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臨床検査大手と新会社設立 静岡がんセンター

2018年10月13日 11時30分00秒 | 医薬

臨床検査大手と新会社設立 静岡がんセンター

 日本人のがんゲノム(全遺伝情報)の臨床データベース構築を進めている県立静岡がんセンター(長泉町、山口建総長)は、臨床検査事業大手のエスアールエル(SRL、東京)と新会社を設立した。臨床と検査・解析や研究開発を一体化し、がん細胞の遺伝子変異を網羅的に解析する「がんクリニカルシーケンス検査」を進める。公立病院が出資するベンチャー企業は異例という。

 

 新会社は「エスアールエル・静岡がんセンター共同検査機構」で、九月に設立した。長泉町の静岡がんセンター研究所内に本社を置く。資本金は二億二千五百万円で、出資比率はセンターが22・2%、SRLが77・8%。

 

 センターとSRLは二〇一四年から始めた共同臨床研究で、手術時に摘出したがん組織と血液を遺伝子検査し、国内で最大規模とされる約五千の症例を解析した。

 

 新会社は、このデータベースや臨床経験の提供を受け、患者の複数の遺伝子変異を同時に調べる「がんパネル検査」を実施。がん細胞の表面にあるタンパク質などを効率的に攻撃する「分子標的薬」など、患者個人に合った薬を選んで治療に役立てる。

 

 がんのかかりやすさや薬の効きやすさなど、患者それぞれの体質を知る先進技術にも取り組む。

 

 センターによると、まず大腸、肺、乳がんのパネル検査を予定。保険適用外で二十万円程度かかるというが、他の医療機関で治療中の患者からの検体も受け付ける。

 

(五十住和樹)


視標 岡山大教授 鵜殿平一郎氏 本庶氏にノーベル賞 がん治療大転換させた

2018年10月04日 05時14分46秒 | 医薬

視標

岡山大教授 鵜殿平一郎氏

(うどの・へいいちろう1959年長崎市生まれ。長崎大卒。同大学助教授、理化学研究所チームリーダーなどを経て2011年から現職。専門は免疫学。)

 

本庶氏にノーベル賞

がん治療大転換させた

 本庶佑先生がノーベル医学生理学賞に決まった。免疫を制御する新しい仕組みを発見した先生らの研究成果により、がん治療は大転換した。続々と新しい治療薬の研究開発につながり、多くのがん患者に希望を生み出している。これほど時宜を得た受賞はないと思う。

 本庶先生は、免疫細胞の一種、T細胞にある「PD1」というタンパク質を発見し、これが免疫の過剰な働きを抑える「プレーキ役」であることを突き止めた。PD1は本来、T細胞が健康な細胞を壊してしまうのを防ぐのが役目だが、がんがT細胞の攻撃から逃れる際にも利用している。がんにとって非常に重要なブレーキだった。このプレーキを解除することでがんの治療を可能にした。非常に重要な成果だ。

 免疫を利用してがんを抑える、という考え方は古くからあり、免疫を活性化する、つまり免疫のアクセルを踏むさまざまな手法が試みられていたが、うまくいかなかった。がん免疫を研究テーマにしていた私も、正直なところ「免疫を利用してがんを治すのは不可能ではないか」と考えていた。

 その考えを変えざるを得なくなったのは、PD1を抑える「免疫チェックポイント阻害剤」の臨床試験の結果、皮膚がんの一種メラノーマへの高い効果が報告された時だ。対象は末期の患者。こんなことがあるのかと、ただただ驚いた。

 体の中にがんがあるということは、免疫細胞にブレーキがかかった状態と言える。車のサイドブレーキを引いたまま、アクセルを踏んでも車は前に進まむい。今から考えれば、うまくいかなかったのは当たり前だが、ブレーキの発見を結果に結び付けたのはすごいことだ。米科学誌サイエンスは2013年の「今年のブレークスルー研究」のトップにがんの免疫療法を選んだ。

 免疫チェックポイント阻害剤は、1種類だけでは効く患者が少ないが、別の薬と併用することで効果が上がる例が報告されている。世界中の研究者がこぞって研究しており、今後も広がりが予想される。

 現在は進行がんの患者が対象だが、効く人を事前に見分けることができれば、最初から使う方がよいことが分かる可能性がある。ただ、これまでの抗がん剤とは違う仕組みで働くため、従来の知識や経験だけでは副作用に対処できないという難しさがある。

 副作用に適切に対処できる、免疫に詳しい専門家が、これからはがん医療チームに加わる必要がある。画期的な治療法の登場、普及で、がんの医療チームの在り方も変わっていかざるを得ないだろう。(談)

【静新平成30年10月4日(木)朝刊】