私の「認識台湾」

個人的な旅行(写真)の記録を主眼としつつも、実態は単なる「電子落書き帳」・・・・

対日賠償請求を検討!?~台湾新幹線、開業前に迷走

2005年09月03日 | 台湾
82年の開業当時、東北新幹線は大宮暫定開業でした。上野から大宮までは新幹線リレー号が30分弱で結んでいましたが、昨年新八代~鹿児島中央が暫定開業した九州新幹線「つばめ」も博多~新八代間は特急リレーつばめが接続しています。
私の友人などは、「たった35分の新幹線に乗るために、1時間45分も接続特急に乗るわけ!?」と呆れたような顔をしますが、そのたった35分の区間が開業前は2時間10分かかっていましたので、全体の所要時間は3時間40分から2時間10分へと大幅に短縮され、格段に便利になりました。事実乗客数も開業前と比べ200%強で推移しています。
九州新幹線は最新式のデジタルATCが採用されており、山陽新幹線と比べても格段に乗り心地がよく、5年後の全線開業が心待ちですが、「新幹線」でニュースをクリッピングしておりましたら・・・・

◆台湾新幹線、日本に損害賠償請求へ(産経)
◆初輸出新幹線、軌道乗るか 台湾で試験走行3カ月遅れ(朝日)
【参考HP】台湾高速鐵路(台湾新幹線)開業までの経緯

「台湾側はまだ正式には開業の遅延を認めていない」とあるように、未だに今年10月31日開業という「大本営発表」を続けていたというのも驚きですが、よりによって日本に「損害賠償請求の検討作業」ですか・・・・
そもそも99年に欧州連合で9分9厘決まりだったところを逆転受注した時点で仰天するとともに、大丈夫なのだろうかという疑念は抱いておりました。2月以降の一番の問題は、朝日の記事にあるように仏方式との信号システムのすり合わせ。純粋な日本種でなく、いわば雑種の形での輸出プロジェクトが成功すれば、今後の一つのモデルとなるという期待もあったものの、信号システムだけは譲るべきではなかったかもしれませんね。東海道新幹線を例に取れば、1時間に上下30本、1323人を乗せた時速270キロの列車が3分30秒間隔で続行するような高密度体系となっていますが、このことからも如何にATCが文字通りの命綱であるかがよく判ります。
「日本企業側は、引き渡し契約が来年二月となっている上、建設遅延の原因の多くは台湾側にあるとして、日本側への損害賠償請求に正当性はないとの見方を強めており、日台双方の見解は大きく食い違っている」
と産経の記事にはありますが、当然日本側はATCや運行方式も日本式にするように要望したでしょうし、欧州勢が口出ししてくるのは台湾高鐵側の都合を飲んだ結果でしょう。その挙句朝日の記事のような嫌がらせまがいとも見える事態に至っている訳ですが、無事に開業にこぎつけたとしても、この部分でのトラブルは覚悟しておいた方が間違いないでしょう。
もっとも、米国で三菱自動車がセクハラで訴えられたり、東芝がPCで訴訟を起こされたりした事例もあったように、日本側も海外導入経験に乏しい鉄道、しかもJRという点がマイナスに作用した感は否めません。前述した信号システムにせよ、譲れない、保証できないところは断固として主張すべきではなかったかと思います。まさか日本勢が小林よしのりの漫画を鵜呑みにして「親日台湾」の幻想を抱いていたということはないでしょうが、外国人相手のビジネスという観点での日本人の「脇の甘さ」が露呈した一例と言えるかもしれません。
最終的にどう決着するかは続報を待つべきでしょうが、こちらの正当性の主張は当然のこととして、今からでもできる防衛策をあらゆる側面から再検討すべきであろうと思います。開業後にあれこれ難癖付けられたらたまったものではありません。
JR東海の葛西会長は儲けを期待してのプロジェクトではないと公言していましたし、「海外に実際に走る新幹線のショールームを作った」と考えれば、程度次第では損して元取れとなるのかもしれませんが、今後に活かすべき教訓というのはきちんと汲み取っておく必要があるでしょうね。

まぁ、私自身は「工期が遅れているとはいえ、見切り発車は厳禁。きちんと仕上げて無事に走ってくれれば・・・・」と以前から思っておりましたが、台北駐日文化経済代表処の許代表が言っているような、「台湾の新幹線開通式典には日本閣僚を招く」という雰囲気にはならないでしょう。そもそも、台湾高鐵が鉄道にド素人な集団なのは別にしても、HPが英文と中文のみだったり(日本語版も作る予定だったはずですが)、海外向けのCMを米国とシンガポールにしか流していないという点が全く不可解です。開業も遅れるなら遅れるで、日本の旅行代理店に売り込みに来るとか、プロモーション活動を行うとかその間の次善策はいくらでもとれるはず。この集団は台湾への渡航客の3分の1強が日本人ということすら知らないのではないかとさえ思います。(日本語の車内アナウンスは期待できないでしょう)

まぁ、台湾でこんな調子なのですから、「君子危うきに近寄らず」で中国の高速鉄道事業なんかにはとても関われないのは間違いのないところでしょう。

※写真・・・・鹿児島中央駅に停車中の九州新幹線800系つばめ

1編成6両で20億らしいです。九州新幹線は日・英・中・韓の四ヶ国語でアナウンスが流れます。

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3 コメント

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Unknown (ethnic)
2005-09-07 13:06:32
台湾新幹線問題は何がホントの障害かがわかりにくいです。結局いまだに資金手当てができてないのであれこれ他の理由に転嫁しているとかの話も聞きます。

台北ー高雄間だけをみればメリットありますが、そのほかの駅からについてはバスには勝てないでしょうね。
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どうやら、 (kyouji)
2005-09-08 20:56:21
 台湾のマスコミが「損害賠償を」と言ったのを転載しただけで、実際には「その気はない」ってのが事実のようで、日本での転載報道が勇み足だったようです。

 また、延期による資金問題がでても、当局が契約を買い受ける-当局がバックアップする、という形のようですね。



http://www.asahi.com/international/update/0907/008.html
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来年末or春節前かな? (tsubamerailstar)
2005-09-09 00:47:09
>ethnic様



まぁ、知日的であるか否かという以前に、ホント仰るとおり判りにくいようですね。

台北~高雄だけでもあれだけの線形で土地開発兼ねてというところは中々意欲的ですが、BOT式の投資環境はまぁ、よろしくないというのが総括ですね。(汗)



>kyouji様



初めまして、コメント有難うございます。件の朝日の記事は私も読んでおりましたが(朝日が行政院長に取材に行ったのはこれだったか!)、実際JR筋やらゼネコン関係からも「このプロジェクトは振り回されて疲れた」という声は入っているのは事実です。私の個人的な伝聞ですから詳述は出来ませんが。

高鉄の「離日」的営業姿勢に関しては、殷理事長に近い人を通じ既に申し添えております。しかしながら、「離日」的傾向が改善される気配がないという点では疑問ですね。







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