快読日記

日々の読書記録

「実録 プロレス裁判」別冊宝島編集部

2013年06月09日 | プロレス・相撲・ボクシングなど
《6/6読了 宝島社 2013年刊 【プロレス】》

参院選、猪木が維新から出馬するようですが、プロレスラーってのはほんとに状況が見えてないっていうか、見ないっていうか…、なんだかため息がでる。
常人にははかり知れない何かを持ってるんですね。
あるいは何かを持っていないのか。
そんな彼らへの「そこがいいんじゃない!」っていう姿勢こそがプロレスを慈しむ心なんですよ。
談志師匠をまねて言えば、プロレスこそ人間の業の肯定だ。
セット・ジニアスなんか見てると特にそう思う。

しかし、それにしてもこの本。
詐欺にひっかかったり、せっかく現れたスポンサーからのお金を湯水のように使っちゃったり、8億かけたイベントで視聴率5%しか取れなかったり、ファイトマネーが支払われなかったり、チャンピオンベルト持ったままいなくなったり…という民事訴訟はまだ「バカだな~。さすがだな~。」で済む話。
(かわいそうなのはアジャコングくらい)
でも、練習中の事故で亡くなった練習生とその遺族への酷い対応、場外乱闘で大怪我を負った観客に対する不誠実な態度を知ると、やっぱり気が滅入ります。
リングに立つ人たちに常識は求めないけど、運営する側には絶対必要でしょう。

ひとことで言えば、プロレス業界人たちにどんだけ問題解決能力が欠けているかを指摘する本、というわけです。
「資金不足、常識不足、誠意不足」(154p)とまで言われる始末。
むー。

しかし、それでもあえて言えば、プロレスってのはそもそも相撲やヤクザと同じ、世間からはじかれたりはぐれたりした者たちの受け皿、アジールっていうんだっけ?そんな面があると思うんです。
そういう考え方が通じず、プロレスをスポーツや格闘技か何かと同一視するような精神だけで語られるのはちょっとなあ。

唯一の救いは、ラストに棚橋事件(痴情のもつれから女に刺された殺人未遂事件)を持ってきたことでしょうか。
プロレスラーは愚かなやつかもしれないけど、悪いやつではないんだ、という印象が残ります。

…ん?それでいいのかな。

/「実録 プロレス裁判」別冊宝島編集部