君にふる光を、
皐月十四日、薔薇―glory
薄紅色やわらかに翻る、ブラウスゆらす風が甘い。
あわい温かい紅色やさしい背中、ふりむかせたい。
でも、なんて呼ぼう?
「…困ったな、」
困る、けれど幸せだ。
こんなこと悩むだなんて考えられなかった、決まっていたから。
君を呼ぶ、そこに「名前」許されなかった。
「大介、どうしたの?」
ほら薄紅色ふりかえる、気づいてくれた。
君を呼べないまま、それでも映してくれる瞳に微笑んだ。
「あなたを何て呼んだらいいのかなと思って、」
笑いかけた真中、ダークブラウンの髪やわらかに光る。
もう白髪がなんて君は言った、その銀色ひとすじ微笑んだ。
「大介の好きに呼んでほしいわ、でも、お嬢様はもうやめてね?」
それだけは年齢ちょっと似合わないでしょう?
もう年経た恋人おどけて笑って、でも耳あわく薄紅そまる。
こんなとこ変わっていないんだな、再び逢えた色彩に笑いかけた。
「名前を呼びたいな、あと、奥さん?」
年を経て、積みあげた時間と想いの涯。
この今こそ許されるなら、君の光と言葉と。
※読切短編の続編になっています
第3話「皐月十三日、山査子―solitaire」
第2話「睦月十五日、菫ーmodesty」
第1話「睦月五日、三角草ーGuardian」
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5月14日誕生花バラ薔薇
皐月十四日、薔薇―glory
薄紅色やわらかに翻る、ブラウスゆらす風が甘い。
あわい温かい紅色やさしい背中、ふりむかせたい。
でも、なんて呼ぼう?
「…困ったな、」
困る、けれど幸せだ。
こんなこと悩むだなんて考えられなかった、決まっていたから。
君を呼ぶ、そこに「名前」許されなかった。
「大介、どうしたの?」
ほら薄紅色ふりかえる、気づいてくれた。
君を呼べないまま、それでも映してくれる瞳に微笑んだ。
「あなたを何て呼んだらいいのかなと思って、」
笑いかけた真中、ダークブラウンの髪やわらかに光る。
もう白髪がなんて君は言った、その銀色ひとすじ微笑んだ。
「大介の好きに呼んでほしいわ、でも、お嬢様はもうやめてね?」
それだけは年齢ちょっと似合わないでしょう?
もう年経た恋人おどけて笑って、でも耳あわく薄紅そまる。
こんなとこ変わっていないんだな、再び逢えた色彩に笑いかけた。
「名前を呼びたいな、あと、奥さん?」
年を経て、積みあげた時間と想いの涯。
この今こそ許されるなら、君の光と言葉と。
薔薇:バラ、淡紅色の花言葉「光輝、愛の誓い」
※読切短編の続編になっています
第3話「皐月十三日、山査子―solitaire」
第2話「睦月十五日、菫ーmodesty」
第1話「睦月五日、三角草ーGuardian」
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