陶芸みち

陶芸のド素人が、その世界に足を踏み入れ、成長していく過程を描いた私小説です。

その121・レンガ屋根

2010-05-03 07:34:06 | 日記
 屋根の形状は、手前ふたつ(一の間、二の間という)がドーム型、最後尾の窯(三の間)がカマボコ型と決まった。レンガ屋根の築造は興味深い。つくり方はまず、重い屋根がのっかっても本体が崩れないように、レンガ壁ぐるり一周を鉄枠で締めあげる。これには、高熱による窯の膨張に備えて、という意味もある。壁がしっかりと固定されたら、竹の骨組みで仮屋根を形づくる。タテに割いた竹を壁のあちこちから対角へ渡してアーチ状にし、天井の空間を埋めながら、ゆるやかな丸みをつくっていくのだ。すると湯船に大きな竹カゴをかぶせたようになる。それを土台にしてレンガを積んでいけば、屋根は崩れることなく組み上がる。内側に隠れた竹の骨組みは、窯を焚けば燃え尽きる。骨組みがなくなれば、レンガ自体の重みで屋根のすき間ががっちりとふさがり、強固なキメとなるという寸法だ。よく考えられている。
 しかし簡単な作業ではない。やってみると、これがとてつもなく複雑で大変な作業だ。直方体のレンガの連結で、曲線を築くことはできないのだ。レンガ一個一個を削って厚みに微妙な勾配をつけつつ、しかも隣としっくり噛み合うように整形しなければならない。ドーム屋根とはいってもまん丸ではなく、素人のつくるデコボコイレギュラーな卵形だ。一様な形に削り出しても意味がない。すべてのピースをその箇所に合わせて、しかも窯の中に崩落しないようなくさび形に微調整してはめこんでいく。まるで大きな立体パズルを組み上げていくようなものだった。

東京都練馬区・陶芸教室/森魚工房 in 大泉学園