快読日記

日々の読書記録

「人生をいじくり回してはいけない」水木しげる

2015年04月30日 | エッセイ・自叙伝・手記・紀行
《☆☆ 4/30読了 ちくま文庫 2015年刊(日本図書センターから「人生のエッセイ」シリーズとして2010年に刊行された単行本を文庫化) 【日本のエッセイ】 みずき・しげる(1922~)》

「私は学校からも追い出され、会社に入ってもうまくいかず、そのたびに殴られたり笑われたりした。戦争で片腕を失くしたりもした。それでも平気だったのは、いつも自分にとって楽しいことを見つけ、自分が幸せになる術を身につけていたからだ」(29p)

「九九%のニンゲンは無能なんです。(略)成功を欲しがるのは、無能なヒトなんですよ。優秀なヒトなら、放っておいても成功しますよ」(207p)

「結局、人というのはそれほど幸せじゃないけれど、それほど不幸せな状態でない、っていうことで墓場まで行くんじゃないでしょうかね」(213p)

「だから幸福ってのは、これは線の引き方かもわからんね」(214p)

なんというか、滞った悪い血液がサラサラ流れ出す名言ですね。
一方、好きなことは徹底的に努力しろ!とも言っていて、「うん。おじいちゃん、僕がんばるよ!」と叫びたくなる。

でも、幸せを感じるのも好きなことをするのも、平和でなくちゃできないこと。
エビちゃん(蛭子能収)が「一番大事なのは自由と金。戦争はそれを奪うから嫌」とか言ってたけど、そういうことですわ。

「確かに勇ましいのは気持ちがいいです。「大和魂」だとかなんとか言ってね。でもね、兵隊に行って勇ましくしてると結局死なにゃならん。戦争もその勇ましさが引き起こしたんですよ」(106p)

ここで語られる水木さんの半生はすでに知ってる話も多んだけど、この何度も繰り返し聞くというのがたまらなくいい。
じんわりじんわりしみてくる話です。
こういう話をしてくれる日本人は絶滅寸前かもしれないですね。
今のうちにしっかり入れて、自分の財産にしたい。
妖怪の世界、虫の世界、南国の世界、つまり、今の自分を取り囲む小さな世界以外の、そうじゃない価値観や常識をもった世界がいくらでもあるんだってことを忘れずにいきたいです。

/「人生をいじくり回してはいけない」水木しげる