言っておくけれど、
one scene 某日、学校にてact.12 ―side story「陽はまた昇る」
汗の匂いと明るい喧騒、それから機械音。
トレーニングルームは今日も人が多くて、誰もが真剣でも楽しげに体を動かしている。
こんなふうに器具を使ってのトレーニングは7ヶ月していない、いつも山の現場で訓練しているから。
だから機材は勿論のこと、ふれる熱気と匂いも何となく懐かしい。この懐かしさに自分の居場所は「山」になったと気付かされる。
―こういうトレーニング、初総が終ったら次は、いつやるんだろ?
ふと浮かんだ思いに首傾げながら、ランニングマシーンを走っていく。
いつもなら山道のアップダウンと凸凹を駆けるけれど、今は平坦を走るから楽だ。
こんなとき既に日常になっている山岳訓練のキツさが懐かしくなって、もう山の世界が心映りだす。
久しぶりに山に行きたい、雪山の世界に触れたい。
来月は北岳と谷川岳で練習をして、それからマッターホルンへ訓練に行く。
その他にも海外の遠征訓練に参加する予定になっている、但し山岳救助隊の状況次第では変更になるだろう。
なにより英二自身の所属が青梅署のままなのか?いつ異動になるのかは解からないのだから。
―それでも訓練の予定は、あまり変わらないだろうな?
そんな独りごと心に呟いて、ランニングマシーンが時間と告げる。
測定値をチェックしてからセッティングをクリアにすると、英二は隣に笑いかけた。
「周太、腹筋やりたいから協力してくれる?」
「ん、いいよ、」
気軽に微笑んで素直に付いて来てくれる。
ほら、こんなふう素直に微笑んでくれる、それが嬉しくて仕方ない。
一年前の周太は笑わないで、殻に籠ったような雰囲気が切なくてならなかった。
それが今はもう、こんなふう笑ってくれるのが嬉しい。嬉しくて英二は笑いかけた。
「周太ってさ、ほんと笑顔が可愛いね、」
「…こういうとこでいわれてもはずかしいからやめて…でもありがとう」
恥ずかしげに俯いて、けれど赤い頬で微笑んでくれる。
こんな表情が可愛くて見ていたい、こんなにも自分は目が離せない。
こんなに見てばかりいる今に、ふと来月からの日常が不安になりかけてしまう。
もう今月で初任総合は終わり、来月には青梅署と新宿署に分かれてしまうから。
―それでも、電車で1時間で逢えるんだ、
心に思って、自分に笑ってみる。
だって初任科教養の卒業式はもっと辛かった、だから今は笑えてしまう。
もう今は婚約者の立場がある、逢いたければ逢いに行く権利を、この最愛の恋人から与えられたのだから。
そんな想い微笑んで英二はフロアへと膝立てに座り、腹筋の体勢で周太と足を合わせあった。
ふたり絡ませ合い抑えこみ合う足に、嬉しくて英二は恋人へ微笑んだ。
「なあ、周太?こうして足を合わせるのとか、なんかいいよな?」
言って、我ながら可笑しい。
こんなことで「合わせる」だけでも自分は嬉しいんだ?そんなふう笑っていると周太は頬まで赤くした。
「…いまはくちよりからだをうごかすときですから、」
なんだか可愛いトーンで言って、さっさと腹筋運動を始めだす。
こんな照れ屋のところが可愛くて、つい言っておきたくなる。
合わせたいのは、全てだよ?
この体も君と合わせていたい、心も重ねて合わせたい。
そして人生も合わせて君と共に歩きたい、どうか離れず傍にいて。
ずっと傍にいて見つめていたいから、君と視線を合わせて見つめて、幸せな笑顔を見たい。
そしてどうか願うなら、ずっと君の幸せに合わせられるように。
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one scene 某日、学校にてact.12 ―side story「陽はまた昇る」
汗の匂いと明るい喧騒、それから機械音。
トレーニングルームは今日も人が多くて、誰もが真剣でも楽しげに体を動かしている。
こんなふうに器具を使ってのトレーニングは7ヶ月していない、いつも山の現場で訓練しているから。
だから機材は勿論のこと、ふれる熱気と匂いも何となく懐かしい。この懐かしさに自分の居場所は「山」になったと気付かされる。
―こういうトレーニング、初総が終ったら次は、いつやるんだろ?
ふと浮かんだ思いに首傾げながら、ランニングマシーンを走っていく。
いつもなら山道のアップダウンと凸凹を駆けるけれど、今は平坦を走るから楽だ。
こんなとき既に日常になっている山岳訓練のキツさが懐かしくなって、もう山の世界が心映りだす。
久しぶりに山に行きたい、雪山の世界に触れたい。
来月は北岳と谷川岳で練習をして、それからマッターホルンへ訓練に行く。
その他にも海外の遠征訓練に参加する予定になっている、但し山岳救助隊の状況次第では変更になるだろう。
なにより英二自身の所属が青梅署のままなのか?いつ異動になるのかは解からないのだから。
―それでも訓練の予定は、あまり変わらないだろうな?
そんな独りごと心に呟いて、ランニングマシーンが時間と告げる。
測定値をチェックしてからセッティングをクリアにすると、英二は隣に笑いかけた。
「周太、腹筋やりたいから協力してくれる?」
「ん、いいよ、」
気軽に微笑んで素直に付いて来てくれる。
ほら、こんなふう素直に微笑んでくれる、それが嬉しくて仕方ない。
一年前の周太は笑わないで、殻に籠ったような雰囲気が切なくてならなかった。
それが今はもう、こんなふう笑ってくれるのが嬉しい。嬉しくて英二は笑いかけた。
「周太ってさ、ほんと笑顔が可愛いね、」
「…こういうとこでいわれてもはずかしいからやめて…でもありがとう」
恥ずかしげに俯いて、けれど赤い頬で微笑んでくれる。
こんな表情が可愛くて見ていたい、こんなにも自分は目が離せない。
こんなに見てばかりいる今に、ふと来月からの日常が不安になりかけてしまう。
もう今月で初任総合は終わり、来月には青梅署と新宿署に分かれてしまうから。
―それでも、電車で1時間で逢えるんだ、
心に思って、自分に笑ってみる。
だって初任科教養の卒業式はもっと辛かった、だから今は笑えてしまう。
もう今は婚約者の立場がある、逢いたければ逢いに行く権利を、この最愛の恋人から与えられたのだから。
そんな想い微笑んで英二はフロアへと膝立てに座り、腹筋の体勢で周太と足を合わせあった。
ふたり絡ませ合い抑えこみ合う足に、嬉しくて英二は恋人へ微笑んだ。
「なあ、周太?こうして足を合わせるのとか、なんかいいよな?」
言って、我ながら可笑しい。
こんなことで「合わせる」だけでも自分は嬉しいんだ?そんなふう笑っていると周太は頬まで赤くした。
「…いまはくちよりからだをうごかすときですから、」
なんだか可愛いトーンで言って、さっさと腹筋運動を始めだす。
こんな照れ屋のところが可愛くて、つい言っておきたくなる。
合わせたいのは、全てだよ?
この体も君と合わせていたい、心も重ねて合わせたい。
そして人生も合わせて君と共に歩きたい、どうか離れず傍にいて。
ずっと傍にいて見つめていたいから、君と視線を合わせて見つめて、幸せな笑顔を見たい。
そしてどうか願うなら、ずっと君の幸せに合わせられるように。
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