元妻は境界性パーソナリティ障害だったのだろうか

クリスチャン 聖書 心の病気 家族支援 翻訳 心理学 片親疎外 回復 ヘブライ語 進化 創造 サイレントベビー

(25)傷つきやすい心

2011年01月19日 | 境界性パーソナリティ障害


~境界性パーソナリティ障害と心のやけど~

マインド(英国こころの保健協会) 2013年1月25日掲載記事を私訳 
リンク先 http://beautyandtheborderline.wordpress.com/2013/02/03/the-burn-of-borderline-personality-disorder/

アメリカの心理学者マーシャ・リネハン博士は、境界性パーソナリティ障害を理論づけ次のように語る。

『境界性パーソナリティ障害の方の心をたとえると、体の9割以上を、深さ3度のやけどで覆われたような状態だといえます。心を保護する皮膚が失われているので、些細な接触であっても大きな苦痛を感じるのです』

訳注
上記のリネハン博士の言葉は、境界性パーソナリティ障害を抱える方が立ち上げるブログやYouTubeの動画、この病気の偏見をなくすキャンペーンや、弁証法的行動療法を解説するサイトなどで引用されるとても有名な一文です。


もし、体の9割以上に深さ3度の火傷を負ったとしたらどうなるでしょうか?皮膚は敏感になり、ちょっと触られただけでもヒリヒリと痛みます。やけどを負った患部に軟膏を塗ろうと触れただけで、顔を歪め痛がることでしょう。治療している間、ずっと激しい痛みに耐えなくてはならない。そのようなやけどの痛みをご想像ください。

では、心にやけどを負うというのは、どのようなことでしょうか?

やけどになったところは、傷あととなり残ることもありますが、いずれにせよ体に負ったけがというものは治るものです。心に負った傷も、治ったあとでも傷あとが残ることがあります。さらには心の傷は癒されないこともあり、傷に触れられると痛み、感染症に侵されるような生々しい傷のまま残ることもあります。

これから申し上げることをご想像ください。

見るものの色彩が『真っ白か、真っ黒』しかなく、灰色すら存在しない世界、見るものが『成功か、まったくの失敗』、もしくは『最高か、最悪』の両極しかない世界です。

境界性パーソナリティ障害の方は、ある時は、幸せに満たされた時間を過ごします。自分のやりたいことに集中し、次から次へと発想がひらめく完全に満たされた世界です。今までにない最高のコンディションにあり、世界のすべてが完璧で一点の染みも見あたらないように感じます。

しかし、やがて恐怖と孤独に苦しむ、人生最悪の日々が訪れ、あの幸福に満ちた世界は、音をたてて崩れます。感性はひらめきを失い、やることなすこと全てが上手くいかず、幸福に感じた日々は過去の遠い記憶で、もはや思い返すことすらできなくなるでしょう。

自分に対する他人のことばや、ふるまいに過剰反応するようになり、自分自身のコントロールを失って自暴自棄になり、理由もなく人を疑います。気持ちを落ち着け何かに集中することができず、昼と夜の生活が逆転し、理性的な思考や行動ができなくなり、周りの誰もが自分を見捨てて離れていくと感じます。自分の居場所がないことに息苦しさを感じ、こうした苦境が永遠に続くように思うのです。

自分自身を嫌悪し、自分の価値や自尊心を見失います。

自分の居場所がどこにもないので、生きることへの希望を失います。毎日が耐えがたい苦痛で、この苦しみから逃れるため、死んでしまいたいと思いつめるのです。

しかし、やがて幸せに満ちあふれた生活が再び訪れてきます。こうしたことが繰り返されます。

境界性パーソナリティ障害を抱える方は『反応がオーバーだ』『振舞いがぎょうぎょうしい』『人の注目を集めたいだけだ』と言われることがありますが、それは誤解です。

境界性パーソナリティ障害を抱える方と同じ視線に立って考えてみてください。

もし、あなたが境界性パーソナリティ障害であったら、どのように日々を感じ、どのように振る舞うかを考えてみてください。

境界性パーソナリティ障害の方は、自分は愛されているか不安になるので愛情を確認しようとしますが、他人の目には『依存的だ』と映ります。

境界性パーソナリティ障害の方は自分の欠点を気にかけているのですが、他人に自分の欠点を指摘されると、自分の欠点が頭から離れなくなるのです。

他人から励ましのことばをかけられたとしても、境界性パーソナリティ障害の方は、自分のダメなところを指摘されたと受け取ることがあります。

『あとで連絡するね』と言ってた友だちから連絡がこない場合、境界性パーソナリティ障害の方は見捨てられたと感じるでしょう。

自分が落ち込んでる様子を見て、他人から『何かあったの?』と尋ねられると、境界性パーソナリティ障害の方は、落ち込んでいた自分自身に羞恥心を感じてしまいます。

『否定的に考えない方がいいよ』と言われると、境界性パーソナリティ障害の方は、ますます否定的な考えに陥ることでしょう。

他人から『やまない雨はないよ。そのうち良いことがあるさ』と言われると、境界性パーソナリティ障害の方は、誰も自分を分かってくれないと感じるのです。

『最近忙しくてなかなか会えないんだ』と言われた場合、境界性パーソナリティ障害の方は、自分は厄介払いされていると感じます。

自分が慣わしとするやり方に意見されると、邪魔をされたと感じます。

境界性パーソナリティ障害を抱える方は、以上のように感じているのです。


~英語の原文~

Mind (National Association for Mental Health)

The burn of borderline personality disorder
Posted Friday 25 January 2013

Marsha Linehan, an American psychologist and author uses a great analogy to describe what Borderline Personality Disorder (BPD) is…

“People with BPD are like people with third degree burns over 90 percent of their body. Lacking emotional skin, they feel agony at the slightest touch or movement".

Try to imagine that third degree burn, over 90 percent of your body, a physical wound, one that is painful, raw and sensitive; suppose someone tries to put a lotion on that wound, a wound that cannot be touched without causing intense agony. Imagine the pain that you would have to endure just to begin the healing process.

Now imagine the same for an emotional wound.

Physical wounds heal, some may leave a scar; emotional wounds leave scars too, but sometimes emotional wounds don’t heal, they are left, open to infection, open for others to touch, open to cause the most intense pain.

Try to visualise a world which consists of only black and white; a world where grey ceases to exist. A world which has no middle ground; it’s either all or nothing, good or bad.

For some people with BPD, good days are overflowing with beauty. They become creative, inspired by life, they live in a world of complete and utter perfection. They are on a high, living in a euphoric state, the world is unblemished; their life is flawless.

And then come the bad days, they overflow with anguish and suffering. Their once perfect world has now become empty and broken. They are lonely and frightened. The inspiration they once had has disappeared and they feel like a complete failure. The good days are now so distant; they can no longer be remembered.

They over analyze words and actions. They lose control of their lives; they become self destructive, unreasonable and paranoid. They can’t focus, can’t concentrate, can’t sleep and they become irrational in their thinking and behaviour. They believe that everyone around them will leave; abandon them. They can’t ever see it getting better, they feel trapped, suffocated; they can’t breathe.

They have no self-esteem, no self-worth; they hate themselves.

They feel that they no longer have a place in the world; they no longer want a place in the world. Life is unbearable. They want to die just to stop the pain.

Then, they feel elated, euphoric, back in the perfect world and the cycle continues.

People with BPD are very often misunderstood, they are categorised as over-sensitive, dramatic and attention seeking. Everything they say or do is misconstrued.

Have you ever looked at someone with BPD and thought exactly the same?

Imagine having BPD just for a day. Imagine seeing life through the eyes of someone with this disorder…

Someone thinks you’re ‘needy’, with BPD; you just need to know you’re loved.

A person points out your flaws, with BPD, you already know your flaws, you obsess about them, all of the time.

Someone tries to encourage you by pointing out how you could improve on something, with BPD, you only hear the words, ‘you’re a failure.’

Somebody doesn’t ring you when they said they would, with BPD this means they’ve abandoned you.

Somebody asks what you could possibly have to be depressed about, with BPD, you now feel ashamed for feeling this way.

Someone tells you to stop being so negative, with BPD, this only intensifies how you feel.

People tell you that the bad days will pass; with BPD you feel that they don’t understand.

Someone tells you that they’re too busy to see you; with BPD it means that you have become a burden on them.

Someone changes your routine; with BPD they've upturned your world.

Look again at somebody with BPD, what is it you see now?


~MAKE BPD STIGMA-FREE!~

境界性パーソナリティ障害の理解の仕方、あるいは解説の仕方というものには幾つかあるようです。境界性パーソナリティ障害の方の行動化に着目した理解の仕方は、社会的スティグマ(偏見)を生む恐れがあります。一方で、社会的スティグマを解消する理解の仕方というものもあるのです。

境界性パーソナリティ障害の特徴を、様々な行動化を例示して解説するというのは、『外側』に目を向けた見方といえると思います。そこで例示される行動化の数々は、正常ではないもの、異常で病的なものとして記述されますが、こうした解説の仕方は、気を付けないと社会的偏見を生むことにつながると思います。

境界性パーソナリティ障害に関するウエブサイトで、境界性パーソナリティ障害を抱える方を中傷する書き込みを見ることがありますが、こうした行動化を奇抜に形容してしているものが多いですね。そこには、境界性パーソナリティ障害を抱える方の内面に踏み込んだ理解の仕方というものが、欠けているのではないでしょうか?

一方、境界性パーソナリティ障害の『内側』に目を向けた理解の仕方というのもあります。心の仕組みを理解する見方です。この理解の仕方は、境界性パーソナリティ障害への誤解を解く見方につながると思います。境界性パーソナリティ障害を抱える方を、普通ではない人として見るのではなく、同じ人間であり、理解できる隣人という視点を与えます。この理解の仕方は私にとって示唆に富むもので、心強い道しるべとなりました。境界性パーソナリティ障害を持つ方と共に暮らすご家族にとって参考になると思います。

MAKE BPD STIGMA-FREE! (境界性パーソナリティ障害の偏見をなくそう)』という英語のブログがあります。このブログを立ち上げている Joyceさんは44歳。長い間、境界性パーソナリティ障害、うつ病その他もろもろの病気を抱えてこられた方で、数年前、弁証法的行動療法(DBT)を受けたおかげで、現在は感情のコントロールができるようになってきたと仰っています。旦那さんと二人のお子さんがいるとのこと。境界性パーソナリティ障害を抱えながら、DBTに活路を見出している様子、ご家族と共に生きる姿を記述したJoyceさんのブログは、同じ境界性パーソナリティ障害を抱えて生きる方、そのご家族に希望を与えるものと思います。英語で書かれたブログですが、訪れてみてはいかがでしょうか?

このブログに『BPD is like having no skin』という動画が載っていました。マーシャ・リネハン博士ご自身が解説されてる動画で、ここでご紹介させていただきます。

余談ですが、弁証法的行動療法の理念と『STIGMA-FREE(偏見をなくす)』運動とは密接なつながりがあるようですね。


~境界性パーソナリティ障害と心の皮膚~




動画スタート

ナレーション
『20年以上にわたり、境界性パーソナリティ障害の研究を続けて来られたマーシャ・リネハン博士。博士はご自身の理論を展開し、この謎に満ちた病気を解き明かす』


マーシャ・リネハン博士 講演風景
『・・・境界性パーソナリティ障害と診断される方々は、感情を秩序化することができないのです』


マーシャ・リネハン博士 落ち着いた部屋の中で語る
『境界性パーソナリティ障害の方の心は、やけどを負い皮膚を失ったような状態にたとえることができます。もし、やけどを負った方に触れたらどうなるでしょうか。今、私は触られただけで飛び上がるようなことになりません。しかし、もしやけどを負っていたとしたら、軽く触られただけで痛みを感じ飛び上がるでしょう。境界性パーソナリティ障害の方の心の状態を、このように喩えることができます。つまり、境界性パーソナリティ障害の方の行動化の原因は、まさしく心を保護する皮膚がないということによるのです』


男性 (訳注 専門家としてではなく、奥様が境界性パーソナリティ障害を持つ、伴侶としてのコメントだと思われます)
『境界性パーソナリティ障害の方は、非常に敏感な感受性を持っていて、0から100%へ一気に数値が跳ね上がるように、それまで穏やかだった感情が、全く一瞬にして激しい感情へと変化します。何の前ぶれもなく、突然嵐に襲われるようなものです』


ナレーション
『敏感な感受性を刺激されるということが、さまざまな行動化の原因となります。これが境界性パーソナリティ障害を抱える方が感じていることです。』


動画最後に表示される字幕の翻訳は省略させていただきます。

動画終了


~神は人を見下さない~

神は全能の力を持つ。しかし、決して人を見下すことはなさらない。どこまでも人を理解される方である。
ヨブ記36章5節 New Revised Standard Versionを私訳


Surely God is mighty and does not despise any; he is mighty in strength of understanding.
Job 36:5 New Revised Standard Version




コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。