九重町の友人宅で鶏のえさを積み、野矢集落の出口を左折し飯田高原へと車を向けた。道の左には杉木立、右は巨大なミズナラとブナの原生林が続き、谷底に小さな川が流れている。樹層は、すでにこのあたりが阿蘇くじゅう国定公園の一部であることを教えてくれる。
つづれ織りの道を2キロほど登っていくと、別府と阿蘇を結ぶ九州横断道路(通称 やまなみハイウェー)に到達する。そこを右折すると九重の牧ノ戸峠までは一本道。途中、農家の経営する青空市場が数軒。道は下りに入り、ドライブインを過ぎてしばらく行くと、突然、景色は開ける。右に草原、左には広い水田が広がる。正面には三俣山、後ろが星生山、右に平冶岳の九重連山群。生々しい噴煙が上がっているのが見える。飯田高原である。
道は高原の真ん中を貫くように走り、10分ほどで登山口に着く。悪天候のためか客は少ない。県外ナンバーが5~6台。九重ビジターセンターの駐車場にトラックを止める。下界は梅雨の晴れ間だったが、このあたりは雨雲が残っていて今にも降り出しそうである。風はまだ冷たく春先の温度であった。荷台の飼料をビニールで覆い、ビジターセンターの横の階段を下りていく。
小さな川を渡ると目の前には広い湿原が広がっている。木の歩道がかけられており、登山者はその上を歩く。夏浅いためか、草木は膝ほどの高さしか伸びてはいなかった。少し歩いたところで、いきなり、深い霧が襲ってきた。九重の山々も、その入り口であるビジターセンターも見えなくなった。当たりに人影もなく、私だけが霧の中に一人取り残された。幾らか不安はあったが山の入り口だけでもたどり着きたいと歩を進める。湿原が終わると、赤いコンクリートで舗装された狭い歩道に変わる。昨夜降った雨の為にところどころ冠水していたが運動靴が濡れるほどではなかった。
山の中は薄暗く、夜の帳が下りていた。登山道には枯れた小枝が散乱し、微かにもののけの匂いがした。これ以上進むことはためらわれた。山中を50メート進んだところで踵を返し、元の木の歩道に戻った。まだガスが辺りを覆い、強い風が草木を揺すらせていた。半分ほど引き返したあたりで風の中から何かが聞こえた。歩を止め、耳を澄ますと、確かに湿原の中から探していた声が聞こえた。飼料を濡らしても聞きたかった声、カッコウの鳴き声だった…。
photo 「海からの霧に反応して水田から霧が…」
つづれ織りの道を2キロほど登っていくと、別府と阿蘇を結ぶ九州横断道路(通称 やまなみハイウェー)に到達する。そこを右折すると九重の牧ノ戸峠までは一本道。途中、農家の経営する青空市場が数軒。道は下りに入り、ドライブインを過ぎてしばらく行くと、突然、景色は開ける。右に草原、左には広い水田が広がる。正面には三俣山、後ろが星生山、右に平冶岳の九重連山群。生々しい噴煙が上がっているのが見える。飯田高原である。
道は高原の真ん中を貫くように走り、10分ほどで登山口に着く。悪天候のためか客は少ない。県外ナンバーが5~6台。九重ビジターセンターの駐車場にトラックを止める。下界は梅雨の晴れ間だったが、このあたりは雨雲が残っていて今にも降り出しそうである。風はまだ冷たく春先の温度であった。荷台の飼料をビニールで覆い、ビジターセンターの横の階段を下りていく。
小さな川を渡ると目の前には広い湿原が広がっている。木の歩道がかけられており、登山者はその上を歩く。夏浅いためか、草木は膝ほどの高さしか伸びてはいなかった。少し歩いたところで、いきなり、深い霧が襲ってきた。九重の山々も、その入り口であるビジターセンターも見えなくなった。当たりに人影もなく、私だけが霧の中に一人取り残された。幾らか不安はあったが山の入り口だけでもたどり着きたいと歩を進める。湿原が終わると、赤いコンクリートで舗装された狭い歩道に変わる。昨夜降った雨の為にところどころ冠水していたが運動靴が濡れるほどではなかった。
山の中は薄暗く、夜の帳が下りていた。登山道には枯れた小枝が散乱し、微かにもののけの匂いがした。これ以上進むことはためらわれた。山中を50メート進んだところで踵を返し、元の木の歩道に戻った。まだガスが辺りを覆い、強い風が草木を揺すらせていた。半分ほど引き返したあたりで風の中から何かが聞こえた。歩を止め、耳を澄ますと、確かに湿原の中から探していた声が聞こえた。飼料を濡らしても聞きたかった声、カッコウの鳴き声だった…。
photo 「海からの霧に反応して水田から霧が…」