ナ国のショウ王が没した後、クリューゲル(ナ国の首都)に諸侯が集まり和平会議が開かれます。
ヤーデ伯側からはチャールズの息子デーヴィドが出席し、各々胸に打算を秘めた列侯を前にして、和平の締結の必要性を説きました。
近年、故ギュスターヴ13世の末裔を騙る無頼の輩がロードレスランド各地で徒党を組み、その治安を著しく脅かしていた。
こうした現状を放置しておくことの危険性を、和平会議に出席したサンダイル諸侯も解ってはいましたが、和平条約の裏で自らの権益を侵す算段がされているのではないか?と疑う諸侯は、容易にデーヴィドの提案を呑むことはできませんでした。
議論百出し、まとまりの兆しも見えない会議の席上、デーヴィドは一つの決断をしようとしていた。
条約の締結を妨げる最大の要因は、ヤーデ伯がサンダイル各地に持つ、土地の支配権であった。(地縁を利用した土地相続への介入は、小領主にとっては死活問題であり、彼らの封建領主である諸侯にとっても同じく由々しき問題であった)。
これら他国に有する所領の支配権を放棄することが、現状で和平会議をまとめるためには、絶対的に必要だとデーヴィドは考えます。
しかし、それをすると、父であるヤーデ伯チャールズと決定的に対立することになり、場合によっては廃嫡を言い渡されるかもしれません。
過去の栄光の再興こそが、自らに課された一族の宿願であると信じて疑わないチャールズは、いまなおロードレスランドの覇権を握るべく、和平会議の隙を縫ってハン・ノヴァ占領のための謀略を仕掛けていました。
ハンの長老連に軍資金と兵糧の供出を命じ、その出方を待っていたのです。
というのも、先だってハンの長老会議がギュスターヴを騙る反乱勢力と繋がっているのを、間諜を通じて知っていたためです。
なので、チャールズが命じた矢銭と兵糧の供出は、偽ギュスターヴ軍に対する兵糧攻めの意味をもっていたので、ハンの長老連がこれを承諾することのないことを、チャールズは知っていたのです。
一度領内に招いた野盗の類が、自ら安住の地を離れるわけもなく、またそうさせるだけの武力も持たないハンの長老連は、唯一、武力蜂起するしか道はなく、そうなればチャールズは諸侯に反論させる余地なくハン占領の絶好の口実を得ることとなり、実際そうなったのです。
覇権の確立によって安定をもたらそうとするヤーデ伯チャールズと、融和路線で和平を実現させようとするデーヴィドの父子の対決は、チャールズに軍配が上がろうとしていました。
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