快読日記

日々の読書記録

「ノンフィクションの「巨人」佐野眞一が殺したジャーナリズム」溝口敦・荒井香織

2015年02月19日 | ノンフィクション・社会・事件・評伝
《☆☆ 2/13読了 宝島社 2013年刊 【ノンフィクション 佐野眞一 盗作 パクリ】 みぞぐち・あつし(1942~) あらい・かおる(1977~)》

佐野眞一の節操のない先行出版物からのパクリっぷりはたしかに衝撃的。
創価学会の悪口を書くのに学会の出した本から盗作、までくると軽い敬意さえ抱いてしまいます。
バレたら詫び状、それを何度も繰り返す。
本書でも誰かが言ってたけど、病気かもしれません。
本人はそのたびに“無断引用”とごまかしてるようだけど、まったく違うのはこれを読むとよくわかる。

しかし、それより深刻な問題は、巧みに論点をぼかしすり替えて佐野をかばう出版界の人々の体質だと思いました。
ノンフィクションという“売れない”ジャンルの稼ぎ頭である佐野を擁護しなきゃという理由は馬鹿げてるだけにあわれ。

それから、偏見に基づく誹謗記事「ハシシタ」をほめちゃった“アンチ橋下”な人たち。
敵の敵は味方、みたいな安直な考えが、公正な目を曇らせてしまったのかもしれません。
人間の性質は出生によって決まるっていう差別的な発想と、そもそも戦わなければならない仕事をしている人たちが、“橋下気に入らねえ”っていうんで佐野の記事を評価しちゃうというおっちょこちょい。

結局、なにか不正を犯した人がいても、周りが自分の損得や好き嫌いで動くので、肝心な部分は置き去りになってしまう。
溝口敦みたいな人が厳しく追及しても、“あいつは佐野が嫌いだから”みたいに思われ、結果罪を逃れて笑うのは佐野本人。

どこの世間も似たような構図なんですかね。

この事件の「火付け役」猪瀬直樹にもぜひ登場してほしかったです。

/「ノンフィクションの「巨人」佐野眞一が殺したジャーナリズム」溝口敦・荒井香織