Tomotubby’s Travel Blog

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「スティール・ボール・ラン」に引用されるマグリット作品

2007-01-13 | 漫画... 「デスノート」と「ジョジョ」など
「ウルトラジャンプ」連載時にはあまり気にならなかったのですが、お正月に荒木飛呂彦「スティール・ボール・ラン」のコミックスを読み返していると、ベルギーのシュールレアリスム画家、ルネ・マグリットの作品の引用と思われる箇所がいくつも見つかりました。最近は「回転」の原理に黄金比がでてきたりするし、荒木さん、アートにご執心なんでしょうか?

まず、前にコメント欄で指摘したと思いますが「ウルトラジャンプ8月号」の表紙絵。そしてコミックス第9巻の表紙絵です。



林の中に見え隠れする乗馬像は、色合いが違えど、どこかマグリットの「白紙委任状」を思い起こさせます。


「白紙委任状」

表紙絵では連載の物語から離れて絵が描けるせいか、荒木さんが楽しんで描いているように思えます。

次は「すみませぇん」が口癖の、大統領の刺客(小林信彦の「オヨヨ大統領」シリーズみたい。復刊希望)ブラックモア。雨滴を空中で固定して、それを足場に空中を歩行する能力を持っています。


空中を歩くブラックモア

空中を移動するシーンはマグリットの「ゴルコンド」という作品、山高帽にコートを着込んだ男性が、雨粒のように空からたくさん落ちてくる絵を思い出させます。


「ゴルコンド」

「スティール・ボール・ラン」はレースを競う物語ですが、それはまた宝探しの物語でもあります。宝に相当するのが、レース・コース上にばらばらに隠されている「キリストの遺体」なのですが、そのうちの両眼が隠されていたフットルース山の目印は、山頂のシルエットが「crus」という文字になっていることでした。

この山は、山頂が鳥のシルエットになった「アルンハイムの領地」を想起させます。絵では手前にある巣の中に卵がありますが、物語では卵が眼球に化けたのかもしれません。ジョルジュ・バタイユの「眼球譚」みたい。ちなみに「アルンハイムの領地」と「白紙委任状」は何年か前に日本で開催された「マグリット展」で展示され、どちらもポスターに使われた目玉作品でした。


「アルンハイムの領地」

いろいろ想像していると、ジャイロの操る鉄球も「天空の声」などに出てくる球体に見えるし、この球体と指が描かれた「イレーネ(または)禁断の文学」はジョジョのスタンドを暗示しているようにも思えます。

「天空の声」


「イレーヌ(または)禁断の文学」

(以下、コミックス派の方、ネタバレ注意)
ネイティブ・アメリカン、サ(ウ)ンドマンの音を実体化するスタンドだって、石の文字の積み上がった「会話の技術」という絵に似ています。


サ(ウ)ンドマンのスタンド


「会話の技術」 REVEとは夢のこと、上の方はなんだかハングルみたい。

このようにマグリットの絵画作品は、荒木さんの描くイメージの源泉になっているのかもしれません。

それからマグリットではないんですが、ディオとサ(ウ)ンドマンが共同戦線を組むくだりで背景になっていた階段は、赤瀬川原平いうところの「超芸術トマソン」ではないでしょうか。このブログでも取り上げたことのある、単に上がって下りるだけの「無用階段」、まさに四谷にあった伝説の純粋階段です。


純粋階段上にすわるディオ。サ(ウ)ンドマンはドアの下に隠れている。


東海道「四谷階段」