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晋山結制ベストシーン

 曹洞宗寺院の最大の行事は、晋山結制(しんさん・けっせい)という、正式な住職としての就任の式と、禅僧として後継者を育成する修行道場のリーダーとしての力量を発揮披露する一大イベントです。
 結制の正式期間は100日間ですが、一般寺院では、生涯に一度(稀に再度行う例もある)、二日間に集約して、披露の式を行うことが通例です。

 先日、近隣のご寺院様で行われたこの行事は、不順な天気模様の中、ピンポイントの好天に恵まれ、盛大に行われました。詳細すると、大変ですので、個人的にこの行事のベストシーンを集めて、今回の写真と合わせて紹介します。選定のポイントは、一般の人から見て、めずらしい貴重な場面と思えるところです。

①首座入寺式
             
 住職として後継者育成は、第一の課題です。現在、寺院は家族世襲が多くなってきています。寺に育った我が子とて、出家の道は険しいもの。この行事では、後継者の筆頭僧として、実子が当たることが多いのです。この度も、春まで修行道場に出られていたご長男が戻ってのお役目です。これを首座(しゅそ)と呼んで、重大な役割です。前日に、寺に入る式が行われ、実の親子でありながら、師と弟子としての改まった挨拶をするのです。ここが、第一のみどころ。。。 中央、黒い衣が首座和尚、手前ブルーの袈裟の和尚様が父であり師匠である住職。一般には、このように親子が改まって礼拝する機会は少ないと思います。

②行茶(ぎょうちゃ)

 
  中央で読み上げる住職        二人ずつに茶碗を配る係の僧

 同じ前日行事ですが、翌日の大行事を前に、予定や配役を発表してお茶をいただく結団の儀式です。僧侶すべてが整列して、巻物に書いた配役をローソクの明かりで読み上げ、呼ばれた僧は、合掌して応えます。(先日はまだ明るかったですが)なんとレトロな風景。ここが見所。さらには、お茶の作法。中に懐紙とお菓子が入っているというような大変合理的に用意された茶碗を取り、無言のうちにてきぱきと進行します。めずらしい光景だと思います。

③安下処(あんげしょ)~稚児行列

 
当日の朝は、住職は安下処と呼ばれる、近所の役員さんの家から出発します。身支度を整える仮の宿という設定です。迎えの僧も集まり、全員で仏壇でご先祖様に読経します。当家にとりましても、大変名誉なことです。稚児さんも交えてのおお賑わいの中、行列を整えるのです。地域をあげての一大行事として盛り上がるのがこの行列です。晴れが第一条件で、この辺はギャンブル性を帯びています。

④上堂大問答

          
 一番のハイライトはこの場面。住職は本堂正面の檀に登り、問答に答えます。禅宗ならではの場面で、めったにライブ(やらせなし)で見る事はできません。首座との親子の問答も見応えがあります。かつての修行仲間などの問いには、笑いあり涙あり・・・

⑤法戦式(ほっせんしき)

          
      手前が弁事、左は書記和尚、右は問答を受けている首座和尚
          後ろは、寺の檀信徒総代役員のみなさん


 そして、何と言っても一番人気はここでしょう。これは首座和尚さんが問答を受けるのですが、ここの問答は伝統的な古典の禅語を暗記してやりとりする、本格的なシナリオ付きの問答ですが、難しい内容のやり取りだけに大変です。ここでの主役は首座のほか、弁事と呼ばれる小さなお小僧さんと、首座の補佐役の書記と呼ぶ僧の三人。この度の弁事は、R寺のご長男小学3年生。なかなか元気良くできて、人気を集めていました。堅苦しい禅問答の中に幼子が入るという、このアンバランスな組み合わせが、ホットする温か味を呼ぶ式でもあります。

みなさん、どれに最も興味ありや否や?

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                                写真提供 写録(当山副住)

コメント ( 5 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
TBありがとうございました (りょう)
2006-05-25 20:41:33
先日はお疲れ様でした。

いいお天気でなによりでした。

お天気の良し悪しもある意味、新命様の力量なのではと思いました。

さすがに、とてもきれいにまとめてらっしゃいますね。やはりバランスが素晴らしい。

拙記事、紹介してくださいましてありがとうございます。

写録さんのシャッターセンスもさすがに本山で鍛えられただけありますね。
 
 
 
→りょうさん (tera)
2006-05-26 06:50:52
 大役お疲れ様でした。お役を受けるということは、目に見えない存在の重みというのがあると思います。当日の晴天も新命様はもとより、貴師の思い等・・・、衆縁の結集の賜物と拝察します。



 掲載写真なのですが、少し躊躇しておりました。何せ公務の写真の無断掲載ですので・・・。公私混同はいけませんね。

 ところが、いつになく、期待通りのポイントの写真が入っていて、つい紹介してみたくなりました。ご本山の力は有り難いですね。

 まあ、私のカメラをお貸ししたので、チャラということにしておきましょう(笑)。
 
 
 
檀家さんにも (kameno)
2006-05-26 08:38:38
さすが良くまとまっていますね。

写真と、この記事を檀家さんにお見せしたいです。

予め解説冊子をお配りしてあったのですが、後からこのように振り返ると感慨も新たかと。

公私混同の償いに作成してお渡しするというのは如何ですか?
 
 
 
→kamenoさん (tera)
2006-05-26 18:25:36
キャー、チャラはだめですかぁ。考えてみます。でも、確かに檀家さんは、喜んでくれるでしょうね。教区でこのような支援ができると、いいですね。
 
 
 
上堂大問答 (某子)
2006-05-29 13:29:08
遅ればせながら・・・ですが、

私は4の上堂大問答に一番興味を持ちました。

「やらせなし」ということで、もちろん準備はするのでしょうが、本番ではドキドキということですね。



ごく一般的な日本人がこういう場面に遭遇する機会はめったにないと思いますが、こういった宗教行事がきちんと続いていることはある意味すごいな、と思いました(関係者の方には当たり前のことかもしれませんが・・・)。
 
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