「般若心経」考察～仏教随話⑦

はじめに、旨いと感心する、五蘊が皆空であると説く色即是空の省略の部分です。省略しないと次のようになります。これだけ入っただけでも「速い」要素は鈍くなります。８０字分が２４文字に簡素化されていた訳です。省略率７０％。下の５行のうちの後半の４行６４文字を「受想行識　亦復如是」の８文字で表している訳です。

 　しきふーいーくう　　くうふーいーしき　   しきそくぜーくう　　くうそくぜーしき　
　色不異空。 空不異色。 色即是空。　空即是色。
  じゅーふーいーくう　くうふーいーじゅ　　じゅーそくぜーくう　　くうそくぜーじゅー
   受不異空。 空不異受。　受即是空。 空即是受。
    そーふーいーくう　　くうふーいーそー　　　そーそくぜーくう　　くうそくぜーそー
   想不異空。 空不異想。　想即是空。 空即是想。
  ぎょうふーいーくう　くうふーいーぎょう　　ぎょうそくぜーくう　くうそくぜーぎょう
　行不異空。  空不異行。　行即是空。 空即是行。
  しきふーいーくう　　　くうふーいーしき　　しきそくぜーくう　　くうそくぜーしき
　識不異空。  空不異識。　識即是空。 空即是識。

この他、十二因縁の箇所では８０文字が１８文字に省略されて説明しています。省略率７７．５％。（このような計算が正しいか判りませんが・・・）

　このように、五蘊、六所、十二入、十八界、十二因縁、四聖諦、(四苦・八正道)などの、仏教の基本的な教理の空相を、高い省略率を保ちながら簡潔にしかも明快に説いています。仏教の根幹の教えを大乗の空観の立場から端的に説明している訳で、仏教の歴史の上でもとても重要な役割をこのお経は担っていると言えます。巧みですね。