Sさんは40代女性。専業主婦。
夫婦に子どもは無く、毎日家でご主人の帰りを
待っているだけの生活に疲れたと言います。
ご主人を待っているとき、どう過ごしているのかと
聞いてみたら、お酒を飲んでいると返答。
元々はお酒が飲めなかったのに、冷蔵庫にあった
缶のカクテルを飲んでみたら甘く美味しくて、
最初はグラスに半分、次第にグラス1杯・・と酒量が
増えていき、今では毎晩いろいろなお酒を一人で
飲んでいるとのこと。
一度ご主人に
「きみはアル中か!?酒を辞めなければ離婚だ」と
叱られ、心機一転、自分を変えようとコンビニのバイトを
始めたそうです。
ところがバイトで気分が変わるどころか、
それはそれでストレスを招き、お酒でうっぷんを晴らす日々。
遂にはバイト代は全て酒代に化け、
酒代を稼ぐためにバイトに通うように。
Sさん、
「私、アル中なんです。この性格、催眠療法で変えられませんか?」
と必死のまなざし。
確かに催眠療法は禁酒に効果を上げる方法の
1つです(でももっといい方法があります!)。
けれどSさんの場合、お酒をやめることが本来の
悩みでなく、
「飲まずにいられない状態こそが問題」とカウンセラーは
考えました。
Sさんもそれを聞いて納得し、一緒に問題に
取り組むことに合意してくださいました。
カウンセラーは言います。
「そもそもSさんの状態は”アル中”ではありません。
ご自分に”アル中”のレッテルを貼ることはやめましょう。」
そう言って、言葉が自分を縛ることについて
説明しました。
また「お酒を飲むことは”性格”でなく、”習慣”です。
”性格”を改めることは難しいと思うのですが、
”習慣”を変えると思ったらいかがですか?」と提案。
するとSさん。
「確かに性格を変えるのは大変ですが、習慣なら
変えられそうです。
以前、太り過ぎの時にお菓子を控えたら、2カ月で
5kg痩せられたことがありました」
お菓子を控え、たった2カ月で5kg痩せたなんてすごい!
この成功体験はSさんにとって立派なリソース(資源)です。
かくしてカウンセラーはこのリソースを利用して酒量を調整
しながら、最後は”飲みたい時だけに飲む”という
状態に改善されるまでお手伝いすることができました。
治療が終結してSさんの言葉。
「お酒を1滴も飲んじゃいけないと思えば出来なかったかも
しれないけど、いつでも飲んでいい。ただし飲む時には
美味しさを味わって罪悪感無しに楽しんで・・と言われて
気が楽になった。
バイトはやめて、自分に出来ることからやっていこうと
思います」
Sさんはアルコールの問題と平行して、自分のストレスの原因を
見つめ直すことにも取り組み、ご主人との二人の生活を
楽しみたいと思うようになりました。
そしてすれ違いの生活を送っていたご主人と
幾度にもわたって積極的な話し合いの機会を持ちました。
ご主人はSさんの悩みを受け止めると同時に
仕事漬けの生活を反省し、急ぎでない仕事は翌日に回し、
帰宅時間を早めてくれるようになったそうです。
お酒の習慣は”ご主人との会話”の習慣に変わって
Happy End!
パートナーを大切にするという新たな目的を見出したSさん夫妻。
カウンセラーもあやかりたい気持ちで後ろ姿を見送りました。
2010/4/7記