ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

箱枕

2016-10-16 21:14:00 | 昔の道具・暮らし

 

先日の友人の個展が終わりました。

盛況だったそうで、ある程度の年齢の方は、さまざまな古い道具を懐かしがったり、

実物の雪下駄もお貸ししましたので、昔の人の手わざに感心したり…だったそうです。

前回の時も1枚いただいたのですが、今回も「箱枕がいい」と言いましたら、

道具をお借りしたお礼にと、持ってきてくれました。

ちょっと額が大きいので、どこにかけるか思案中です。

 

箱枕、これは以前に私の手持ちの「雛道具の箱枕」をご紹介しました。

その時に「枕」のことも書いたのですが、絵を前にしてまた雑談を…。

 

枕、は要するに頭の下に置くものですが、なぜそういうものを使うようになったか…。

これは人間が二足歩行を始めたからですね。

四足歩行だったものが立ち上がり、二足歩行になった…で何が変わるかというと寝るときの姿勢です。

家で飼われているワンさんやネコさんは、野性とは違いますから、安全だと思えば

とんでもない寝方もいたしますが、野生動物で四足歩行のものは、ほぼうつぶせ寝、です。

そのまま腰を落とし、前足を前に出して体を沈め、その前足にアゴを載せて寝ます。

これは前足が地面についているため、地面を伝ってくる音、遠くにいる敵や獲物の足音を、

アゴを通してすぐに感じ取れるため。またうつぶせていれば、素早くダッシュもできますから。

 

二足歩行をやめた人間は、どんな寝方をしていたのでしょうね。

太古の昔のことはわかりませんが、身体の形と頭の形、これを考えると、

うつ伏せだと自分の手を前で組んで、そこに乗せる…これつまり「動物風?」、

仰向けで寝ると、どうしても頭の下に、なにかほしくなりますね。

医学的には、背骨がまっすぐになるのがいいそうですが、でっぱった後頭部や、急に細くなる首、

人間の身体って、ほんと複雑な形をしているものです。

 

枕の歴史を探ってみると、なぜか「固い素材」が出てきます。着、籐、瀬戸物…

寝られたのかしらんと思ってしまいますが…。日本では、女性が髪を結わなかった時代は、

布団の代わりに着ているものを掛けたと同時に、袖などを丸めて枕にしたという記述もあります。

いずれにしても、「髪」というのは枕の歴史に、影響を与えたわけで、

一応「枕」というものが、使われるようになったころは、みんな高さがあったり四角かったり…

髪をつぶさないための工夫で、結局頭でなく「首」をのせるものです。

今でも京都の舞妓さんなどは使っているはずですが、健康にわるいんじゃないかと、いつも思います。

 

箱枕の絵、もう一度出しますね。

 

       

 

下が丸くカーブしていますが、これは下が平らであるよりカーブしているほうが、

左右にわずかでも傾いて、寝返りをしやすくするためです。

この絵の枕の台は、普通の台ですが、この横側に「引き出し」のついているものもあります。

ここにはたとえば、夜中にトイレや、そのほかのゴニョゴニョ…のための懐紙とか、

大切な鍵とか、旅先だと銭入れとか…そういうものを入れました。

旅籠で寝入った客のもちものを失敬するのを「枕探し」というのは、ここから来ています。

 

いずれにしても、今はアタマをドーンと預けられる枕をつかえて、ほんとシアワセ。

枕が変わると寝られない…とよくいいますが、単に神経質というより、

一人ひとり頭や首の形も違いますから、あったものを使わないと疲れます。

事実、たまにその辺のクッションなど代用してちょこっと昼寝をしたら、

やたら肩がこったり頭が痛くなったりなんてことがあります。

自分に合ったマイ・枕、は、健康的に大事なものではないかと思います。

ちなみに絵の箱枕は、描いた友人のお知り合いのおばあさまのものとか。

まだとってあったのですねぇ。できれば私も一つほしいと思っています。

いや寝るためじゃなくて「古道具集め」で…ですよー。


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4 コメント

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Unknown (古布あそび)
2016-10-17 08:49:28
箱枕の絵を拝見して、昔祖母の家で見た箱枕を思い出しました。

私の小さかった頃ですからもう半世紀以上も前のことです。
その頃はさすがに使ってはいませんでしたが「これが枕!」とびっくりした記憶があります。
これで寝れたのだろうかと、さすがに不思議な感じがしたものでした。

何だか懐かしいですねえ~
あの時代は、前の時代の名残がまだあって
使われなくなった提灯や槍なんかも飾ってありましたねえ。
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Unknown (とんぼ)
2016-10-17 12:41:13
古布あそび様

あの枕は、どうにも「痛そう」ですよね。
昔の人はきっと肩こりがひどかった…?

私も昔のものがなくなっていくのを
ちょっとだけでも見てきた年代ですから、
時として「昔のもののほうがいいなぁ」なんて
思うことがあります。
便利になって、味気なくなったこともいろいろありますねぇ。
返信する
京都では (淑香)
2016-12-11 08:35:19
街中の寝具屋さん(大規模ではないけど老舗)で、箱枕が販売されていますよ。

祇園の和装雑貨、小間物品店(お土産向きでないお店)にもあって、いかにも、な感じの塗のお品でした。黒塗り朱塗り両方あって、布部分もかわいらしい友禅でした。
お値段は割合に高価です。

日本髪文化が好きな方は、現代でもつい買ってしまいそうです。
返信する
Unknown (とんぼ)
2016-12-11 09:39:34
淑香様

コメント、ありがとうございます。
京都は、舞妓さんが地毛で結っておられますから、
まだ必需品でしょうねぇ。
首が痛くないのか、頭痛がしないかといつも思います。
使ってみたら意外と…なんてこともあるのかしら、
なんて思ってみたり。
置物で飾ってみたい気もします。



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