
Causerie
樹上に声がある。天上から声が降ってくる。若くて細い声が頻りと降りてくる。長閑な空に響く歌うようなお喋りだ。
(あのねあのね……)
(ねえ知ってる?……)
(可笑しいのよ……)
(あの人に手紙を……)
花も蕾の乙女たちが集い、噂話にひそひそ話、笑い話に恋の顛末ひと幕と、選り取り見取りに囁き合っているのだ。
ああ解ってないのね。お喋りは、女の子の嗜みよ。他愛もないと嗤う男の子こそ、delicacyがないのだわ。
枝葉の茂りは、乙女等の声でいっぱいいっぱい、立ち入る隙間もない程に、膨らみきっていて。
と、乙女等の群がる枝という枝を、悪戯好きの風がひと際激しく【ごうっ!】と揺すって回ったから大騒ぎ。
てんやわんやの大音響に乙女等が逃げ出した!――かと思ったら、それは羽音で、飛び去っていくのは、
シジュウカラ、の、群れだ。
逃げ遅れたのか。そもそも暢気者なのか。葉陰に一羽残っていたのが、やがておしゃべりし始める。
ツーピー、ツーツーピー、ツーピー、ツーツーピー、ツーツー、ツーツー、ピーピーピー。
いいこと? 女の子のお楽しみを邪魔するがさつな風は、誰にも相手にされないから、冷たい冬なのだわ。
written,elaborated:2017/11/10
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