「メジャーの打法」~ブログ編

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続・投球のバイオメカニクス(23)

2011年10月15日 | 投法

 Morris1989。

 『打つ科学』が引用しているこの論文は気になった。

Electromyographic analysis of elbow function in tennis players. Morris M, Jobe FW, Perry J, Pink M, Healy BS.


 テニスのストロークとサーブを論じたもので、Jobeも名を連ねている。Jobe1984とFeltner&Dapena1986の矛盾については、「Jobeが連続型、Feltnerがアメリカン」ということで解決を見たのだったが、こちらの被験者は"nine professional and collegiate level players "であり、黒人選手を多く選んだりしない限り、ほとんどが『肩内旋打法』のはずだ。それなのに、その結論が、

Power in the serve comes from increased activity in the triceps and pronator teres.

とは・・・・・

 Jobe1984の被験者がアメリカン投法だったとしても、似たような結論になり、Feltnerの「肘伸展は伸展トルクによるものではない」と矛盾することになったのだろうか? そうなると、石井先生の「筋電図は測定方法、条件によってばらつきの多い検査であり、その信頼性もまちまち・・・」という疑念も信憑性を帯びてくる。

 しかし、動作解析法を用いた石井のデータには、「加速期における肘トルクは(平均で)伸展値」とあるのだ。そういう投法が存在するからには、Jobe1984も風井も正しく、これまで考察に誤りはない、としたいのが人情。・・・となると、Morris1989に何か誤りがなければならない。

 アメリカン投法については肘伸展の筋電図は下のようになっている。活動の活発な時期がMER前後にあり、リリースに向かって減衰する。

 もし、肩内旋型サーブにおける三頭筋の放電が似たようなものであり、(加速期の区分が難しいのだが)活動の著しい時期が加速期に含まれるならば、「加速期において三頭筋の活動が・・・」という表現も間違いではないだろう。Jobeらは例によって期間全体の平均値を示すのみだからだ。しかし、Morrisは強度を%MMTで測っている。風井やJobeとの違いが数値に反映するはずだが・・・・・

 果たして、Jobe1984の加速期が212%なのに対して、Morrisは平均65%だった!(8) したがって、そこから"power in the serve・・・"などという結論を引き出すのは間違いで、Feltner同様、三頭筋の肘伸展への寄与を疑うべきだったのだ(実際たいしたことないことを小池は示している(22))。

 たとえ対象が肘から先に限られていて、主眼がストロークとサーブの違いにあるとはいえ、こんな杜撰な解釈が許されるわけがない。なんでそのような結論に至ったかと言えば、おそらくは、「投法とサーブはメカニズムが似ている」という『世間の常識』があり、そのことを裏付けたいがために、投球についてのJobe1984の結果に沿ったものにしたかったのだろう。ただの作文だ。

 



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