366日ショートショートの旅

毎日の記念日ショートショート集です。

ばーん!

2012年04月27日 | 366日ショートショート

4月27日『婦人警官記念日』のショートショート



バーン!

息急き切って駆け込んだ私の背後で、重い防火扉の閉じる音が響いた。
閉鎖された狭い空間に、私は犯人と至近距離で対峙した。
逃げ場を失い、飛び出しナイフで威嚇する、目出し帽の犯人と。
抵抗を止めるように警告を発したがまったく応じない。。
再度警告したあと、マニュアルどおりにしかたなく拳銃を抜いた。
チーフスペシャル軽量タイプ。訓練どおりに安全装置を外す。
とにかくあと数分間。署から応援が駆けつけるまで犯人をくいとめなくては。
銃口を見つめ、犯人がわめき散らした。怒気に満ちた声は言葉さえはっきりしない。
が、その訛りと、その声質に聞き覚えがあった。
目出し帽から覗いた、大きな瞳にも。
「駿くん。駿くんだよね?私よ。啓子」
わめいていた口を閉じ、ナイフをもつ手がゆるむ。間違いない。彼だ。
高一のクラス。駿くんが委員長で、私が副委員長で、二人ともオクテで。
夏休みのキャンプのときに、告白大会みたいになって、両思いとわかって、テントに二人っきりにされて。
好きな異性と二人っきりになるだけで、あんなに嬉しくてあんなにドキドキするなんて思ってもみなかった。
そして今、こんな状況で二人っきりになっている。
学年末、突然学校に来なくなって、それっきり。駿くん、いったい何があったの?
「オレはそんな名じゃねえ!オマエなんか知るもんか!」
嘘だ。
隠そうとしても、悲しみを湛えたその目でわかる。
「私待ってたんだからね。連絡くれるの、ずっと待ってたんだからね」
「うっせえ!」
駿くんがナイフを握りなおす。私は銃を構える。
「ね、ナイフを下ろして。やりなおそうよ。やりなおせるから」
「やりなおせるもんか。オレはもう死んじまいたい!」
死んでしまいたい?
「わかったわ」
死んでしまえばいい。私が手伝ってあげる。一度死んで、全部やりなおしたらいい。
私は、駿くんの胸の真ん中に銃を向けた。そして、
ばーん!