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奥参事官のイラク便り

2003-12-01 | Asia 「圓」な旅
反米意識の強いスンニ派イスラム教徒勢力の多いイラク・ティクリットで、11月29日午後5時、北部イラクの支援会議に出席するため出張中だった在イギリス日本大使館 奥参事官と在イラク日本大使館 井ノ上三等書記官が殺害されました。 お二人のご冥福をお祈りします。

奥参事官は、4月以来、外務省のホームページの省員近思録のページで、70回に亘り「イラク便り」を連載されており、テロへの怒りとイラクの復興にかける決意表明が熱く語られています。中には以下のように「ほのぼの」とする内容のものもあり、奥氏の人となりを知ることができます。
突然の連載中断が残念でたまりません。哀悼の意もこめて、原文を転載させていただきます。

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平成15年11月11日(火)
イラク便り
-おしん!おしん!おしん!-
在英国大使館 奥参事官

NHKの人気番組「おしん」が日本で初めて放映されたのはかれこれ20年近く前のことでしょうか。私がかつて湾岸戦争当時に勤務したイランでも、既にペルシャ語の字幕がついた「おしん」が放映されていて、日本人だとみると、どこへ行っても、「おしん、おしん」と声をかけられたものです。戦後の混乱期から我慢に我慢を重ねて立ち上がっていく姿がイラクとの戦争で疲弊した自分たちの姿と二重写しになって共感を呼んだのでしょう。また、その後エジプトでもアラビア語の字幕入りのものが放映されて大人気を博しました。

そんなこともあって、戦後のイラクで是非「おしん」を放映して欲しい、そうすれば必ずイラク人の共感を得ることが出来る、と考えていました。

CPAが資金援助して放映している、イラク・メディア・ネットワーク(IMN: Iraqi Media
Network)という放送局があります。イラクの国営TV局は戦争中の爆撃で機能停止したために、国際会議場3階のスタジオでビデオ収録して、バグダッド郊外に設置された放送塔から電波に乗せられています。このIMNに頼んで、何とか放映してもらえないだろうかと願っていたのです。幸い、IMNの顧問をやっている米国人のボブ・ティーズデールさんが、米陸軍の関係で韓国に長年滞在し、その間、日本にも何度もやってきた縁で日本のこと、「おしん」のことに理解があり、二つ返事で引き受けてくれました。

さて、イラク側が放映するといっても、著作権の問題、ヴィデオ・テープを複製する問題、とクリアにしなければいけない問題が沢山あります。IMNはコマーシャルなしの放送局ですので、日本側がヴィデオ作成等の費用を負担する必要があります。

国際交流基金の協力を得て、これらの問題を乗り越えて、漸く、ラマダンに合わせて放映するところまでこぎ着けました。

イラクでは娯楽が殆どありませんから、TVの人気は絶大です。ただ、衛視TVに人気があり、IMNは押され気味です。ラマダン中の最大の楽しみは家族揃って食事をとり、TVを見ることです。「おしん」は午後10時半から2話連続で毎日放映されています。人気も徐々に出てきているようです。私も、バスラでもサマーワでも放映されているのを見ました。
私たちが街を歩くたびに「おしん、おしん」、と声がかかれば、皆が見ている証拠です。
そんな日が近い将来やってくるものと思います。

外務省ホームページ 奥参事官の「イラク便り」:
http://www.mofa.go.jp/mofaj/annai/staff/iraq/index.html