小学校を卒業する頃、テレビから化粧品会社のCMが流れてきた。都会的でキラキラした軽快なサウンドと共にこちらも都会的で洗練された綺麗であろう大人の女性の歌声が聞こえてきた。その当時、両親、兄弟、祖父母と同居する所謂3世代同居、自宅の周りには広々とした畑が広がる農村地帯。校庭や近所のお寺の境内が遊び場で、近所の駄菓子屋でインベーダーゲームをするのが楽しみだった典型的な地方の田舎っ子だった。聴いた音楽と言えるかどうか耳にする音楽はテレビで流行っている歌謡曲。大晦日家族全員でNHK紅白歌合戦を観ても全く違和感も世代間も感じなかった時代。洋楽なんて時々テレビCMから流れてくる歌謡曲じゃないやつという認識。全くと言っていいほど興味が無かった。今でこそブラックミュージックに傾倒しているが、この当時、田んぼや畑の畦道には、ジェームス・ブラウンもマービン・ゲイもいなかった。ブラックミュージックの入り口は当時デビューしたてのシャネルズだ。和ドゥーワップから黒人音楽の扉が開いたというのが偽らざる事実。上京して大学生になりナメられたくないので、昔から聴いていたていで話していたのはただのハッタリ。このCMソングが流れると、思春期を迎える俺にとって、キラキラした都会とそれを歌う大人の女性への憧れが強くなってきた。田舎暮らしの反動からかキラキラした都会への憧れを覚えながら自分の部屋から見る夜の風景、キラキラ光っていたのは、たくさんの星と猫の目くらいなものだった。その綺麗な歌声の女性の顔を見たくて、近所の電気屋に行った。曲名を伝えてレコードを出してもらう。当時田舎にはレコード屋など無く電気屋が家電と一緒にレコードを売っていた。出してもらったシングル盤にはソバージュの予想を遥かに超える綺麗で大人の女性がいた。貯めていたお小遣いで即購入。自宅のボロいプレーヤーで何度も何度も聴いた。春先という時期も相まって、暖かい春風の中、自分の人生が明るく開いていく感覚を今でも覚えている。この時期の体験に起因しているのか、シティーポップを今でも愛聴している。また、今毎日のようにレコードを買っているのは、経済的かつ環境的にレコードが買えなかった反動に違いない。当時愛用していたキャップは阪神タイガース。田渕の大ファン。今はニューヨークヤンキースを愛用している。歳を取り帽子だけはだいぶ都会的になったようだ。そして今日、そのニューヨークヤンキースのキャップを被り映画を観に行く。そう、竹内まりやのあれである。俺だけだが宇都宮発東北本線車内には【不思議なピーチパイ】がずっと流れている。
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「毎日のようにレコードを買っているのは、経済的かつ環境的にレコードが買えなかった反動に違いない。」・・・・・・ってものすごくよくわかります。私もそうです。毎日のように買ってます。(笑)
当方37歳。
人に歴史あり。
音楽に歴史あり。
reggae、dubが好きです。
高校生時代にUAのプライベートサーファー、little tempo、こだま和文と流れ今やreggaeやdubの世界に。
久しぶりに実家に帰り、当時のカセットテープを聴けば内容同じ。
うむー。
と唸り、酒を飲む日々です。