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ワクチン開発 遺伝研に"鍵" 50年前 特殊構造解明

2021年05月22日 07時15分40秒 | 医薬
ワクチン開発 遺伝研に"鍵"

三島から世界救う発見
新型コロナ
 世界中で接種が進む新型コロナウイルスワクチンの開発は、約50年前の国立遺伝学研究所(三島市)による「発見」が不可欠な役割を果たした。ワクチンに使われる「メッセンジャー(m)RNA」の特殊構造を世界で初めて解明し、半世紀を経てコロナの抗体を体内で安定的に作る仕組みへとつながる。「キャツプ」と呼ばれるその構造とは一。

 新型コロナのmRNAワクチンは、細胞の受容体に結合するコロナウイルスの突起物(スパイクタンパク質)に着目して開発された。突起物の情報を持つ人工のmRNAを脂質の膜に包んで細胞に投与し、体内で生成された突起物を異物と認識させて免疫を獲得する。これにより、本物のコロナウイルスが体内に取り込まれても抗体が突起物を攻撃するため、細胞への侵入を食い止めて感染を防ぐことができる。
 ただ、人工的に合成されたmRNAは細胞内ですぐに分解されてしまい、突起物を作るのは不可能。ワクチン開発には、細胞内でも分解されずに安定性を保つ必要がある。その"鍵"を発見したのが1974年、遺伝研の研究員たちだった。
 真核生物に共通する天然由来のmRNAの端に、「メチル基」という物質がくっついている構造を解明した。英語の帽子を意味する「キャップ」と名付けられたこの特殊な性質により、細胞内でも安定してタンパク質を生成する仕組みを突き止めた。キャップを作り出すことが、mRNAワクチン開発の道を開くことにつながった。
 一方でキャップを人工的に大量生産ずるのは難しく、遺伝研の花岡文雄所長(75)は「キャップの作り方は企業秘密だろう」という。mRNAのキャップ構造の発見は創立70年を超える遺伝研の歴史でも「一、二を争う大きな成果」とし、世界で命を救うワクチンについて「三島での発見が重要な役割を果たしていることを誇りに思う」と話す。
(三島支局・金野真仁)

※ワクチン 病原性を弱めたウイルレや細菌などを体に投与し、感染症への免疫をあらかじめ獲得させる予防医薬品。mRNAワクチンはDNAの情報を伝えるmRNA(リボ核酸)を人工合成し、ウイルスの突起物のみを体内で生成して抗体を作る。感染リスクがなく、開発コストや時間が大幅に少ない一方、不安定性が課題。
【静新令和3年(2021年)5月21日(金)夕刊】