に関与するには、会社の清算人に就任しなければなりません。清算人とは、文字どおり会社の清算、つまり会社に残された資産を換金して負債を返済し、残された財産(残余財産)を株主に分配する役割を担う人です。清算人に就任するには法務局で登記をしなければなりません。

★家族は株主として残余財産の分配を受けることができる
中小零細企業の場合、代表者が全額を出資していてその全株式を所有していることが通常です。代表者が死亡すれば、株式という財産は家族に引き継がれ家族が株主になります。家族は株主として残余財産(清算時の残された会社の財産)の分配を受けることができるのです。

≪重要≫負債が多い場合には弁護士に相談を
負債があまりにも多く、代表者の死後、債権者が家族のもとにまで押しかけてきている場合には会社には近寄らないことが賢明です。まずは弁護士に相談をすることをおすすめします。

【PR】記事の内容と直接的な関連はありません。



破産はせずに事業を継続したい(破産は義務ではない)

2021-04-29 10:30:00 | 廃業、会社清算
破産はせずに事業を継続したいという経営者は多いです。世間体や破産した後の負い目を気にしてのことです。

破産は義務ではありませんが、破産をせずに事業を継続するには相当な苦難を覚悟しなければなりません。しかし、実際に破産を回避して立ち直るケースもあります。

◆金融機関にリスケを依頼する

破産を回避する第一歩は、金融機関にリスケ(リスケジュール)、すなわち返済条件の見直しをお願いするということです。金融機関は、様々な法的手段で自らの債権を保全することができますのでリスケには応じてくれます。このあたりが、一般債権者(仕入先など)や社員との違いです。

「返済期間が5年から10年に延びる」、「当分は金利だけ」などとなれば資金繰りは相当楽になります。ただし、リスケをすれば新規の融資は受けることができません。

◆各種税金や社会労働保険料の納付を待ってもらう(免除はされない!)

各種税金や社会労働保険料については、資金繰りの悪化時には本来の期日より遅れての納付が許されます。「免除はしないけれども、会社を潰すような取り立てはしない」というのが各役所のスタンスです。

ただし、納付が遅れたことのペナルティは生じますので、結果として資金負担は増えることになります。

◆決算と申告は必ずする

金融機関へリスケを依頼するとき、依頼した後には、相当詳細な経理データを提供しなければなりません。各種税金や保険料の納付の延期を役所に依頼するときも同じです。

「業績が悪いので税金のことも気にする必要がないので、決算や申告は適当でいい」ではいけないということです。

◆仕入先には通常どおりの支払いを続ける(仕入先の見直し)

仕入先には通常どおりの支払いを続けなければなりません。そうなれば、支払条件の厳しい仕入先とは取引が継続できなくなりますので、替わりに新たな仕入先を開拓する必要があります。

十分な仕入先を確保できない場合には、事業内容の見直しや縮小を迫られます。

◆社員の給料も必ず期日どおりに支払う(社員の削減や選別)

社員の給料も必ず約束した金額を期日どおりに支払う必要があります。ただし、苦境下では人員削減や入替えもやむを得ないことですので、適切かつ果敢な判断をしなければなりません。

社員の減少や構成の変化によっては、事業内容の見直しや縮小を迫られることはいうまでもありません。

========

★リスケ後の返済条件に耐えられるか?
リスケ後の返済条件は必ず守らなければなりません。返済は据え置きで金利のみとなった場合には金利は約束どおりに支払わなければなりません。

★いずれは元金の返済ができる
リスケは一時的な返済条件の見直しですので、いずれは元どおりの条件で返済ができるようにならなければなりません。

========

破産を回避するには、「なにがなんでも会社を再建する(会社は潰さない)!」という経営者の強い意志が必要です。当然、「甘えない」「迷惑をかけない」「不正や違法なことはしない」ということも大切です。

【PR】記事の内容と直接的な関連はありません。



倒産に対する固定観念や偏見(倒産が正しい選択の場合も)

2020-11-22 12:00:00 | 廃業、会社清算
世の中には倒産することを罪悪であると考える風潮があります。その背後には、「払うべきものは払う、借りたものは返すのが当たり前」という道徳観だけでなく、倒産に関する諸制度が悪用されてきたという歴史的事実があります。

◆倒産後は「法的手続」が行われる

倒産とは、会社の資金繰りが悪化して、当座の支払いもままならなくなり、事業の継続が困難な状況に陥ることをいいます。そうなれば、仕入先や融資をしている金融機関などの債権者は我先にと回収することに躍起となり、事態の収拾がつかなくなります。

会社が倒産した場合、「破産」「特別清算」「会社更生」「民事再生」という法的手続によって、債権者と債務者である会社との「利害を調整」します。いずれの法的手続においても、裁判所が介入して会社の資産状況を明らかにし、それを債権者に分配します。しかし、倒産するような会社のことですから、債権者はその債権の全額を回収することは到底できません。法的手続は、法律による「棒引き」ということです。

◆資産を隠して倒産する悪質な輩の存在

倒産に関する法的手続が債務の免除(債権の切捨て)であることを悪用して、実際は支払や返済をする資産があるにもかかわらず、資産を隠して苦境を装い法的手続に持ち込むということが実際にあります。法的手続は裁判所の厳格な監督下で行われますが、巧妙に網の目を潜り抜けるのです。

◆倒産した会社が再び活動しているという「不思議?」

法的手続には、会社を清算させる(消滅させる)「破産」「特別清算」、会社を再建する「会社更生」「民事再生」がありますが、世間一般では後者の再建型の法的手続というものについて理解に苦しむ人は多いです。

「〇〇社、経営破綻!負債総額1兆円」と、大々的に報道されたのに「同じ社名」「同じ場所」「同じ顔ぶれ」で、「しゃあしゃあと!」営業を続けているということがあります。これでは、倒産により被害を受けた人たちは「社外の関係者に損を押し付けただけではないか!」といって激怒します。しかし、「会社更生」と「民事再生」はこういう制度なのです。

また、再建型の「会社更生」と「民事再生」が行われるのは比較的規模の大きい会社ですので、「大企業だけ法律で救済するのか!?」という国民感情があります。

=========

★倒産した会社の経営者は悪者?
誰もがやむを得ないと思える事情(例えば災害)で倒産に至った場合はともかくとして、倒産した会社の経営者は悪者扱いです。それには上記のような倒産にまつわる歴史があるからです。そんなことから、倒産という選択をする経営者は世間から相当な批判を浴び、今後の人生でも大きなハンディを背負うことを覚悟しなければならないのです。

★被害の拡大を防ぐ
しかし、倒産という選択が正しい場合もあります。それは、このまま放置しておくと被害がさらに拡大してしまう場合です。倒産の時期をいたずらに延ばすと、経営者には会社を倒産に向かわせたという責任と倒産の被害を拡大させたという「二重の責任」が生じてしまいます。

【PR】記事の内容と直接的な関連はありません。



小規模企業共済の共済金(辞め方その他で違う)

2020-11-11 19:30:00 | 廃業、会社清算
掛金月額1000円という手軽さから、「なんとなく」加入する人がいる小規模企業共済です。しかし、いざ共済金を受け取る段階になると、共済金の金額が「辞め方(辞める理由)」や「掛金を支払っていた期間」などによって違ってくることに戸惑う人が非常に多いです。

◆会社経営者(役員)の共済金

共済金は役員(社長、専務など)を退任する理由などによって次のとおりに区分されます。

〇共済金A(会社は消滅)
会社が解散した場合

〇共済金B(会社は存続)
病気やケガによる退任、65歳以上での退任、死亡、老齢給付(65歳以上で180か月以上掛金を払い込んでいる)

〇準共済金(会社は存続)
会社の解散・病気やケガ以外の理由での退任、65歳未満での退任

〇解約手当金
任意解約、機構解約(掛金を12か月以上滞納した場合)

◆個人事業主の共済金

共済金は次のとおりに区分されます。

〇共済金A
廃業、死亡

〇共済金B
老齢給付(65歳以上で180か月以上掛金を払い込んでいる)

〇準共済金
法人成りした結果として加入資格がなくなった

〇解約手当金
任意解約、機構解約(掛金を12か月以上滞納した場合)

◆共済金の給付水準

給付水準の体系は、「相互扶助の精神」に基づき、事業をやめたときに受け取ることができる共済金の額を高めに設定し、任意性の高い解約手当金の額を低めにされるという仕組みになっています。

共済金A>共済金B>準共済金>解約手当金

ということです。

高齢になり後継者もなく、「刀折れ矢も尽きて」「万策尽きて」さらには「精魂も尽き果てて」廃業をする人の共済金が一番多くなっています。後進を育成して、その後進に道を譲った人はこの共済制度においでは「恵まれた人」という扱いです。また、短期の貯蓄や節税を目的としている人にはこの制度は向きません。

◆共済金を受け取った場合の税金

この共済制度は、会社経営者であっても個人で加入しますので、掛金の支払いも共済金の受け取りも会社の資金や税金とは一切関係がありません。

共済金を受け取った場合の税金の扱いも、共済金の給付水準同様、非常に複雑です。給付金の区分が同じでも扱いが異なってくるからです。

〇基本的には「退職所得」
共済金A・Bまたは準共済金を一括で受け取る場合は退職所得です。退職所得は他の所得との分離課税で、小規模企業共済の加入期間に応じて収入から一定額が控除され課税される退職所得の金額が減額されます。また、これらの手続は中小企業基盤整備機構に従って行えばそれで済みます(自ら確定申告などをする必要はありません)。

〇共済金を分割で受け取る場合は「公的年金等の雑所得」
共済金A・Bは分割して受け取ることもできます。その場合の税金の扱いは「公的年金等の雑所得」と同じですので、共済金の額や他の所得との状況に応じて自らが確定申告についての対応をしなければなりません。

〇遺族が共済金を受け取る場合(死亡退職金)は「みなし相続財産」
共済契約をしている人が契約期間中に死亡した場合には、その遺族が共済金(個人はA、会社がB)を受け取れます。これは、相続による財産とみなされますので遺族の人は相続税についての対応が必要となります。

〇任意解約は「退職所得」あるいは「一時所得」
65歳以上での任意解約は「退職所得」、65歳未満での任意解約は「一時所得」です。一時所得とは生命保険の解約時にも適用される課税方式です。

〇機構解約は「一時所得」

========

★退任あるいは廃業の理由についての証明
上記のとおり小規模企業共済の共済金は、退任や廃業をするにいたった理由によって異なってきますので、共済金を請求するに際しては理由を証明する書類を提出しなければなりません。法務局が発行する登記事項証明書、税務署に提出した書類の控(税務署の受付印が押印されているもの)が必要ですので、退任や廃業をして共済金を請求するに先立ってこれらの役所に対する所定の手続を欠かすことができません。

【PR】記事の内容と直接的な関連はありません。



廃業すべきなのか?(誰も教えてはくれない)

2020-11-02 17:00:00 | 廃業、会社清算
暗い話題で申し訳ありません。しかし、廃業は中小零細企業にとって避けては通れない問題です。コロナ禍が、さらにそれに拍車をかけています。

「廃業をしたいがどのように進めてよいかがわからない」という経営者が多いです。やはり、まずは現在依頼している会計事務所(税理士)に相談することです。会計事務所(税理士)であれば、実情に応じた適切なアドバイスをしてくれます。

◆経営者の年齢(誰しもいずれは死ぬ)

中小零細企業の経営者にはサラリーマンのような定年はありませんので、「生涯現役」「人生100年」で頑張ればいいと思います。

しかし、忘れてはならないのは、人間誰しも「いずれは死ぬ」ということです。活動中の企業を残してその経営者がこの世を去ると、残された者は本当に大変です。自らの死期を予測することなどできませんが、健康状態や遺伝的要素で判断するしかありません。

◆後継者がいない

ここでの後継者とは、経営者に万が一のことがあったときに直ちに経営ができる者のことであって「後継者候補(後継者にするつもり)」ではありません。しかし、中小零細企業でこのような者がいることはほとんどありません。

◆属する業界の将来性がなく新規事業も見当たらない

産業に栄枯盛衰はつきものです。常に花形産業であり続けられるよう「進化」や「変化」ができればいいのですが、残念ながら中小零細企業にはそんなことはできません。

◆主要取引先との取引が継続できそうにない

中小零細企業の中には、特定少数の取引先に依存しているケースがあります。その取引先の経営状態が悪化している、経営方針の変更により取引を打ち切られるということは当たり前のようにあります。

◆資金が減る一方

資金が尽きると企業経営は成り立ちません。資金が尽きて支払いができなくなると仕入はできず、給料も支払えません。「もう少し待ってくれ!」は甘いです。「金の切れ目が縁の切れ目」で誰もが去っていきます。

◆借金が増える一方(倒産だけは避ける)

金融機関などから借りたお金は、当然ですが返さなければなりません。返さない場合、相手は強硬な手段に出てきますので、これを避けるためには倒産という最終的な選択をしなければなりません。

倒産(破産などによる借金の切捨て)をしたならば、経営者は社会的信用と人間関係を失い、以後の人生においてそのことが大きなハンディとなり行動が制限されます。だから、倒産は避けなければなりません。倒産する前に廃業をしなければならないのです。

========

★意欲がなく、自立心がなくなった

意欲がなくなれば、研究心や向上心もなくなり、アイデアも浮かばす困難にも立ち向かえません。自立心がなくなれば、つい人を頼ってしまい、厄介者となってしまいます。

もう、廃業するしかありません。周囲もそれを望みます。退場を促します。

========

人は信念とともに若く、疑惑とともに老いる。
人は自信とともに若く、恐怖とともに老いる。
希望ある限り若く、失望とともに老い朽ちる。

――サミュエル・ウルマン

精神論を唱えるつもりはありませんが、これが大事だと思います。でも、無理や無茶はしないでください。

【PR】記事の内容と直接的な関連はありません。