「メジャーの打法」~ブログ編

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続・投球のバイオメカニクス(22)

2011年10月12日 | 投法

 テニスのサーブ。

 投球動作に似ていると言われる。こんな動画があった。体幹の動作はTurnとTiltで違うものの、腕使いはアメリカン投法に似ている。宮西のことばを借りれば、『肩内旋の打法』だ。(20) だから、こちらの動画でリンスカムを出したのはとんだ見当違いということになる。彼は非連続型だから『(肩内転→)肘伸展の投法』なのだ。しかし、あれだけたくさんのテニスプレーヤーがいるのだから、中には『肘伸展の打法』で打っている者もいるのではないか?

 セリーナ・ウィリアムスがいた。当然、姉のビーナスも。その他、これまでに見つけた肘伸展型を書き出すと、

この打法は非連続型(神尾、伊達の場合はアーム式)に似ていて、腸腰筋を使った腰のTurnがあるから、インパクトで体幹が打球方向に正対する。これが識別の手がかりになる。


 女性、アフリカ系に多い、ということになるだろうか・・・。投球動作とも考え合わせると、黒人や日本人には肘伸展型(非連続型)が合っているのだろう。日本人もかつては肘伸展型が主流であったが、強い欧米志向から、肩内旋型に移行したのではないか?と想像するのだが・・・・・ 


 『体育の科学』7月号に載った小池関也「テニスサーブのムチ動作」を読んだ。

この号には、すでに紹介した石井壮郎の「ムチ動作の障害ー投球障害肩の病変予測システムの開発」も載っている。


この論文の被験者は肩内旋で打っている。肘伸展トルクは考察の対象外なのだ。

  • □が肩内旋トルク
  • 左図は各時刻における各関節軸トルクのヘッドスピードへの貢献
  • 右図はインパクト時のヘッドスピードに対する関節軸トルクの貢献を、過去に遡って、時刻別に表したもの


 

 それに対して、宮下充正1980の被験者は肘伸展型のようだ(『打つ科学』p114)。この論文は筋放電休止の項(p132)でも取り上げられていて、「上肢筋にサービスの前半で休止が顕著であった」とあり、言及対象がおそらくは大胸筋であることから、肩内旋型ではなく、肘伸展型であることは明らかだ(cf.ビーナス)。

Miyashita, M., Tsunoda, T., Sakurai, S., Nishizono, H., & Mizuno, T. (1980). Muscular activities in the tennis serve and overhand throwing. Scandinavian Journal of Sports Sciences, 2, 52-58.

 

  つい30年前まで、日本での主役は肘伸展型だった、としていいだろう。動画でもあれこれ理屈をつけているが、要するに、日本の流儀を捨てて欧米に追随するという安易な道を選んだわけだ。野球が非連続型に踏みとどまったのとは著しい対照を見せている。まぁ、テニス界を代表するスターがあのチャラい松岡修造であることからすれば、致し方ないのかもしれないが・・・・・




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