先ごろ流しびなのことについて触れた。流しびなはよく知られた習俗であるものの、現在はほとんど実施例がない。予定通り昨日の新聞には北相木村の「かなんばれ」の行事が報道されたが、県内では唯一のもの。全校で60人たらずという北相木小学校の行事として実施されているため、学校が継続されるかぎり続けられる行事なのだろう。人形に災いを託して流す、いってみればかつてはひな祭り以外でも行われていたであろう考え方。人形といえば現在では大祓いの方に残されている例が多い。
わたしは男兄弟ということもあってひな祭りの記憶はあまりない。母が嫁入りする際に持ってきたものなのか、ひな祭りになると飾っていたことを思い出すが、それが母のものなのか誰のものなのかよま覚えていない。もちろんこのあたりでは月遅れだったから4月3日をひな祭りといった。古い押絵びなもあって、こちらは祖母のものだったと思うのだが、今はわたしが2体ほど持っているが、だいぶ傷んでいる。母がひな祭りに出していた人形がその後どうなったのか解らないが、女の子っ気がなくなってくると、飾ることもなくなった。このひな人形の処理の仕方が、『長野県史』民俗編の調査項目にある。そして第4巻(2)北信地方と第1巻(2)東信地方の同項目には「古いひな人形の処理方法」という分布図が掲載されているとともに、第5巻総説Ⅰには全県を対象にした同じ地図が掲載されている。あらためて県内の全データから分布図にしてみたのが冒頭の図である。少し凡例が見づらいが、上から
川へ流す
道祖神へ納める、ドンド焼きで焼く
土蔵にしまう、しまっておく
焼く
石仏の前、辻の神様へ納める
氏神さま・神社へ納める
寺などに納める
子どものおもちゃにする
次の世代へ譲る
処分する、捨てる
という分類で図化しているが、「次の世代へ送る」という例は北信に1件あるのみで、「子どものおもちゃにする」というものも3件のみと少ない。データ数としては同じ地点で複数回答のものもあり、県史調査地点423箇所に対して298を数える。最も多いものが「氏神さま・神社へ納める」というもので、105箇所あり、全体の35パーセントを占める。また、「川へ流す」は73件あり、全体の24パーセント。次いで「焼く」というもので50件17パーセントにあたる。最終的には「焼く」というものはここにカウントした。意外に多いのは「土蔵にしまう、しまっておく」というもので、22件7パーセントにあたる。さらに、道祖神へ納める、あるいはドンド焼きで焼くというものを含めると27件9パーセントを数え、長野県らしい回答と言えるのかもしれない。
全県的に神社に納めるという回答が多く、ここには地域特性は見られない。「川へ流す」という回答は千曲川流域に多いことが言えるだろうか。明らかに地図の上半分に多く見られる。意外に多かった「しまっておく」という回答も北信・東信がに多く見られる。単に「処分する」というものが飯山市周辺に事例が多い。また道祖神にかかわる処分方法は意外に中信には少ない。
「古いひな人形の処理方法」については分布図からも解るように、あまり地域性が見られない、いってみれば地図にしても面白くない事例ともいえそうである。
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