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(36)心理学-4 赤ちゃんの脳と危険な育児 サイレントベビー

2011年01月19日 | 心理学
この記事は、赤ちゃんが母語を獲得するしくみ、幼児に与える英語教材の問題、サイレントベビー(silent baby)、トラウマの形成について記述します。

英会話教室の広告を見ると『小さいうちから英語のシャワーを浴びましょう』『幼い時に英語耳を作りましょう』といったものがあります。生後間もなく英語のビデオや音声教材を与える親御さんがいると思いますが、その学習効果はないどころか、かえって子どもの成長に悪影響を与えるおそれがあります。


~赤ちゃんは語学の天才~

幼児の脳の発達と母語の獲得について、良くまとめられている動画があるので紹介させていただきます。英語を早くから教えようと、英語の声が出るおもちゃや、ビデオを見せる家庭があると思いますが、全く意味がないのです。

パトリシア・クール 「赤ちゃんは語学の天才」2011 10分 日本語字幕付き


動画概要

ことば(母語)の習得

ことばを世代から世代へと受け継いでゆくために必要なこと、それは人が赤ん坊に話しかけることです。幼児の脳は、世界全言語の音を聞き分ける力があるのですが、成長した大人にはできないことです。幼児が持つ全言語対応の言語能力が、母国語のみの能力に切り替わるのは、幼児が1歳を迎える前です。母語の習得には臨界期があり、7歳以降は大きく母語習得力を低下させてゆきます。

第二言語の習得

アメリカの幼児に、台湾語を聞かせる実験をおこないました。台湾人に教師役をお願いし、絵本を使い赤ん坊に語りかけてもらいました。幼児の脳は台湾語に反応するようになり、第二言語習得の準備を始めました。他方、テレビ、DVDなど機械を使った教育法では幼児の脳は全く反応しなかったのです。幼児の脳は大人のことばを聞き、統計データを集計するようにことばを分類しながら蓄積しますが、機械による学習では、ことばに対する学習反応が起こらないのです。母語の獲得は、人間関係の中で始まるということが分かります。

まとめ

幼児がことばを獲得する仕組みを知ることは、人の社会性、感情、認知の発達を知る手掛かりになります。子どもの脳を研究することで、人間の本質を見つけることができるでしょう。


幼児に英語の声が出るおもちゃや、ビデオを与えても、学習効果はないのです。


~母語と第二言語の違い~

日本人の子どもであれば、誰でも自然に日本語(母語)を覚えます。教師は要らず、単語帳や辞書も使うこともなく。ところが、中学、高校の6年間必死に英語を勉強しても、アメリカの6歳の子どもと対等にコミュニケーションする力はつきません。母語の獲得は難なくできるのに対し、第二言語の習得はどうして困難になるのでしょうか?

実に不思議なことですが、赤ん坊は世界のあらゆる言語を習得することができます。このことについてアメリカの言語学者チョムスキー(Noam Chomsky, 1928~)は、二つの理論を提起します。一つは『全ての言語の根底には、共通する言語規則(universal grammar)が存在する。そしてその共通言語規則を、先天的に赤ん坊は知っている』ということです。もう一つは『どの赤ん坊も母語を正確に築くことができる高度な言語構築力(generative grammar)を備えている』ということです。

世界にある言語の数は4,500~7,000種類であろうといわれています。世界中の言語の辞書、文法書を集めたとしたら、市立図書館一つでは収納しきれないのではないでしょうか?幼児が持つ潜在的言語能力がとてつもなく大きいことが分かると思います。

日本にはお地蔵さんがいたる所にあります。お寺、田んぼ、道路、都会の中にもあります。お地蔵さんは石で造られていますが『この地蔵は、自然の岩に雨風が当たり、削られたり割れたりしながらいつの間にか地蔵の形になったんだ』と思うでしょうか?お地蔵さんは自然にできたと考えるのと、誰かが作ったと考えるのと、どちらが理性的な判断でしょう。お地蔵さんの顔や姿は、たくさんの曲面とたくさんの比例関係が組み合わせて作られているので、こうした複雑な情報を理解している誰かが作ったに違いないと、考えるのが理性的な判断です。誰が作ったかは知らなくても、誰かが作ったということは分かります。

全てのことばの根底には共通する言語規則があるということ、赤ん坊が全ての言語を習得できるということを見たとき、このように複雑な仕組みが自然や偶然からできたものだとは考えられません。石でできたお地蔵さんよりも、言語の仕組みや脳の仕組みの方がはるかに複雑で高度な技術が必要です。ですから、言語の法則を知り、人の脳の仕組みを知ってるお方がいて、このお方が、赤ん坊が言語を習得できるよう設計されたと理解するのは理性的な判断です。

チョムスキーの理論は進化論的言語獲得説と矛盾するのです。そのため、窮地に立たされた進化論者から批判を受けたのですが、今日の脳神経学や発達心理学の研究は、チョムスキーの理論を肯定する結果を出しているようです。いずれにしろ母語を確実に獲得できるよう、幼児の脳には高度なデザインが施されています。

進化論では、サルが進化してヒトになった、サルが進化してことばを話すようになったといいますが、動物園のサルがヒトの子どもを生むことがなければ、人間のことばを話せるようになったサルもいませんよね。このことについて、進化論はいまだかつて科学的に実証したことはありません。むしろ、虚心たんかい、素直な心で身の回りで起こるできごとを見るならば、知恵と愛を持つ神の存在を認めることができるはずです。

子どもは母語を使うことで、自己認識、他者理解、社会性、倫理観、知識、意思や感情の整理と表現・・・など、これらのものを身に付けます。小学校に入って学ぶ、国語、算数、理科、社会どの教科も、日本語(母語)を使って学習しており、母語は、人間の基礎を作る大きな役割を担っています。

母語には極めて重要な働きがあり、母語獲得のため幼児の脳は特別な能力が付与されています。母語が果たす役割と第二言語が果たす役割には大きな違いがあり、これらを同列に語ることはできないのです。

英会話教室の広告で『第二言語習得の臨界期前に、早いうちに英語を学びましょう』といフレーズを見ることがありますが、第二言語習得に臨界期があるという研究報告を聞いたことがありません。生徒を獲得するために作られたいい加減な宣伝文句です。


~テレビの子守とサイレントベビー~

先の動画では、幼児に機械で英語を教えても学習効果がないことが分かりました。次の動画はサイレントベビーに関する動画です。朝からテレビをつけっぱなしにする家庭は少なくないと思いますが、こうした環境で、更に英語のDVDや英語の音声が出るおもちゃを与えると、ことばを話せない子ども(サイレントベビー)になる危険があります。動画では、そうした事例が取り上げられています。

2歳を過ぎてもことばが全く出ない。顔や行動に人間的感情が見られない。人と接することを恐れている。このような子どもを見かけるようになりました。テレビ、DVD、スマホなどを使った育児環境が、サイレントベビーを作ると警告する医師がいます。

・一日中テレビをつけている家庭は5軒に1軒。
・つけっ放しにしている家庭のうち、10人に1人の割合でサイレントベビーができる。
・1歳までに見つけると100%治るが、2歳になると難しい。
・重症の場合には生涯言葉がでないこともある。
小栗小児科医院『第16回 日本外来小児科学会に参加して』より引用


テレビの子守は危ない!自閉症と診断された言葉遅れの子どもたち 26分


動画概要

小児科医、片岡直樹氏は、テレビ、スマホ、英語教材といった電子メディアの普及が子どもの発達を阻害していると指摘します。これは、新しいタイプのことば遅れを作る原因になっています。

1歳未満の赤ん坊が持つ認知機能は未発達なので、大人とは異なる認識をします。大人は立体的な現実の世界を知っているので、過去の体験とテレビの点滅画像とを照らし合わせることでテレビの画像を理解することができます。しかし、大人のような認知体験がない幼児は、テレビの画像は意味のない光の点滅でしかないのです。

朝からテレビ、ビデオ、CD、電子おもちゃの音に囲まれた生活をすると、ことばの遅れや、ことばを全く話さない子どもができてしまいます。テレビなどの電子音や電子画像を取り除くことで、子どもは回復することができます。子どもを育て直すということになります。

こうした症状の子どもは、専門医に『先天的な原因による自閉症です。治りません』と診断されることがあるのですが、これは先天的な疾患ではなく、生活環境によって作られた病気です。

子どもは親や大人の真似をすることで学習してゆきます。子どもが発するサインに親が答える、これを繰り返すことで親子関係が作られるのです。



00:27~00:40の場面をご覧ください。英語の音声が出るおもちゃを与えられたお子さんですが、『ガ。ギャ』とおもちゃに合わせて声を出すシーンがあります。このシーンをご覧になって、英語教育の効果があると思われるでしょうか?英語の意味も分からず『ガ。ギャ』と叫んでいるようにしか見えません。こうしたおもちゃに教育効果があるようには思えないのです。むしろ子どもにとって、弊害の方が大きいのではないでしょうか?

心理学-1~3の記事で、ローレンツやハローの動物実験、ボウルビーのアタッチメント理論を見てきました。動物も人間も生まれた後、自分の親(養育者)との関わりが重要な意味を持ち、それには臨界期があるということです。本来赤ん坊が人間の親と密接な関わりを持つべき時期に、テレビ、DVD、電子おもちゃなどとほとんどの時間を過ごすとしたら、子どものアタッチメント本能は、こうした機械に対して向けられてしまいます。サイレントベビーがロボットのように無言で無表情、人へ不信感を持つというのは、子どもの本性が機械にアタッチメントし、人間性が育たなかったのが原因ではないでしょうか?片岡医師が語る『育て直し』とは、機械と幼児とで結びついたアタッチメントを、人間の親にアタッチメントを移行させることで、この作業を育て直しと言っているように思います。


~敏感な感受性とトラウマの形成~

次の実験は、アタッチメントに関する研究の一環としておこなわれたものです。親が、うつ病、薬物中毒などの問題を抱えていると、育児に消極的で無表情無反応になります。こうした親の行動が幼児に与える悪影響を調べたものです。


無表情実験(Still Face Experiment)

Still Face Experiment: Dr. Edward Tronick


動画概要

幼児は、親の気持ち、しぐさ、その他の人との人間関係において、驚くほど敏感な感受性を持つことが分かっています。

今から30~40年前、幼児に社会性があるとは考えられていませんでした。この実験は、母親に無表情、無反応を装ってもらい、幼児がどのような反応をするか調べたものです。無表情になった母親に、幼児は敏感に反応しています。実験に協力してもらった幼児の年齢は1歳前後になります。

始めに、母親は普段どおり子どもと接します。子どもの声、指さしといった子どものサインに、母親は応答します。子どもは笑顔で笑い声をあげ、幸せに満たされている様子です。

そのあと母親に無表情無反応を装ってもらいます。子どもはすぐに母親の変化に気付き、けげんな顔をします。母親の応答を引き出そうと、できる限りの努力をおこないます。声を出し、微笑み、手を差し出し、指差しをし、拍手といった行動をおこないます。どうして母親の応答がなくなったのか理解できず、子どもは、不安、怒りでいっぱいになり、ストレスを高め混乱します。大きな奇声を上げ、体をのけぞらせ、泣いてしまいました。

普段どおりの母親に戻り反応を表すようになると、子どものストレスは消え笑顔を取り戻し行動は正常になりました。

たった2分間の実験ですが、子どもはとても大きなストレスを抱えたことが分かります。対人関係において、1歳前後の幼児は大人よりも敏感な感受性を持つことが分かります。

対人関係を、良い状況、困った状況、最悪の状況の3つに区分することができます。

・良い状況(good)とは、親と子の間で応答ができている普段の状況です。
・困った状況(bad)とは、親からの反応がなくなったとしても、それが一時的なもので、良い状況に回復可能な状態をいいます。
・最悪の状況(ugly)とは、親からの反応がなく、いつまでも良い状況に回復されることがない状態です。

養育者が、うつや不安定な感情、攻撃性、衝動性といった心理的問題を抱えていると、子どもにも同じ問題が表れてくると報告されています。





以前、ファストフードで食事をした時のことです。私の席近くに、お母さんと5歳くらいの男の子がいました。母親は携帯をながめ、男の子は学習ドリルに取り組んでいました。私がおやっと思ったのは、手を汚したわけでもないのに、男の子がほぼ5分おきに席を立ち何度も何度も手を洗いに行くことでした。その手は真っ赤になっています。勉強が好きでやってるのではなく、嫌々やらされているように見えました。その子のストレスが、頻繁な手洗い行動に表れていたのかもしれません。母親は子どもを気遣う様子がまったくなく、無表情のまま携帯から目を離すことはありません。この親子は一度もことばを交わすことがありませんでした。このように育てられるなら、教科書の知識はあるけれど、人間関係や社会生活に適応できない。そうした問題を抱える青年になるのではないでしょうか?

外で食事をすると、食事中、親子の会話がないとか、夫婦の会話がまったくない家族を見かけます。無言無表情の食事です。また、ショッピングセンターに行くと広い売り場で、迷子になる子どもを見ることがあります。『お母さんどこお?』と泣き叫ぶ声を聞いてるにも関わらず、自分の子どもを探そうとしない親。子どもが親を見つけ親元に駆けよっても、慰めることなく子どもを無視し何事もなかったかのように、無言無表情で買い物を続ける親を見かけます。こうした光景を見るたび心が痛み、ショックを感じます。無言無表情な家族が増えています。

家族の食事が無言、無表情だったとしても、それが子どもへの虐待だと通報する人はいないでしょう。泣きながら迷子になっていた子どもに、親が無言無表情だったとしても、それが法律上、虐待ではないかもしれませんが、こうした不適切な対応は子どもの心の成長に悪影響を与えます。

リネハン博士の『不認証説』、精神科医の上村順子氏の『マイルドな虐待説』は、敏感な感受性を持つ幼児期、親が子どもに不認証や否定的応答を続けることは、子どもの心を深く傷つけること(トラウマ)になると警告しています。境界性パーソナリティ障害、複雑性PTSD、サイレントベビーといった問題は、悪い家庭だけで起こる問題ではないのです。ごく普通の家庭で起こりうる問題だということを、理解していただきたいと思います。

無表情実験は、幼児が親子関係において鋭敏な感受性を持っていることを示しています。


~聖書に見る教育観~

今から3,300年前、神さまはシナイ山でモーセに、石の板に刻んだ十戒をお与えになりました。この時イスラエル民族に与えられたのは10の戒律だけではなく、合計613もの戒律になります。十戒は、613ある戒律の代表的戒律になります。日々の生活で律法を重んじ遵守することは、イスラエル民族のアイデンティティとして現代まで引き継がれてきました。

律法(ヘブライ語でトーラー Torah。創世記、出エジプト記、レビ記、民数記、申命記の5書のこと)には民族の歴史や社会生活全般のルールが書かれており、礼拝に関すること、奴隷制度、殺人や傷害、窃盗、私財の管理責任、食事、職業、結婚、離婚、疾病、外国人への保護、男女の性的関係、違反者への罰則などが並べられています。ユダヤ人の子どもは5歳ころから律法を学び始めますが、成人社会で起こる具体的な問題事例をとおし善悪を学ぶことは、子どもの行動に、しっかりとした枠組みを与えることになるでしょう。

日本では、婚前性行為、危険薬物、売春といった問題が、子どもたちにも広がっています。その原因の一つは、子どもたちが枠組みを持っていないからで、大人が子どもに枠組みを与えていないからではないでしょうか?少年が関わる事件を見るたび『人を殺して何がいけないの?』との声なき声が聞こえてくるような気がします。

人を創ったのは神さまで、人に命を与え、命を取り去ることは神さまだけが持つ主権だというのが聖書の生命観です。『人を殺して何がいけないの?』という問いへの答えは、これ以外にないと思います。神をおそれ敬うことが、人が正しく生きる枠組みになります。

ユダヤ人の子どもは13歳までに、トーラーを丸暗記することが求められます。13歳になると、バル・ミツバ(Bar Mitzvah)と呼ばれる成人式が行われ、この時初めて会衆の面前で聖書朗読をする栄誉が与えられます。家族、親戚、友人たちが集まり、さながら結婚式のように盛大なお祝いが催されます。

バル・ミツバ

Resumo Bar Mitzvah Vinicius



旧約聖書の戒律というと『目には目を歯には歯を』という復讐法だと誤解されることがありますが、そうではありません。律法の中に次のような戒めがあります。

出エジプト記 23章4~5節 新共同訳
『あなたの敵の牛あるいはろばが迷っているのに出会ったならば、必ず彼のもとに連れ戻さなければならない。もし、あなたを憎む者のろばが荷物の下に倒れ伏しているのを見た場合、それを見捨てておいてはならない。必ず彼と共に助け起こさねばならない』

たとえ敵対関係にある相手であっても、相手が困っている時は援助を与えなさいということです。実行することの難しい戒めですが、同時に人間的暖かさを感じます。

『子は親の言う通りは育たない、親がやる通りに育つ』と言われますが、親には日々の生活で律法を守り手本を示す義務、そして律法を教える義務がありました。聖書には、有言実行型の教育観があるようです。




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