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伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

上川手の篶竹細工を訪れる 外編

2019-12-26 23:28:39 | 民俗学

上川手の篶竹細工を訪れる 中編より

 「上川手の篶竹細工を訪れる 前編」において、南信におけるスズタケによる手工業の事例を『長野県史民俗編』第2巻(二)南信地方「仕事と行事」から拾ってみた。スズタケによって作られた物について、蚕かご、ざる、こうり、かご、びくといったものが上げられていた。地域的には下諏訪町から辰野町や伊那市といった上伊那から、飯田周辺や遠山、さらには新野までと全域にそうしたスズタケを利用した細工が行われていたことがわかった。

 そこでほかの地域について『長野県史民俗編』の事例を拾ってみることにする。

1.東信(同第1巻(二)東信地方「仕事と行事)

〇すず竹で、桑摘みかご、小ざる、腰かご、とうじかご、あげずいのを作った。(S20-真田町真田)

〇すず竹でざる、コシゴを作っている。(和田村久保)

〇すず竹ですずかごを作った。(軽井沢町発地)

〇すず竹で職人がかご類、容器類を作った。(S初-御代田町豊昇)

〇すず竹で、おにざる、みそこしざるを作った。自家用程度であったが、向井愛二氏が普及した。(S30-佐久市駒込)

〇すず竹で、養蚕のかご、ざるを作った。(S30-佐久町上本郷)

〇すず竹でざる、蚕かごを作った。(戦前-佐久町下川原)

〇すずでいざる、コシゴ、コンボテ、ショーミを作った。今でも若干ある。(S40-北相木村京の岩)

〇すず竹でざるを作った。(S40-南相木村中島)

〇すず竹でざる、かごを作った。(T-小海町親沢)

といったものがあげられているが、クマザサの一種であるスズタケと同類のものとしてネマガリダケがある。その事例もあげられている。

〇根曲がり竹を材料として、コシゴ、ざる、ぼて、みそこしを作った。材は下高井方面から購入した。昭和十五年ころまで中吉田区に竹細工組合があった。(上田市小井田)


2.中信(同第3巻(二)中信地方「仕事と行事)

〇すす竹でいわなのびくを作った。(S30-稲核)

〇すす竹でこうりを作った。(S20-内田)

〇すず竹で竹ごうり、弁当ごうり、ケサゴリ、針箱に使うハリゴリを作った。(S20-下金井)

〇すず竹でびく、ボテを作った。(T初-小坂)

〇すず竹で蚕かごを作った。(T-洗馬)

〇近年まですず竹でざる、びく、ふるいを作った。(本洞)

〇すず竹でロジを作った。(S5-峠)

〇新開村ではすず竹でざる、びくを作った。(S30-原野)

〇すず竹でかご、びく、ざるなどを作った。(T初-藤沢)

〇すず竹でざるを作る。(吉野)

〇みすず竹で竹ごうりを作った。(S18-埴原、S30-赤木)

このほか、

〇根曲がり竹で蚕かご、桑入れかご、腰びく、イザロを作った。(S30-千国)

〇根曲がり竹で蚕かご、かんじき、ウケを作る。(沢渡)


3.北信(同第4巻(二)北信地方「仕事と行事)

本巻には、「すず竹」という名称は登場しない。

〇みを根曲がり竹やふじ、桜の皮で作る人が昔一人いた。下高井郡山ノ内町須賀川のみと同種のものであった。(森)

〇ざるやみ、かごを根曲がり竹で作った。明治四十年ごろ飯山市土倉に入り、大正元年ごろ桑名川に入った。五人くらいで製造していたがプラスチック製ができてきたので、現在は二人か三人でみや製紙に使用するざる、ワカンジキなどの特殊なものだけを作っている。(飯山市桑名川)

〇ざるやぼて、蚕かごを根曲がり竹で作った。(T10~S10-仁之倉)

〇ぼてやざる、かごを根曲がり竹で作った。自家用程度であった。(S40-極野)

〇かごやざる、みを根曲がり竹で作った。(S25-箕作)

〇み、ざる、くねぼて、米あげ、かごとおし、びく、さらを根曲がり竹で作っている。(中須賀川)

〇みそこし、小豆洗い、ショーダテを根曲がり竹で作る。昭和三十年ごろから減りはじめた。(中須賀川)

〇ざる、桑ぼて、かごとおしを根曲がり竹で作っている。隣村の須賀川方面では盛んに作っている。(横川)

〇ぼてを根曲がり竹で作った。(S15-菅)

〇蚕かごやざる、桑とりぼてを根曲がり竹で作った。(M~S30-関場)


 以上である。ほかに「竹」で作られた例はあげられているが、あくまでもここではスズタケ(同種のネマガリダケを含む)のみ取り上げた。このように、県内全域において、スズタケ系の竹による細工が行われていたことがわかる。

続く


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