V=4/3πr³

詩と物語を紡ぎます

紫陽花

2020-05-29 01:35:00 | poem
 昏い

 五月も半ばを過ぎてからmonotoneの雲に連日塗り潰された雨催いの空でもう来週は六月の短夜に弾けただけでなくやむを得ず弾けてしまった世界中の生と死が宇宙樹の果実にimaginationされるというのに

 否!

 だから昏い天上も地上も地下も深海のマリンスノウの藻屑もCOVID-19感染症禍の景気も世相も何もかもがどうでもいいCryに昏くて暗いのだから

あしたは、わたくしに、
ひかり、を、ください、

とそう祈っていた



 早朝の首都では十日振りに雲が切れてそれは十日という時間と空間の相対性に関わることもなくLEDの人造光ではない太陽が放つ日光を松果体に浴びるだけ浴びて
 虹を圧縮した日光は崇高な希望をも内包した『色彩《いのち》の源』であり光合成は生き物の必要充分だと知れたから自ら進んで悔い改めたのだった



 ニワトリとタマゴ問題(あるいは『事件』)に想いをはせるまでもなく初めは誰がそう構成したのか知らないはずなのにすべての色は白から始まり黒で終わる事を知っていた



 最初は淡く徐々に濃くそれでも恋に溺れるようなヘマは決してせず色彩にその身を委ねて躊躇いも矜持も無く何色でも産み出し染まるのが白
 ……そう識っていましたか?わたくしは識らなかったし恥ずかしいとも思わなかったその事実が痛恨の無知でしょう



 それぞれの肉体がそれぞれの色彩を生きることに何の衒いもないように雨の中でただあなたと揺れていたいだけのわたくしだからHomo sapiensにはそんな大した知恵はないのです


photographed
2020/05/12,17,19,26
written
2020/05/18〜29

コメント (4)
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布団干し

2020-05-16 21:00:00 | daily tsukasa
♫るーるるるーるー♫
♬きょーもいいてんきー♬

 *魔窟の書斎に突如、光が出現。独特の輪郭が形を成していく。

yukari:じやあああん!【守護霊免許、第二種限定解除、所持!】さぼてんゆかり、こーりん!しやきいいいん!
みなさん、おつはよう、ございました!……つかささん?……おうる?

 *かっと目を見開き、眠っているオウル。

owl:Zzz……Zzz……えへらえへら、江ノ電は新幹線より速いねえ、へらへらへら、……zzZ……zzZ

 *敷きっぱなしの布団。つかさの姿が見えない。

yukari:あら? つかささんはどこへいつたのでせう? おせんたくしないと、いけないつて、ゆうべいつていたのに。(カーテンを開けると物干し竿に干されている洗濯物)……ををつ、してあるじや、ないですか。やるときは、やりますね、ふつふつふつ。これで、おふとんまで、ほしてあつたら、まんてん、なのに。まあ、それが、つかささんの、かわいいところ、ですが。
それにしても、はやおきは、さんもんのとく、ですよ、『みすたー・ぱんち・あみだ』さんから、いいおはなしを、きけました。ようりよくその、しんぴ、こうごうせいのみなもと、につこうが、しんがたころな、を、かつどーていしに、おいこむ、ぱわーを、ひめていた、とは! につこうにあたると、しんがたころなも、『いちころつな』です。おてんとさまは、いだい、ですよ。それでは、
につこう・しようどく
はじめましようか。

 *ゆかり、布団をひょいと二本の棘でで持ち上げ、持ちやすく畳みながら、

yukari:おふとんを、につこう[ひえー、ぐぎばぎっ]しようどく……、ん?、いま、なにか、おとが?、したような。

 *ゆかり、恐る恐る布団揺すってみる。が、何も音はしない。

yukari:……きのせい、でした、か?

 *ゆかり、棘を、十数本伸ばし、布団を竿に掛ける。

yukari:そうそう、はたかないと、ですね。

 *ゆかり、背中の棘で、布団はたきを使いつつ、メインの二本棘で、掃除機をかける。

 ういー〈ぱーん、ぱーん〉ん、がーご〈ぱーん、ぽよん〉[おわっ]ーがー、〈ぱーん、ぱーん〉ういーん、う〈ぽよん、ぽよん〉[あひー]いーん、ごーごーおー、ういー……んんん

yukari:?、なんか、へんなおとが、してますね?
owl:ゆーかーりーちゃーんー……
yukari:うわつ、びつくりしたあ! なんですか、おうる、【志村!、後ろ!】みたいなことして。……あつ、ちようどよかつた。この、そうじき、なんだか、へんなんです、よお。
owl:それどころじゃありません! もっと面妖奇っ怪なことが……。
yukari:めんよー、きつかい、なこと?
owl:物干し竿をご覧なさい。
 *物干し竿を見るゆかり。
yukari:……ええつ?
owl:一体誰が、こんなだいそれた事を。

 *物干し竿にふたつ折りに干されている、つかさ。抜けかけた魂が、『ぴちぴち』と空中を跳ねている。


owl:ああ、魂が抜けてしまう!
yukari:つかささーん、あばれちや、だめですよお!
owl:何か、何か捕まえるもの!
yukari:はいはいつ、これ。

 *つかさの魂を捕まえようと、ゆかりは洗面器、オウルはざるを手に右往左往する。

owl:えんやっ、の、こらさっ、と。
yukari:どつこいさの、こらさつ、と。
owl:これでどうじゃ? へい、こっちへ追い込んで!
yukari:あーん、こんどは、そつちですう!
owl:猛禽類の名にかけてっ、貰った!

 *魂にざるをかぶせるオウル。魂、ざるの編み目からすり抜けようとする。

owl:いかん、洗面器、洗面器!
yukari:あー、みー、まー!
owl:やった! 魂返しの術を!
yukari:おおつ、しやきいいいん!
【えくな・ど・えぎーふ、えくな・ど・えぎーふ、あゔぉと・きほ・つ・かやーはー、ししふーつ】……はつ!

 *魂、ふらふらとつかさのからだに戻る。

owl:……何とか。
yukari:……もどりましたね。
tsukasa:……うーん、うーん。
owl:……つかささんを、取り込みませんと。
yukari:……はいつ。

=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-==-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=

yukari:さぼてん、としたことが。つかささんごと、ふとんほし、しちやつて。
tsukasa:……はい、畳まれ叩かれ干されてました。大炎上の気持ちがわかりましたよ……。
 *衰弱しているつかさ。
owl:つかささん、気付薬ですよ。くいっとやってください。
 *それは、オウルが大切にしている18年もののスコッチである。つかさ、くいっとスコッチを飲み干し目を閉じる。
owl:つかささん、つかささん、しっかり。大丈夫ですか?
yukari:うわーん、つかささーん。
tsukasa:……あいーん、……あいーん。
owl・yukari:?……あいーん?
tsukasa:気付薬、旨あアイーン、もっと飲みたアイーン。

owl:……こりゃほっといても、
yukari:……だいじょうぶだあ。



written
2020/05/15,16
improved
2020/05/17,18
inspired by Ken Shimura
志村けん氏の四十九日に寄せて。
合掌
コメント (2)
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花芽

2020-05-13 18:30:00 | poem
 精神科医院の三叉路を右に曲がり、大通りを越えて調剤薬局へ向かう道すがらの記念公園の手前。
 毎夏、午後の立ち飲み酒場に、くっきりとした木陰を刻む、街路樹の根本に、

今年も産声を聴いた。

 それはひと際濃い、深海水に揺蕩う瑠璃の色彩で、角膜と網膜のみならず、脳も、auraまでも一途に、深く清しく染めてしまう、預言だ。



五月雨に
濡れて滲みし
水彩画の色彩で
耀り咲みませ
紫陽花の幼子

さみだれに
ぬれてにじみし
ゑのいろで
ひかりゑみませ
はなのをさなご


written
2020/05/07,12,13
コメント (2)
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