昨日、日本テレビ系の「金曜ロードショー」で放送された「ルパン三世」シリーズの最新作「ルパン三世 天使の策略」が放映された。この作品は「ルパン三世」シリーズの中では久しぶりの好作と言えるだろう。過去の「ルパン三世」の作品の様々なエッセンスをふんだんに盛り込んでいる(中には往年の「ルパン対複製人間」や宮崎駿監督の「カリオストロの城」等をモチーフした情景もある)。そして、不合理を合理として見せてしまう「ルパン三世」の中で珍しく不合理の合理を論理的に説明しようとしている点は注目に値する。作品全般を通してネタがふんだんにあるので(オリジナルメタルが「真実の目」であるとか)一度目は楽しみながら見て、二度目はネタを解きながら見るというのも悪くは無いかもしれない。しかし、本日の題名にあるように最も着目すべき点は「反米」という側面にある。
アニメーションにおいて「反米」という政治思想を盛り込む事は別段に批判されるべき事ではない。しかし、それをどう描くかには批判すべき要素がある。例えば、小生がこのBlogを通してしばしば批評する「機動戦士ガンダムSEED DESTINY」等は現実認識の錯誤という点で「反米」の描き方を誤った例の一つだ。この「ルパン三世 天使の策略」はその反対の例として名を残す事は間違いが無い。この作品はグレーム・レイク空軍基地(通称、エリア51)にある墜落したUFO(1947年のロズウェル事件の物と言う設定になっている)の破片(オリジナルメタル)をルパン一味が盗み出すところから始まる。もっとも、この破片と称されるものは米軍がプラズマ兵器用に開発した新素材で情報隠匿の為に宇宙金属というフェイクを作り上げているという設定になっている。そして、無論、それを単体では加工できない(斬鉄剣より硬い)ので、それを加工するのに必要な液体を持つ反米テロ組織「ブラッディ・エンジェルス」が付狙うのである。「ブラッディ・エンジェルス」とルパン一味からオリジナルメタルを奪回するように銭形警部に依頼するのが眼鏡をかけた国防総省の高官である。
プラズマ兵器に、反米組織とまさに現代の世界情勢を現す情景である。プラズマ兵器の存在は現在米軍の中で研究開発が進められている兵器だ。無論、建物を破壊せずに内部の人間を殺傷するという規模の物ではなく、内部の人間の行動を阻害させるという非致死性兵器というレベルではあるが。これは第2次湾岸(イラク)戦争後のイラクの治安安定化作戦等の過程での要望から開発が進めらているものだ。反米組織「ブラッディ・エンジェルス」の幹部ポイズン・ソフィーは彼氏をアメリカが起こした戦争(第2次湾岸戦争の事か)で作戦を優先した米軍の誤爆によって戦死するという背景があって反米組織に入っているし、「この国(アメリカ)は力を持ちすぎた」と言わしめるのである。この辺りは反米組織がイスラム原理主義という設定になっていないだけで(「亜マゾネス軍団」と称されるが、どちらかといえば右派原理主義的側面か)殆ど、現実世界の構図と変わっていない。更に、この「ブラッディ・エンジェルス」のボス、エミリーが乗る野戦車は米軍のハマーであり、この辺りは一時報道されたアルカイダのオサマビン・ラディンが米軍の野戦服を着ていたという隠喩を込めているのだろう(「ブラッディ・エンジェルス」の部下が使う短機関銃に至ってはイスラエル製のUZIである)。そして、国防総省の眼鏡の高官は明らかに現ブッシュ政権の国防長官ラムズフェルドなのである(つまり、ここでソフィーの彼氏を殺す事になった命令を出した張本人が描かれる)。
結局のところ、反米という背景設定でルパン一味、銭形警部、「ブラッディ・エンジェルス」がオリジナルメタルを巡ってどたばたを繰り広げるわけであるが、ここで重要なのは、オリジナルメタルを開発した米軍はオリジナルメタル関係の技術を全てを知っているという事である。「ブラッディ・エンジェルス」は米国の敵対国(核兵器を遥かに凌駕する兵器を開発中と一時期主張した北朝鮮の事だろうか)へオリジナルメタルを売却しようとするが、ここで売却が成功して技術が拡散すれば(原爆開発においても中心となった爆縮レンズ技術は米国からソ連へスパイが持ち出した事によって技術拡散したとも言われている)、新たな冷戦構造のようなものが生じる事になったかもしれないが、ルパン一味は基本的に政治思想の無い存在として描かれるので(前述の「この国は力を持ちすぎた」発言の後で、ルパンは「そんな事はどうでもよい」という発言をする)結局のところは米軍から技術は流出しないのである。つまり、反米といいながら現実世界において世界最強は米国なのだという一般常識を持って作品が構築されているのである。更に、作品の最後においてエミリーが持っていた偽物のオリジナルメタルを新海調査艇「しんかい6500」まで持ち出して賢明に探す銭形警部の行動は日本が米国の行動に賢明に追従しようとしている現実世界をある意味で面白おかしく演出している。
この「ルパン三世 天使の策略」はまさに反米という存在が実際は如何に喜劇であるかというものを描いている。思想としての反米は理論的に成立しうるが、行動としての反米はある意味でとことんまで喜劇なのである(ある意味で米国の全て手の内で「反米」とは転がされてしまうような存在なのだ)。それはこのルパン三世という喜劇アニメによって題材になったという事でよく理解出来よう。つまり、反米を生真面目に取りう上げるのではなく喜劇化することによってこそ真の「反米」は演出可能なのである。この作品をルパン三世シリーズの中でも面白さに仕上げた監督の宮繁之の今後の活躍にも期待が持てると言えるだろう。
アニメーションにおいて「反米」という政治思想を盛り込む事は別段に批判されるべき事ではない。しかし、それをどう描くかには批判すべき要素がある。例えば、小生がこのBlogを通してしばしば批評する「機動戦士ガンダムSEED DESTINY」等は現実認識の錯誤という点で「反米」の描き方を誤った例の一つだ。この「ルパン三世 天使の策略」はその反対の例として名を残す事は間違いが無い。この作品はグレーム・レイク空軍基地(通称、エリア51)にある墜落したUFO(1947年のロズウェル事件の物と言う設定になっている)の破片(オリジナルメタル)をルパン一味が盗み出すところから始まる。もっとも、この破片と称されるものは米軍がプラズマ兵器用に開発した新素材で情報隠匿の為に宇宙金属というフェイクを作り上げているという設定になっている。そして、無論、それを単体では加工できない(斬鉄剣より硬い)ので、それを加工するのに必要な液体を持つ反米テロ組織「ブラッディ・エンジェルス」が付狙うのである。「ブラッディ・エンジェルス」とルパン一味からオリジナルメタルを奪回するように銭形警部に依頼するのが眼鏡をかけた国防総省の高官である。
プラズマ兵器に、反米組織とまさに現代の世界情勢を現す情景である。プラズマ兵器の存在は現在米軍の中で研究開発が進められている兵器だ。無論、建物を破壊せずに内部の人間を殺傷するという規模の物ではなく、内部の人間の行動を阻害させるという非致死性兵器というレベルではあるが。これは第2次湾岸(イラク)戦争後のイラクの治安安定化作戦等の過程での要望から開発が進めらているものだ。反米組織「ブラッディ・エンジェルス」の幹部ポイズン・ソフィーは彼氏をアメリカが起こした戦争(第2次湾岸戦争の事か)で作戦を優先した米軍の誤爆によって戦死するという背景があって反米組織に入っているし、「この国(アメリカ)は力を持ちすぎた」と言わしめるのである。この辺りは反米組織がイスラム原理主義という設定になっていないだけで(「亜マゾネス軍団」と称されるが、どちらかといえば右派原理主義的側面か)殆ど、現実世界の構図と変わっていない。更に、この「ブラッディ・エンジェルス」のボス、エミリーが乗る野戦車は米軍のハマーであり、この辺りは一時報道されたアルカイダのオサマビン・ラディンが米軍の野戦服を着ていたという隠喩を込めているのだろう(「ブラッディ・エンジェルス」の部下が使う短機関銃に至ってはイスラエル製のUZIである)。そして、国防総省の眼鏡の高官は明らかに現ブッシュ政権の国防長官ラムズフェルドなのである(つまり、ここでソフィーの彼氏を殺す事になった命令を出した張本人が描かれる)。
結局のところ、反米という背景設定でルパン一味、銭形警部、「ブラッディ・エンジェルス」がオリジナルメタルを巡ってどたばたを繰り広げるわけであるが、ここで重要なのは、オリジナルメタルを開発した米軍はオリジナルメタル関係の技術を全てを知っているという事である。「ブラッディ・エンジェルス」は米国の敵対国(核兵器を遥かに凌駕する兵器を開発中と一時期主張した北朝鮮の事だろうか)へオリジナルメタルを売却しようとするが、ここで売却が成功して技術が拡散すれば(原爆開発においても中心となった爆縮レンズ技術は米国からソ連へスパイが持ち出した事によって技術拡散したとも言われている)、新たな冷戦構造のようなものが生じる事になったかもしれないが、ルパン一味は基本的に政治思想の無い存在として描かれるので(前述の「この国は力を持ちすぎた」発言の後で、ルパンは「そんな事はどうでもよい」という発言をする)結局のところは米軍から技術は流出しないのである。つまり、反米といいながら現実世界において世界最強は米国なのだという一般常識を持って作品が構築されているのである。更に、作品の最後においてエミリーが持っていた偽物のオリジナルメタルを新海調査艇「しんかい6500」まで持ち出して賢明に探す銭形警部の行動は日本が米国の行動に賢明に追従しようとしている現実世界をある意味で面白おかしく演出している。
この「ルパン三世 天使の策略」はまさに反米という存在が実際は如何に喜劇であるかというものを描いている。思想としての反米は理論的に成立しうるが、行動としての反米はある意味でとことんまで喜劇なのである(ある意味で米国の全て手の内で「反米」とは転がされてしまうような存在なのだ)。それはこのルパン三世という喜劇アニメによって題材になったという事でよく理解出来よう。つまり、反米を生真面目に取りう上げるのではなく喜劇化することによってこそ真の「反米」は演出可能なのである。この作品をルパン三世シリーズの中でも面白さに仕上げた監督の宮繁之の今後の活躍にも期待が持てると言えるだろう。