「メジャーの打法」~ブログ編

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続・投球のバイオメカニクス(8)

2011年07月28日 | 投法

 Jobe(1984) その3

 Werner(1993)も、三頭筋の活動がありながら、トルクは屈曲値を示している。問題は強度なのだ。Jobe(1984)はMMTに則った等尺性の最大筋力発揮時を100%として、筋放電を定量化している。下はレイトコッキング期(ステップ→最大外旋)および加速期のグラフ。


 驚くまいことか、加速期の三頭筋は212%なのだ! Feltner(1986)とJobe(1984)の実験結果は相容れない。FeltnerがJobeを引用しなかったことで、密かに期待していたのだが、やはり本当だった。しかし、これほどまでにハッキリしているとは・・・。

 投球動作を、異なる方法で解析したら、まったく異なる結果を得た。しかもほぼ同時期だから、どちらも逃げ場を失ってしまった。偶然のいたずらか天の配剤か・・・? 投球論は、この著しいギャップを跨いで構築しなければ、本物ではありえない。背負った宿命のなんと重いことよ。

 宮西は、Jobe(1984)を読んだ上で、三頭筋主因説をFeltner(1986)によって否定した。だがしかし、三頭筋が212%の力を発揮する肘伸展を動作解析法で計算したら「伸展トルクは非常に小さく(最大20N-m)・・・」(Feltner)などということがあり得るのか? それが本当なら、この手法自体を疑わなければないだろう。筋電図法は放電と発揮される力に強い相関があるからこそ、バイオメカニクスの有効な手法となったのだから。Jobeの被験者が上腕三頭筋を神経遮断して80%のスピードボールを投げられたら、オカルトだろうに。

 結論は明白だ。Jobeの被験者とFeltnerの被験者では、投法が違うのである。そして、どちらの論文もその動作様式を正しくとらえている。
 Jobeや風井の被験者に動作解析法を適用すれば石井のようになって、Feltnerとはまったく違うものになる。Feltnerの被験者の筋電図を測ればWerner(1993)のようになって、Jobeや風井の筋電波形とはまったく違うものになる。



 



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