陶芸みち

陶芸のド素人が、その世界に足を踏み入れ、成長していく過程を描いた私小説です。

その131・秋

2010-05-14 09:03:30 | 日記
 それ以降も、着々と窯焚きの準備は調えられた。
「焼き締めで鮮やかな自然釉をのせるために、松のマキが必要じゃ」
と御大から命を受けると、オレたちはすかさず山中にトラックを走らせ、草むらに踏み入って松の倒木をさがした。
「灰が必要じゃ」
と言われると、若木を焼いて燃えカスをかき集めた。
 そんな作業と平行して、作品づくりもすすめた。ぐい呑みや茶碗、小皿、鉢、土鍋などもろくろで挽いた。ビアマグも挽いておくように、と申しわたされた。初窯を焚き終えた後の祝杯用に使わなければならないからだ。登り窯づくりに参加した歴代メンバーにも呼びかけ、全員に焼成への参加をうながした。登り窯づくりにたずさわった以上、窯焚きの機会だけは逃すわけにはいくまい。その実現に向けて、オレたちは加速していた。野天でチリチリと首すじを焼いた猛暑はすでに遠く、今や秋も深まり、樹々も赤く色づこうかという季節にさしかかっていた。

東京都練馬区・陶芸教室/森魚工房 in 大泉学園