とろたまなの珈琲飲中毒

これはカフェイン中毒で晩酌のようにコーヒーの欠かせない男の寂しい記録である

本『宇宙戦争』

2006-01-29 | 趣味
言わずと知れた、SF古典の名作、H・G・ウェルズの『宇宙戦争』である。
最近、映画化されたほうは、頓に評判が悪いが、たぶん、原作のよさを設定ごと、つぶしてしまっているせいではないかと思う。
みてないから、詳しくは知らないが、火星人がいろいろ地球に埋めといたり、そういう怪しげな設定がわんさかあるらしい。
たぶん尺の関係ではないかと思うのだが。

ちなみに、原題は、『The War of the Worlds』で『諸世界の戦争』と訳すのが、よいらしい。
『火星戦争』という邦題で、出版されていたころもあったらしい。
実際、宇宙戦争でもなく、火星戦争でもなく、火星人によるほぼ、一方的な地球制圧であり、抵抗むなしく、ざくざく、死んでいくのである。

この小説のすごいところは、書かれたのが、一次大戦前なのである。
地球側の装備は、飛行機などなく、南北戦争当時とたいして変わりない装備で、現在の地球科学でも到底到達不能と思われる、科学技術を持った火星人とバトルするという、ありとゾウの戦いみたいな状態なのである。

火星人は、火星の惑星としても終焉を迎えることに危機を感じ、地球侵攻を計画。
そのことを知らない地球人は、一方的に惨殺され、そして、このままでは、滅亡してしまうというところで……

というストーリーである。
子供向けアニメなら間違いなく、ここで、スーパーヒーローが登場するところだが、そんなものは登場しない。

主人公は、新聞に細々と、論説を載せる作家であり、体力も人並みである。
多少は、生き残るために知恵を使ったりもするが、基本的に生き残ったのは運によるところが大きく、家族を守るために、全力を尽くしたのは最初のほうだけである。
むしろ、主人公が極限状況で、出会った人々の様子やそれに対する主人公自身の対応が、この物語のメインであり、火星人襲来はそういう状況を作り出すためのオプションである。
牧師補なんかが出てくるが、恐ろしくヘタレであり、宗教ってもろいなー、という印象抱かせるなど、社会批判的な要素もあったりして、当時よく出版できたなー、という気もします。

案外がんばっているのが、イギリス陸軍です。
明らかに無理とわかっているのに、騎馬突撃をかけたり(笑)。
情勢がやばいと思ったら、市民を誘導して逃がしたり、結構がんばります。
まあ、ほぼ全滅しましたが。

というかんじで、今読んでも、面白い本なので、ぜひ。
(写真なし)

本『はじめての宗教学―『風の谷のナウシカ』を読み解く』

2006-01-29 | 趣味
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正木晃・著

超メジャーアニメ映画『風の谷のナウシカ』をベースに、宗教学の基本的な考え方をレクチャーしている本。

だから、これは、宗教学の本であって、ナウシカの本ではない。
その辺を履き違えたアマゾンレビューを書いている恥ずかしい人がいたり。

宗教学は入り口が難しい。
高校までの授業では、倫理くらいしか、宗教っぽいものがないからだ。
他の学問はベースになる授業がある。

まあ、それでも、大学数学とか、何言ってんだろう、って感じだけど。
数式自体ははわかるし、流れもわかるけど、だから、何ができるのか、のあたりがあいまいすぎて、ちょっと。

それはともかく。
一般的な高校生が知っている知識は、むしろ、日本史と世界史にでてくる宗教知識である。
だから、いつごろ、その宗教が成立したか、誰が起こした宗教か、どの宗教とどの宗教が対立して戦争が起こったか、は知っていても、宗教自体はなんなのか、ということは知らない場合が多い。
神にすがる、というイメージはあっても、なんですがるのか、カソリックでもないのに教会で結婚式をあげる人々にはわからない。
それが普通。

そして、それについて考えたことがない。
考えたことがないから、宗教について学問するといわれたりすると、なんじゃそりゃなのである。

著者自身も、授業を行うときに、毎回困っていたらしい。
生徒が興味なさそうにしているらしい。
なるほど、たしかに、学部時代の比較宗教学に興味を持っている風だったのは、100人くらいの受講者のうち、自分と友人のくらいだった。
二人ともオタクで、なおかつ、高校生のころから、神話、民俗、思想に興味を持っている人間なので、一般人ではない。

で、著者が考えた結果、みんなが知っているものをベースに話を始めればいいじゃん、ということで、ナウシカを持ち出した、のである。
ナウシカは多分、日本人の7割以上が知っていて、大学生くらいだと、さらに浸透率は高く、9割はしっているだろう。

長嶋監督がどういう人か知っているクラスのレベルである。

それをベースに話をすれば、

ナウシカと宗教がどうしてつながるの?

という疑問を持ってもらえば、勝ちである。
疑問は興味だ。

著者の授業は、結構うまくいっているらしい。

本の内容は、仏教ベースである。
著者が仏教の研究者だからだ。
それも密教系、チベット仏教系である。
しかしながら、仏教系の研究者は、ちゃんと他宗教についても勉強している。
この辺は仏教系の研究者の特徴で、仏教がよいというのではなく、仏教と、他の宗教の共通点と相違点を的確に見つめなおすという作業を行う研究者の特徴である。
キリスト教系やイスラム系の宗教では、他を否定して、そのうえで、自分たちの宗教を研究するので、狭く深くなる。
狭く深くするのも悪くはないが、一般人に説明する場合、広く浅く、いったほうがよい(もちろん仏教が浅いという話ではない)。

ナウシカという作品を、宗教的なテーマで考えるのは、人間的なテーマと環境の循環というテーマを時間軸の違いと相互理解という話で捕らえている。

入門書としてわかりやすくするため、ナウシカの色をテーマにしたり、行動をテーマにしたり、人々の役割をテーマにしたり、そうして、ナウシカの内容と宗教テーマをクロスさせることで、理解しやすくしている。

それでも、たぶんわからない人はわかりませんが、わかりやすいとは思います。

宗教ということに興味を持った人が、宗教って、そういうことか、と感じられる本として、宗教学の入り口として、オススメ。

なお、自分は、チャペルウェディングもいいな、と思う、無神教な独身である(結婚予定なし:随時募集中)
(写真なし)