元妻は境界性パーソナリティ障害だったのだろうか

クリスチャン 聖書 心の病気 家族支援 翻訳 心理学 片親疎外 回復 ヘブライ語 進化 創造 サイレントベビー

(22)境界性パーソナリティ障害の原因

2011年01月19日 | 境界性パーソナリティ障害


境界性パーソナリティ障害の原因を解説する、二つの記事を私訳しました。米国国立心の保健研究所(NIMH)のウエブサイトの記事と、英国国民健康保険(NHS)のウエブサイトの記事です。両団体とも、国の保健行政の下部組織になります。

境界性パーソナリティ障害の原因については、現在、環境要因と遺伝要因の両者が、相互作用しているだろうという見方で落ち着いています。双子についての研究があり、それが遺伝要因説を裏付けると言われていましたが、これについて、英国国民健康保険(NHS)のサイトでは慎重な解釈が必要であると付け加えており、良い見方だと思いここに載せました。

マーシャ リネハン博士は、Rethinking BPD:A Clinician's Viewという動画の中で、次のように述べています。『境界性パーソナリティ障害の原因は、不認証環境(invalidating environment)であると申し上げましたが、今はこの定義の中に遺伝的要因という考えを取り入れています。親の行動が子どもに影響するように、反対に、子どもの行動も親に影響を与えています。遺伝的要因を引き継いだ子どもの行動は、親の行動に影響を与えます。子どもも親も、互いに養育環境を作る要因となります。境界性パーソナリティ障害の原因は、遺伝的要因と環境要因の相互作用があるということであり、環境要因は、親と子どもの相互作用によるということです。不認証環境というのは、必ずしも、親の養育に問題があるということではありません』。このように、博士も修正を加えています。


~米国国立心の保健研究所のウエブサイトの私訳~

境界性パーソナリティ障害の誘発要因 The National Institute of Mental Health (NIMH)

境界性パーソナリティ障害の誘発要因を探る研究は、始まったばかりではありますが、遺伝的要因と成育環境による要因、この二つが作用しているであろうと言われています。これは多くの研究者が一致する見解です。

双子を対象にした研究があります。それによると、境界性パーソナリティ障害は先天的な要因があると指摘されています。ほかの研究では、親の気質、特徴が親から子に引き継がれる、中でも、興奮のしやすさ、攻撃性が子に引き継がれるということです。境界性パーソナリティ障害と関係がある遺伝子、激しい感情をコントロールする遺伝子の研究も進められています。

社会的要因や文化的要因も、境界性パーソナリティ障害を誘発すると考えられます。離婚のように、家族関係を壊すことを助長する社会的要因、若しくは、離婚や家庭の崩壊を助長する文化というものも、境界性パーソナリティ障害のリスクを高めます。親の行動に衝動性がある、不健全な社会生活を営む、その他境界性パーソナリティ障害の特徴に見られる行動をすることも、危険因子になります。また、境界性パーソナリティ障害を抱えた成人では、レイプなど犯罪被害者となる傾向が少なからずあるようです。


~英国国民健康保険のウエブサイトの私訳~

境界性パーソナリティ障害の原因 National Health Service (NHS)

境界性パーソナリティ障害に至るのは、単一の原因によるのではなく複数の要因が作用しているというのが、専門家の一致した見解です。


複数にわたる要因

・遺伝学上の要因:傷つきやすい性格となる遺伝子があり、それを親から引き継ぐということ。そのことにより、境界性パーソナリティ障害を誘発させやすい環境要因(親子関係など)を形成する。(環境要因については後述項目を参照)

・神経伝達物質による要因:脳内で信号が伝えられるとき、細胞と細胞との間で化学的伝達物質というものが働きます。ある神経伝達物質は、感情や行動に大きく影響しています。

・神経生物学上の要因:これは、脳神経系の仕組みや機能についての研究分野です。境界性パーソナリティ障害を抱える方の脳を見ると、特定の領域で、脳の形状や機能が通常とは異なっている場合があります。

・環境要因:成育歴、特に家族の間で起きた大きなできごとは、境界性パーソナリティ障害に強い影響を与えます。

更に詳しく説明いたします。


遺伝学上の要因

双子のきょうだいについて行われた研究がありますが、この研究結果から、遺伝上の因果関係を実証できるだろうと言われています。

ある研究によると、一卵性双生児の片方に境界性パーソナリティ障害が見られた場合、67%の割合で、もう一方のきょうだいにも、境界性パーソナリティ障害が見られたということです。

しかし、こうした研究結果に対し慎重な解釈が必要です。境界性パーソナリティ障害に関わる遺伝子の存在は、まだ実証されていないからです。

親の日常的な行動に、攻撃性がある、感情の不安定さが見られるといった場合、こどもは、こうした親の特徴を学習することがあります。これは、遺伝ではありません。

また、調査対象となった一卵性双生児のほとんどが、同じ親、同じ家庭、つまり同一の環境で育てられているので、養育環境の影響を排除できないのです。


神経伝達物質による要因

境界性パーソナリティ障害の方の脳内で、神経伝達物質であるセロトニンの機能変化が見られるようです。

セロトニンの機能変化は、うつ、攻撃性、自己破壊行動と関わりがあると言われています。

実証データは乏しいのですが、ある境界性パーソナリティ障害の方を調べたところ、ドーパミン、ノルアドレナリンという神経伝達物質の機能変化が見られ、そのことが感情の不安定さとつながっているのではないかということです。


神経生物学上の要因

脳の検査には、磁気共鳴画像診断装置(MRI)が使われます。MRIは、強力な磁場とラジオ波を発生させ、体内の様子を精確な画像にする装置です。

境界性パーソナリティ障害の方にMRI診断を行なうと、多くの患者で脳の特定部位に委縮や活動の異常が見られました。次に挙げる脳の3領域です。

・偏桃体:主に、感情コントロールと重要な関わりを持つ。恐怖心、攻撃性、不安といったネガティブな感情に関わる領域。

・海馬:行動の判断、自制心と関わる領域。

・眼窩前頭皮質(がんかぜんとうひしつ):結果予測、意思決定といった機能と関わる領域。



こうした脳機能の異常が、境界性パーソナリティ障害の症状を引き起こすのではないかと言われています。

幼児期の成育環境も、脳の各領域の発達に大きな影響を与えます。脳の特定部位が、人の感情を司るという見方ができるなら、境界性パーソナリティ障害の症状である対人関係トラブルなど、いくつかの特徴は説明がつきます。


環境要因

次に挙げる環境要因は、多くの境界性パーソナリティ障害の方に見られるものです。

・心理的な傷を抱えている、からだに傷害を加えられている、性的被害を受けている。

・幼児期に、継続して恐怖心又は精神的苦痛を受けている。

・親がこどもに無関心で、放置されていた。

・家族の中に、双極性障害など重い心の病気を抱える人がいた。若しくは、お酒、危険薬物におぼれる人がいた。


親、きょうだいとの関わりは、成人後の人生観、他者との信頼関係構築という面で、大きな影響を与えます。

相手に理想的な親の愛を要求し、自分は子どものように甘える。相手を攻撃し追い詰め、自分に危害を加えるよう仕向ける(他人を利用した自罰行為)。責任を周りの人に押し付け、自分には責任がないように振る舞う。これは、幼少期に、不条理な恐怖、怒り、苦痛を感じる環境で育てられたため、思考パターンに歪みが生じたことによります。

記事更新日 2014年8月19日


訳注

快適.Life
セロトニンとドーパミンとノルアドレナリン:三大神経伝達物質より引用


ドーパミン

向上心やモチベーション、記憶や学習能力、運動機能に関与。分泌が不足すると、物事への関心が薄れ、運動機能、学習機能、性機能が低下する可能性があります。パーキンソン病の原因とも考えられています。 一方、分泌が過剰だと、統合失調症や過食症、その他アルコール依存症やギャンブル依存症など様々な依存症を引き起こす可能性があります。

ノルアドレナリン

ストレスに反応して怒りや不安・恐怖などの感情を起こすため、「怒りのホルモン」や「ストレスホルモン」などの異名を持ちます。分泌が不足すると、気力や意欲の低下、物事への関心の低下など抑うつ状態になりやすいとされ、うつ病の原因とも考えられています。逆に、分泌が過剰だと、怒りっぽく、イライラ、キレやすくなり、躁状態を引き起こします。血圧が上がるため、高血圧症や糖尿病の原因になるとも言われています。

セロトニン

ノルアドレナリンやドーパミンの分泌をコントロールして暴走を抑える。咀嚼(そしゃく)や呼吸、歩行といった反復する運動機能にも関与しています。セロトニンが不足すると、ぼーっとしやすい、鬱っぽくなる、パニックを起こしやすいなどの症状が現れます。 投薬などで過剰になると、精神が不安定になったり、発汗や発熱、振戦(震え)など、セロトニン症候群という症状が起こることがあります。


脳の眼窩前頭皮質は嗅覚(臭いの知覚)も司るところです。英語のサイトを見ると、境界性パーソナリティ障害の方には、嗅覚の低下(臭いの区別ができないこと)も見られるといわれています。



***************************************


~敏感な感受性~

境界性パーソナリティ障害は、普通の家庭には起こらない病気で、親の虐待、機能不全家族などが原因であると言われてきました。そのため、親が高学歴で教育熱心な家庭に、境界性パーソナリティ障害の子どもが表れた場合、環境的要因は関係がない、先天的な要因ではないかと考えられてきました。そのように片付けてしまっていいのか疑問に思うのです。

マーシャ・リネハン博士はご自身の闘病体験を告白する中で、親から虐待を受けていたということは言っていませんが、両親は教育熱心で、忙しい人だったと回顧しています。博士は、境界性パーソナリティ障害を作る要因は『不認証環境』であると指摘しました。博士は不認証環境説の中で『人の成長過程には、特に敏感で傷つきやすい時期があり、この時期に不認証や否定的体験をすることは不認証環境を作る要因となる』と語っています。

上村順子氏は著書『なぜ子どもを殴るのか』の中で次のように述べています。表面上は明るく、怒らないようなお母さんでも、子どもの感情を否定したり、無視する言動で、深い傷を子どもに与えていることがある。とりわけ爆発した叱責はしなくても、子どもの情緒を無視し、子どもの人格を否定することは、子どもの心を傷つけ、ネガティブな感情をすり込みます。上村氏はこれを『マイルドな虐待』と名付けました。

リネハン博士、上村順子氏とも、幼児には、大人の感覚からは想像できないほど敏感な感受性があるということを指摘されています。



~モーセのつらい生い立ち~

幼少期を不遇な環境で育った人物が聖書に書かれています。出エジプト記のモーセです。ヘブル人は食糧難のため、エジプトに寄留することになりましたが、それが何世代にもわたる長い年数になりました。人口が増え続けるヘブル人は、エジプト人の脅威となり、パロ(ファラオ)は、それ以上ヘブル人が増えないよう、産婆たちに生まれる赤ん坊の間引きを命じます。そうした時期、モーセが誕生します。

モーセは間引きされることなく生まれましたが、生後3か月目、それ以上隠し育てることに限界を感じた両親は、パピルスのかごにモーセを入れナイル川の茂みに隠します。偶然それをパロの娘が見つけ、モーセはパロに引き取られ王宮で育つことになりました。命拾いをしましたが、親元を離れたモーセは複雑な気持ちを抱きながら成長したことでしょう。成人したモーセは、うまく社会適応できていなかったようです。ある時、感情のコントロールを失い大きな過ちを犯します。殺人、死体遺棄、及び逃走の罪です。

『モーセが成長して後、ある日のこと、同胞の所に出て行って、そのはげしい労役を見た。彼はひとりのエジプトびとが、同胞のひとりであるヘブルびとを打つのを見たので、 左右を見まわし、人のいないのを見て、そのエジプトびとを打ち殺し、これを砂の中に隠した。』出エジプト記 2章11~12節 口語訳

このように、モーセはことばよりも手が先に出る短気なところがあったようです。先ほどの殺人の場面では、周りに人がいないことを確認し、問答無用とばかり、エジプト人に飛びついて殺してます。モーセがエジプト人と口論をした形跡がありません。この時モーセは40歳だったのですが(使徒7:23)、あまりにも短絡的な行動が引っかかります。モーセの気性の激しさは、その生い立ちも関係していたでしょう。それに加え、何らかのことばの障害もあったのではないかと言われています。モーセはエジプト人に抗議をしたくても、うまく言葉にできなかったとすれば、この殺人の場面も納得できます。

この事件から40年後、神さまはモーセに現れ、エジプトで奴隷となっている同族を救うよう命じます。しかし、モーセは何度も拒み『わたしは口も重く、舌も重いのです』という理由を述べています(出エジプト4章10~16節)。ある解説書には、モーセは吃音症のような、ことばを話す上でのハンディキャップがあったのではないかと書いてありました。4章27節以降を見ると、確かに、兄アロンはモーセの口代わりとなり働いているので、モーセは、話すことに困難があったということです。

モーセの心には様々なコンプレックスがあったことでしょう。幼少期、実の親から離れて育てられたことは、自分は愛されなかった、認められることがなかったという劣等感を抱かせたでしょう。ヘブル人として生まれたにも関わらず、同族を苦しめるエジプト王家の中で育てられたことは、アイデンティティの曖昧さを招き、奴隷として働く同族に対し罪悪感を感じながら成長したことでしょう。更に、ことばの障害もあったようです。一見恵まれた王宮育ちのモーセでしたが、こうした心の葛藤もあったように思います。映画化されたモーセはヒーローのように演出されることがありますが、聖書が記述するモーセの行動を、虚心たんかい見るならば、欠点を多く持つ人物であって、ヒーローとして記述されていないようです。

このように書くとモーセは民族のリーダーとして相応しくないように聞こえるかもしれませんが、モーセのコンプレックス、犯罪歴、ことばの障害も必要なものだったようです。モーセが神と向き合い、また、自分自身と向き合うことができた時、謙虚さを学ぶことができたと思うからです。イスラエル一族がエジプトを脱出したあと、モーセは、兄アロンからいわれのない非難を受ける場面があります。それを聞いた主は『モーセは、誰よりも謙遜である(民数記12章3節)』それこそが、モーセをリーダーに選んだ理由であると、モーセを擁護します。

『神様がお望みなのは、悔いくずおれたたましいです。 ああ神様。 罪を深く後悔して砕かれた心にこそ、神様は目を留めてくださるのです』 詩篇 51篇17節 リビング・バイブル

人は、生まれた家庭環境を選ぶことはできませんし、体の特徴も選んで生まれてくることもできません。ある意味不公平なことです。しかし、つらい生い立ちや、人生の汚点となる失敗があるからこそ、人は謙遜を学ぶことができるのかもしれません。

『私たちは、神様を愛し、神様のご計画どおりに歩んでいるなら、自分の身に起こることはすべて、益となることを知っているのです』 ローマ信徒への手紙 8章28節 リビング・バイブル








1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
お知らせありがとうございます! (P助)
2015-02-28 15:26:34
手当たりしだい買ってみる・・・
嬉しいご意見です。
「よ~し!」と思い切ってデビーさんの本を購入しようと思いネットで奮闘したものの・・・(結局子供に頼んだのですが)
電子書籍・・・・なんですね。2冊とも。

ちょっとためらって今一度考えてみる事にしました。(色々と事情がありまして)
でもご意見ありがとうございました。
とりあえずお礼がいいたくて

では
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。