<1>5月15日/ディグニティ・ヘルス・スポーツパーク,カリフォルニア州カーソン/S・バンタム級契約10回戦
前WBA・IBF統一王者 ダニエル・ローマン(米) VS IBF14位 リカルド・エスピノサ(メキシコ)
昨年1月30日、フロリダでアフマダリエフに1-2の惜しい判定を失い、WBAとIBFの統一王座を失ったローマンが、昨年9月26日のファン・C・パジャーノ戦に次ぐ再起第2戦。
メインとして組まれたフィゲロア VS ネリー戦の勝者にアタックするのか、それとも岩佐のようにウズベキスタンまで遠征してでも、アフマダリエフに直接リベンジを挑むのか。
122ポンド戦線を大きく左右する実力者ローマンにとって、明確な力の差を見せて勝ち切りたい試合ではある。
対戦相手に抜擢されたエスピノサは、S・フライ~バンタムを主戦場にしてきた右のボクサーファイターで、2019年4月にカシメロが保持するWBOバンタム級王座に挑み、11ラウンドまで3人のジャッジが1~2ポイント差を付ける善戦で名前を売った23歳の新鋭。
カシメロ相手に堂々と真正面から打ち合いを選択。最終12ラウンドに右のカウンターをまともに食らって倒され、最後の最後で精度と経験の差が出てストップされはしたものの、結果的にキャリアを前進させることに成功した。
2019年12月の再起戦をフェザー級で戦い初回KO勝ちした後、パンデミックでブランクを作りはしたが、昨年8月にフロリダ州キシミーで13連勝中(7KO)のブランドン・バルデス(コロンビア)に10回判定勝ち。122ポンドのWBOユース王座を獲得したばかり。
武漢ウィルスの感染拡大が容易に収まらず、またもや9ヶ月の間隔が開いたけれど、「チャンスに備えてハードワークを続けていたから、ウェイトとコンディションに問題はない。」と明るい表情で断言。
カシメロ戦の評価だろうが、スポーツブックのオッズはメインに負けず劣らず接近している。
□主要ブックメイカーのオッズ
<1>Bovada
ローマン:-335(約1.30倍)
エスピノサ:+255(3.65倍)
<2>5dimes
ローマン:-280(約1.38倍)
エスピノサ:+240(3.4倍)
<3>betway
ローマン:-333(約1.30倍)
エスピノサ:+240(3.4倍)
<4>ウィリアム・ヒル
ローマン:2/9(約1.22倍)
エスピノサ:7/2(4.5倍)
ドロー:20/1(21倍)
<5>Sky Sports
ローマン:1/5(1.2倍)
エスピノサ:7/2(4.5倍)
ドロー:20/1(21倍)
※アフマダリエフ戦後もローマン(左)とエディ・ゴンザレス(右/チーフトレーナー)の関係に変わりなし
※引き締まった良い表情でトレーニングに励むローマン
2人ともクリーンな正攻法を身上にしており、とりわけ長期戦を前提にした組み立てをベースにする為、誰とやってもラウンドが長引き、勝ち味が遅くなる傾向が顕著なローマンの特徴が、多少なりとも影響はしているのかも。
カシメロに対する望外の大善戦(?)は、計量後のリバウンドを含む体格差が大きくモノを言ったことも確かなエスピノサだけに、WBOのユース王座を懸けた前戦でも、ナチュラルな122パウンダーのバルデスを前にして、身体負けや力負けはしていなかった。
ディフェンシブなバルデスのクリンチ&ホールディングに手を焼き、倒すことはできなかったが、終始一貫攻め続けてワンサイドの判定をもぎ取っている。
丸腰の無冠になったとは言え、未だにアフマダリエフと並び称されるべき存在であり、122ポンドを牽引し続けるローマン。攻防のテクニックと精度,経験値を含めた駆け引きのいずれにおいても、明白な優位は動かない。
唯一最大の不安要素は、パジャーノ戦で垣間見えた歴戦の影響(勤続疲労)と、パンデミックによるブランクということになるが、長いレイオフが幸いして、アフマダリエフ戦の疲れが取れていれば、さらなる活躍にはっきりとした目処が立つ。
老け込むトシではけっしてないけれど、エスピノサの若さと勢いは侮れない。変わらぬ心身のタフネスと、堅調なリング・ジェネラルシップを発揮して、格の違いを見せ付けて欲しいと切に願う。
※サイズはほとんど同じ
◎ローマン(31歳)/前日計量:122ポンド
前WBA・IBF統一S・バンタム級王者(V4)
戦績:32戦28勝(10KO)3敗1分け
アマ通算:60勝11敗
身長:165.7センチ
リーチ:171.5センチ
※松本亮戦の予備検診データ
右ボクサーファイター
◎エスピノサ(23歳)/前日計量:121ポンド1/2
戦績:28戦25勝(21KO)3敗
身長:170センチ
右ボクサーファイター
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■132ポンド契約10回戦
WBA S・フェザー級2位 エグゼヴィエ・マルティネス(米) VS ファン・カルロス・ブルゴス(メキシコ)
カリフォルニア州サクラメントをホームタウンに戦うマルティネスは、メイウェザー・プロモーションズが期待を寄せる軽中量級ホープの1人。
少年時代はサッカーに夢中になっていたというが、学校や家の近所でのいさかいが耐えず、サイズの不足も心配した父の薦めで7歳からボクシングを始めて、その見立て通りアマチュア(ジュニアとユース限定)で活躍。
スタートでいきなり2連敗したとのことで、「特に2戦目の負け方は酷かった。一方的に打たれて、まともに反撃することもできなかった。」と率直に認める。だが、マルティネスはけっしてめげることなく、自らを信じて戦い続けた。
「何もできずに負けたのが悔しくてね。死に物狂いで練習した。たぶん、15~20連勝ぐらいしたんじゃないかな。レコードが安定して、ジュニアのゴールデン・グローブスにも出場できた。」
「ユースの全米選手権でも上位に入ることができて、将来が見え始めた時にルールが変わってしまったんだ。」
当然オリンピックを目指していたが、男子シニアのヘッドギアの廃止を打ち出したAIBAの決定により、リオ大会に向けてシニアの年齢制限が引き上げられ、米国予選への出場資格を満たすことができなくなり、2015年6月に4回戦でプロ・デビュー。
小さなローカル・ファイトで地道にキャリアを開始すると、2016年6月に知人を介してフロイド・メイウェザーとの面会が叶い、フロリダでのキャンプに招待されて1週間を過ごす。
「素晴らしい体験だった。あの1週間ですべてが変わった。メイウェザー・プロモーションズの一員として迎えらることになった。」
ベテラン・トレーナー,レイ・ウッズ(バイク事故で亡くなったディエゴ・コラレスの継父)の指導を受け、自ら距離を詰めて打ち崩しに行く、好戦的なスタイルを作り上げた。
※写真左:レイ・ウッズとのミットワーク
写真右:かつてサポートしていたブランドン・ゴンザレス(一時は大成を期待された168パウンダー/2014年に引退)とレイ・ウッズ
タイトル暦こそまだないが、パンデミックによるおよそ1年の中断の後、昨年10月の復帰戦では、フェザー級でWBAの暫定王座に就いたクラウディオ・マレロ(ドミニカ)と対戦。
第8ラウンドに2度のダウンを奪われてしまい、それまでに稼いだ貯金を吐き出して僅小差に追い込まれたものの、10ラウンズをしのいで3-0のユナニマウス・ディシジョンを得ている。
「マレロに勝ったら、クリス・コルバートと戦いたい。」
※コルバート戦への意欲を語るマルティネス
WBAにはスーパー王者のジャーボンティ・ディヴィスと、正規王者ロッキー・グチェレスの2人が並立しているが、ネクスト・オポーネントとして3人目の王者(暫定)コルバート(24歳/15連勝6KO/アマ:103勝3敗)の名前を挙げた。
どうやら2人はアマチュア時代に対戦経験があり、マルティネスが負けているらしい。コルバートはブルックリン出身の黒人ボクサーで、昨年1月、あのジェスレル・コラレスを大差の3-0判定に下してWBAの暫定王座を獲得。
武漢ウィルスの影響でブランクに入ったが、暮れの12月に無事復帰。パナマのハイメ・アルボレーダを11回TKOで退け、暫定王座の初防衛に成功しており、7月3日にはユリオルキス・ガンボアとのV2戦が内定(開催地未定)している。
マレロ戦の出来を見た陣営は、コルバートやグチェレスへの挑戦は一旦見送り。7ヶ月ぶりとなる実戦のリングは、日本のファンにもお馴染みのファン・C・ブルゴスとの対戦となった。
長谷川穂積と激しい打撃戦を繰り広げたのは、もう10年も前の出来事になる。
名古屋のガイシ・ホールでWBCのフェザー級を取り損ねた後、130ポンドに階級を上げて5連勝(2KO)。2013年1月には、プエルトリコの激闘王ロッキー・マルティネスに挑戦して三者三様のスプリット・ドローに泣く。
GGG VS ガブリエル・ロサド,マイキー・ガルシア VS オルランド・サリドのセミ格で、プエルトリカンにとってはホームと言っていい、ニューヨーク(MSGシアター)での開催も影響した。カリフォルニアでの開催なら、ブルゴスがWBOのベルトを巻いていた確率が高い。
半年後の再起戦で、2連敗中のガーナ人を相手にまたもや引き分けとなり、翌2014年1月、プエルトリコ版ロッキーを8回で粉砕したマイキーに挑戦するも、スピードの差を克服することができず、ワンサイドの0-3判定負け。
この後3年近くリングから遠ざかり、引退したものとばかり思われていたが、2016年の暮れにカムバック。2017年にも2試合を消化して3連勝(1KO)をマークしたが、2018年9月のデヴィン・ヘイニー戦で大差の判定負け。
またもや長いブランクを作り、昨年1月に組まれた復帰戦でも、18連勝(5KO)中のヘクター・タナジャラ(24歳/テキサス生まれのプロスペクト)に0-3判定負け。ジャッジ3名中2名が92-97、残る1名が90-99を付ける完敗だった。
2ヵ月後の昨年3月、メキシコ国内で無名選手との8回戦で勝利を収めており、一応連敗は2でストップ。「プロスペクトの踏み台」路線に入りつつある状況ではあるが、長いキャリアで築き上げた技術とフィジカルに錆付きは見られない。
ヘイニーとタナジャラに対して、ポイントほど力量の違いを見せ付けられた訳でもないけれど、何しろ小回りが利いて回転の速いスピードスタータイプや、打っては離れを繰り返す出はいり型との相性が悪過ぎる。
体重を乗せた1発よりも、軽いコンビネーションによる見栄えのいいタッチに重きを置く今日のスコアリングにおいて、ブルゴスのような”打ち合い上等”の大柄なパンチャーが、上述したタイプに判定で勝機を見い出すのは極めて難しい。
変節したプロボクシングのスコアリングの現実が、賭け率にも見事なまでに表れている。
□主要ブックメイカーのオッズ
<1>Bovada
マルティネス:-1400(約1.07倍)
ブルゴス:+750(8.5倍)
<2>5dimes
マルティネス:-1900(約1.05倍)
ブルゴス:+1200(13倍)
<3>SportBet
マルティネス:-1795(約1.06倍)
ブルゴス:+1305(14.05倍)
<4>ウィリアム・ヒル
マルティネス:1/14(約1.07倍)
ブルゴス:13/2(7.5倍)
ドロー:22/1(23倍)
<5>Sky Sports
マルティネス:1/12(約1.08倍)
ブルゴス:6/1(7倍)
ドロー:25/1(26倍)
そうした意味では、パンチに自信があり打ち合いから逃げないマルティネスは、ブルゴスにとって”手が合う”相手には違いがなく、ディフェンスも鉄壁の水準にはないだけに、落日のブルゴス(失礼)が一矢報いる場面もあり・・・か?。
◎マルティネス(23歳)/前日計量:131ポンド1/2
戦績:16戦全勝(11KO)
アマ戦績:85勝10敗
2014年ユース全米選手権3位
2013年ユース全米選手権4位
※階級
身長:173センチ,リーチ:178センチ
右ボクサーファイター
◎ブルゴス(33歳)/前日計量:131ポンド3/4
元WBC
戦績:40戦34勝(21KO)4敗2分けNC
身長:177センチ,リーチ:174センチ
右ボクサーファイター
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ホセ・ベナビデス・Sr.の指導を受けるシアトルのメキシコ系ライト級,ホセ・バレンズエラ(21歳/7連勝4KO/11歳からアマでキャリアを積む)が8回戦に登場する他、カリフォルニア州サリナス出身で、4連勝中(2KO)のジャスティン・カルドナ(21歳/アマ100戦超)も、まだ4回戦の修行中ながら、将来を嘱望される若き135パウンダー。
”ギャビー”の愛称で呼ばれる女子のアマチュア・ホープ,ガブリエラ・ファンドゥーラが、4回戦でプロ・デビュー戦を迎える。
フロリダ州パームビーチの出身で、ジュニアの全国トーナメントで4回の優勝経験を持つガブリエラは、やはりアマチュアの選手だった父のフレディから手解きを受けた親子鷹。
「ファンドゥーラ」という名前からピンときた方は、勘とお察しがいい。身長2メートルのS・ウェルター級として話題になっている、”タワーリング・インフェルノ”ことセバスティアンの実の妹になる。
※ガブリエラ・ファンドゥーラ(公称175センチの長身)
現在はカリフォルニア州コーチェラに居住しており、2017年の女子ユース世界選手権(グワーハーティー/インド)でウェルター級の金メダルを獲得したシトラリ・オルティズとともに、コーチェラ・バレー・ボクシング・クラブ(練習拠点にしているジム)の希望の星と呼ばれている。
※ガブリエラ(左)とシトラリ・オルティズ(右)
女子の実施階級が従来の3階級から5階級に増えた東京五輪で、ガブリエラが主戦場にするバンタム級は残念ながら除外されてしまい、フェザー級に上げて出場を模索する計画もあったというが、パンデミックの影響を受けてプロ転向を決断。
シトラリのウェルター級(アマの上限:69キロ/152ポンド)は、東京五輪の実施階級に含まれてはいるが、武漢ウィルス禍への不安から、ガブリエラより一足早く、ルーツのメキシコ国内で今年3月にデビューを済ませており、4月にも1試合をこなして現在2連勝。今回の興行には参加しないが、S・ウェルターとミドル級でプロの世界王座獲得を目指す。