とんとんのヒトリゴト

のんびり成長中のムスメの成長記録と趣味や日々の徒然話など。

マタニティブルーの悲劇 その2

2005-10-04 | 子育て
明けて翌日。母と東京からやってきた相方が連れ立ってやってきた。新生児室のぶーちゃんの様子を教えてくれて、「見に行って来れば?」と誘われたのだが、私は体の痛みもあって足を運ぼうとしなかった。母も相方も私が疲れているから仕方ないだろうと強くは勧めなかったので、その日は結局ぶーちゃんと一度もあうことなく終了。そして翌日、私は開いた個室に異動する事になった(ちなみにその産院は全室個室の病院なのだ)

病室は日当たりのいい南側の部屋。付いてしばらくきょろきょろしていると、看護婦さんがぶーちゃんを連れてきてくれた。ベビーベットでぐーすか眠るぶーちゃんとようやくのご対面。そう、私はこの時嬉しいというよりも何となく奇妙な感じがしていた。これがおなかの中にいたと言われても全然実感がわかないのだ。
そうこうしているうちに、ミルクはここ・・・何CCずつ飲ませてここにチェックして・・・あとオムツはここ、足りなかったらナースセンターに声かけてね・・・などとてきぱき指示を与えて颯爽と消えてしまった。
そして白い部屋には私とぶーちゃんが二人取り残された。ここから私の戦いが始まった。

まず、子供の抱き方が良く分からない。とりあえず抱いてみるがイマイチぎこちない。でもおっぱいも飲ませなきゃいけないし・・・と思い、言われたような感じで含ませようとするが、ここでぶーちゃんから大反撃を食らう。なんと首をぶんぶん振って全然吸い付こうとしないのだ。そしてそんなぶーちゃんの動きが怖くて私は仕方が無い。
な・・・何故?あかちゃんっておっぱいに吸い付くもんじゃないの~??
そうは思うけれど、全然上手く行かないので諦めて次はミルクにする。
そしてまたミルクで突っかかる。生まれたての赤ちゃんはいきなりたくさんのミルクは飲めないので、一日目は一回5CC、次の日は10CCみたいな感じで量を増やしていくのだが、その説明の意味が分からない。とりあえず言われるままにミルクを作って飲ませてみるが、飲んでいる動きはするんだけれどちょっとしかミルクが減らない。
・・・訳が分からずそのまま横たえるが、当然だけれどお腹がすいているのですぐに泣いてしまう。
仕方なく抱っこをすると落着くが、下ろすと泣く。オムツが原因かと思ってオムツを替えるが、ほんの数分するとまたぷりっと音がしてウンチをしていたりする。
そして、とにかくぶーちゃんはよく泣いた。眠りの浅い子らしく、昼間でも1~2時間おきに泣くのでとにかく抱っこのしっぱなし。眠ったと思ってベビーケージに入れようとすると又泣いて・・・。
おっぱいは飲まない。ミルクも飲まない。うんちはしょっちゅうする。そして泣き止まない。
どうしていいか分からずに助産婦さんに相談しようとするが、とにかく皆忙しそうで話を聞いてくれない。で、ちょっと話をすると、「赤ちゃんは泣いて当然」「おっぱいは自然に吸い付くもの」「オムツは気にしすぎ」とまぁあれこれ言われてしまい、すでに色々な意味でテンパっていた私は、その些細な言動にいちいち傷ついてそして誰にも相談できなくなっていった。
昼は仕事の都合を付けた相方がきてくれるけれど、お互い初心者マークなので相談しようにもとんちんかんな返答ばかりやってくる。そのうちあまり言うのも心配するだろうと思い、結局私は相方の前でも元気な姿でいようと努力した。

おっぱいの謎は解けないものの、ミルクの謎は3日目にしてようやく解けた。そこでつかっていた哺乳瓶は、ちょっと古いタイプのものらしくニプルを哺乳瓶に直接つける(プラスチックのリングとかはつけないんですよ)奴だった。
これはちょっと使い方にコツがいるらしく、このまま飲ませるとビンの中が真空状態になってしまうので子供がいくら吸ってもミルクが出てこないって奴だったらしいのです。そしてそれを説明したというのですが、どうも私の頭の中にはインプットされてなかったらしいのです(滝汗)で、どうするかというと、飲ませている時に人差し指でちょっとそのニプルの縁を持ち上げて空気をビンの中に入れてあげればいいらしいのです。
それをやってみると、確かにぶーちゃんもコクコク飲み始めた!バンザーイ!!と思ったのもつかの間、今度は飲ませすぎているのか鼻からどばぁ~ってミルクを噴出す始末。今となったら「飲ませすぎちゃった、エヘ(^^ゞ」で笑って済ませられるんだけれど、もうその時は私大パニック。と言うよりも、もうこの辺になってくると、完璧に私は精神状態がおかしくなっていたみたいで、とにかく病室にいる事自体が苦痛で仕方なくなっていた。
親に退院してもう家に帰りたいと訴えたが、仕事をしている母にしてみれば病院の方が安心なわけで。とにかく退院の日まではそっちにいなさいと諭されてしまった。そうなるともう無理はいえない。
そして気が付くと、私は昼も夜も寝れなくなっていた。夜はとにかく横にすると泣いてしまうぶーちゃんをずっと抱き続けて、ぼんやりとドアの窓から漏れるナースステーションの白熱灯ばかり眺めていた。昼間はぶーちゃんが若干寝てくれるので一緒に寝てしまえばいいのに、「またすぐに泣いちゃうかもしれない」とか余計な事ばかり考えて結局眠れない。おっぱいは相変わらず失敗ばかり。ちなみにおっぱいはそこそこ生産しているらしいんだけれど、肝心のぶーちゃんが飲んでくれないのでもうパンパンに張っていて、3日目からは熱が出てしまう始末だった。
ぶーちゃんの泣き声に、痛みに、私は完璧にノックアウト。ご飯も喉を通らなくなり、ほとんど手を付けずにぼーっとしていると、取りに来たお手伝いさんが声をかけてくれた。
誰に言っても仕方ない・・・そう思っていたんだけれど、私はぽつぽつとぶーちゃんが嫌々しておっぱいを飲んでくれない事などを話した。すると、片づけを終えたそのおばさんが病室に戻ってきて、私に授乳する姿を見せて欲しいと言ってきたのだ。で、やってみたのだがやっぱりぶーちゃんは頭を振って嫌々する。それをみておばさんがアドバイスをしてくれた。
「それ、多分嫌なんじゃなくて何処にママのおっぱいがあるのかが分からなくて探しているんだと思うよ。」
もう、目からうろこですよ。嫌・・・じゃなくて探しているって??
「ここにおっぱいがあるよって頭をぐっと寄せてあげればいいんだよ」と言われ、おそるおそるやってみると・・・なんとぶーちゃんがものすごい勢いで飲み始めたのだ。
ぶーちゃん、初おっぱいまでなんと4日。私も辛かったが、ぶーちゃんも辛かったと思う。
でも、たったそれだけでも、私の心はグーンと軽くなった。ただしあくまで一瞬だけど(笑)
これを教えてもらったおばさんには本当に感謝。そしてあの産院だけは二度と行きたくないと私は思っている。今でも評判いいらしいんだけれど、私はダメです。

そしてようやく退院して実家に戻ってきた私たち。
とにかくあの白い箱から脱出したくて仕方なかった私としては、実家に帰ってきただけでもホッとしたのだが、だからと言って一度崩れた精神のバランスはそう簡単には戻らなかった。
一番辛かったのがとにかくぶーちゃんは寝ない事だった。本を見ると、新生児の頃は3時間おきにおっぱいやミルクを飲んで後は寝ているだけ・・・と言うのだが、ぶーちゃんは一時間くらいしか寝ないのだ。
で、泣くのでおっぱいを飲ませる。
飲み終わってげっぷを出させて横にするのに30分。
そして一時間も経たないうちにまたひーひ泣き出す。
これを昼夜問わずエンドレスにやられてしまったのだ。もしかしたらおっぱいが足りないのかと思いミルクを足すが、ミルクを足しすぎて結局吐き出してしまい全然ダメだめ。一体何が原因なのかさっぱり分からず、本とネットで検索しまくり。相談電話も利用してみるが、返事はみんな同じ。「そのうち落着きますからね」だった。
日中は誰もいない家で一人ぶーちゃんのお世話。夜は泣きじゃくるぶーちゃんを抱っこしてすごす。
眠れない日々が続き、そのうち私はぶーちゃんの隣にいるのが苦しくなって、泣き声を聞いただけで動悸が起きるようになっていた。そんな日々を過ごしているうちに私の人相がどんどん変わっていたらしい。
原因を探してネットや本ばかりを手にする私に母には「あんたどうしちゃったの?そんな本ばかり読んでないでちゃんと寝て元気だしなさい。ぶーちゃんの母親はアンタしかいないんだからね」と口すっぱく言ってきた。
心配してくれているからこその言葉だと頭では分かってはいるが、心が追いつかない。
自分なりにこんなに頑張っているのにどうしてぶーちゃんは泣き止まないんだろう?
どうしてぶーちゃんだけこんなに寝ないんだろう?
どうして、どうして、どうして。そんな自問を繰り返しているうちに、考えてはいけない事まで考え始めた。
子供は誰よりも愛おしくて、かわいい存在なはず。誰もが子供を胸に抱いておっぱいを飲ませて至福の時を感じるはずなのに、なんで私はこんなに辛いのだろう?
ぶーちゃんを抱っこしながら、私は楽しい未来を描く事が出来ない。
誰もが自然に受け入れ、やっていける事柄が全然出来ない自分が酷くみじめで、何処かおかしいんじゃないかとまで考えるようになってしまっていたのだ。それは最悪の悪循環だった。

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