萬文習作帖

山の青年医師の物語+警視庁山岳救助隊員ミステリー(陽はまた昇る宮田と湯原その後)ほか小説×写真×文学閑話

十二月二十四日、寒芍薬―nostalgia Xmas

2020-12-24 23:41:05 | 創作短篇:日花物語
この季にめぐるたび、
12月24日誕生花クリスマスローズ寒芍薬


十二月二十四日、寒芍薬―nostalgia

都会のかたすみ、この花を抱きしめて。

「お花、こんな感じでいかがでしょう?」

微笑んで束ねた花、まだリボンは結わえない。
けれどほら?笑顔が咲く。

「きれい!とっても素敵です、」

頬やわらかに薄紅ふわり、瞳ほがらかに弾く。
気に入ってくれた、そんな笑顔に由希はリボン選んだ。

「リボンのお色は銀色か、明るい赤もいいと思いますよ?クリスマスですから、」

銀色ならシック、赤なら華やかに明るい。
どちらが贈られ主に合うのかな?予想の真中で客が選ぶ。

「銀色でお願いします、三日月みたいなイメージって解りますか?」
「三日月、シャープだけど繊細な感じでいかがですか?」

微笑んでリボンひとつ、銀色ためる艶をひく。
きらきら窓の陽はじいて結わえて、この色は懐かしい。

「あたたかいお部屋だと香が強くなると思います、あまい爽やかな香がしますよ?」

話しながら香る指さき、銀色きらきら光を結う。
この光を何に喩えるのか?なんて私は決まっている、けれど。

「ほんとうに良い匂い、すごく素敵、」

手渡した花に客が微笑む、ほら?薄紅やわらかに頬はずむ。
この花束どうして贈るのだろう、ただ幸せになってくれたらいい。
願い微笑んだ先、コート姿の笑顔ほころんだ。

「こんなに素敵な花束ありがとうございます、きっと喜ぶと思います、」
「喜んでいただけたら嬉しいです、」

笑いかけて店先、花束とコート姿を送りだす。
チャコールグレーの腕こぼれる花の色、リボンゆらす銀色が遠ざかる。

「銀色は月よりも…」

見送る色こぼれて、なつかしい風景を呼ぶ。
銀色きらきら光る記憶、その場所に帰られるのなら?


寒芍薬:クリスマスローズ、花言葉「追憶、懐かしむ、私を忘れないで、中傷、不安を除いて、慰め・いたわり」

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