十勝の活性化を考える会

     
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有効求人倍率に思うこと

2019-11-07 05:00:00 | 投稿

平成30年度の有効求人倍率1.61倍で、「仕事を選ばなければ、誰でも仕事に就ける時代である」と、政府は発表している。

かつて仕事は、「きつい、危険、汚い」の3Kと言われたが、最近では「きつい、帰れない、給料が安い」の新3Kやブラック企業などの新語もある。有効求人倍率が示すとおり、求人が求職数を大きく上回っているが、これは非正規雇用求人の増加によるもので、現在、就労者の4割が非正規雇用者で占められている。このような状況では、これからの日本を担う若者にとって、将来への不安は拭えまい。

 

バブル崩壊後、非正規社員の雇用は、景況変動への対応、企業の生き残り策として変動費化してきた結果である。戦後の経済成長を支えてきた日本型雇用慣行である年功序列、終身雇用は見直され、企業と従業員との関係や絆も変化し、転職率も高まっているようだ。

 

私は、日本政策金融公庫(中小企業事業)という金融機関に勤めていたが、中小企業は、理念・目標で社員同士が絆で結ばれている。そして中小企業は、ベクトルが同じ方向に向かっていなければ、利益を上げることが出来ない。今後の日本は、少子高齢化に伴う人口減少で、30年後の人口は9千万人前後が予想される。この数値は4人に一人が欠ける状態である。単純に計算すると、ロボットなどが普及していなければ国内総生産が減少して、日本の国力は減退することになる。

 

私は昨年、「人口減少を考慮した十勝の活性化」などの講演を行ったが、人口減少に関してはすぐに解決できない問題である。そして講演準備のために、市町村役場に行って、「正規社員」と「非正規社員」の意識の相違、すなわち「ベクトルの違い」に気付いた。

十勝の市町村役場における非正規職員の割合は、全国と同様に約4割であった。行政機関には様々な組織があるが、正規職員と非正規職員のベクトルが一致していなければ、大きな力や良いサービスを提供することが出来ないと感じた。

 

一方、国内の食料基地の一旦を占める十勝の農業においても、「非正規社員」の割合が高くなっている。農家では後継者がいても嫁や婿に来る者が少なく、跡継ぎがいないため離農し、農家戸数が減少しているのが現実である。日本の食料自給率が問題となっているが、新鮮で安心・安全な食が失われていくことを思うと極めて深刻な状況である。

 

人間の生存基盤は労働である。行政機関、民間企業など様々な組織が役割を分担し、有機的に統合していくのが国であると思うが、日本の国力の弱体化を感ずるのは私だけであろうか。

「十勝の活性化を考える会」会員

 

 

 

注)非正規雇用

「正社員の雇用」を意味する正規雇用に対することばであり、「非正社員の雇用」と同義である。非正規雇用に含まれる労働者は、パートタイマー、アルバイト、契約社員、派遣社員、請負労働者、期間工、季節工、準社員、フリーター、嘱託など実にさまざまなタイプの労働者であり、正規雇用以外の労働者である。


 非正規雇用の概念は、正規雇用との違いをみることにより明確となる。両者には三つの点で大きな相違がある。第一に雇用の安定性の相違である。正規雇用の労働者は終身雇用慣行の対象であり定年までの勤務が可能である。企業は不況に直面しても可能な限り雇用継続に努める。他方、非正規雇用の労働者は、雇用期間が限定されており、企業は短期雇用を前提として雇用している。契約更新が続いて、結果的に長期雇用となることはあるが、企業が不況に直面すると契約更新を停止したり、解雇することとなる。


 第二は、企業は、正規雇用の労働者をフルに活用するため、能力開発を進め、配置転換を行い、長期的に育成していくことを目ざしている。他方、非正規雇用の労働者については、長期雇用を前提としていないから、企業にはそもそも育成していこうという発想がない。したがって、非正規雇用の労働者は職業生活が長くなっても、職業能力の水準がなかなか高まらない。


 第三は、両者間には労働条件に大きな格差がみられることである。正規雇用の労働者は、長期勤続することによってしだいに職業能力が高まり、それに応じて賃金も高まっていく。賞与や退職金の支給対象でもある。他方、非正規雇用の労働者については、職業能力がそれほど高まらないこともあって、賃金はあまり高まらない。賞与や退職金の支給される非正規雇用の労働者はきわめて少数である。非正規雇用の労働者が結婚し、世帯を形成し、子供を産み育てていくことにはかなりの経済的困難が伴う状況にある。


 非正規雇用は1990年代に入って急増し、2005年(平成17)ごろには雇用者数全体の3分の1を占めるに至った。多くの企業が正規雇用を減らして非正規雇用を増加させるという人事政策を推進したからである。このような人事政策を推進したのは、第一に、国内外における厳しい企業間競争を生き抜くために、賃金などの労働コストの低い非正規雇用の活用が効果的なこと、第二には、経営の先行きが不透明であることから、企業活動の状況に応じて増減が容易である非正規雇用は企業経営の安定をもたらすこと、第三には、労働者派遣法の改正により、派遣社員を利用できる業務範囲の拡大が行われたり、労働基準法の改正により労働契約可能期間の上限が1年から3年に引き上げられるなど、非正規雇用を利用しやすくなったこと、を指摘できる。

非正規雇用の労働者のなかには、多くの主婦パートタイマーのように労働時間の自由度が高いことから正規雇用よりも非正規雇用という雇用形態での働き方を望む者もいるが、そのようなパートタイマーを除くと、非正規雇用という雇用形態を望む労働者は、非正規雇用全体のなかでは少数派である。[笹島芳雄]

(出典:小学館 日本大百科全書

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