『グリーンブック』、ピーター・ファレリー監督、2018年、米。130分。原題は、『Green Book』。
「グリーン・ブック」をご存じだろうか。
__「黒人ドライバーのためのグリーン・ブック」。アメリカ合衆国による人種隔離政策時代の1930年代から1960年代に、自動車で旅行するアフリカ系アメリカ人を対象として発行されていた、旅行ガイドブック。郵便集配人だったヴィクター・H・グリーンにより1936年に創刊。(Wikipediaより)
この作品は、体裁はロード・ムービー、背景は、1962年における人種差別問題である。
しかしいわゆる人種問題をテーマとした社会派作品とは異なり、二人の全く異なるキャラクターの出会いと交流に時間が割かれる。したがって内容的には「普遍的なヒューマン・ドラマ」が近いと思う。
主人公の一人は、天才黒人ピアニストのドン・`ドクター’・シャーリー。もう一人は、ブロンクス生まれのイタリア系アメリカ人、トニー・リップ。
二人とも実在の人物で、実話が元になった作品。
トニーの息子、ニック・バレロンガが脚本に参加している。彼は、「父の話を全てテープに取った」らしい。
トニーの本当の名字は、バレロンガ。口が上手いことから「リップ」の異名をとったという。そんな父親のする思い出話はさぞかし面白かったんだろう。幼い頃は目をきらきらさせて、大人になってからはテープを用意し、聞き入る息子の姿が目に浮かぶ。
息子のニックは監督、脚本家、俳優を務める映画業界人なので、いつか映画にしようと思っていたんだろうな。
主人公は、ご両人とも2013年に他界している。
作品に話を戻すと、この二人のキャラクターが本当に素敵だ。
親しみやすさから言えば、下町育ちのトニーに分があるかもしれない。何せ、片やカーネギーホールに住み(!)、心理学博士でもある天才ピアニスト。たやすく同一化は出来ない(笑)
「(こう言っては何だけど)ザ・ガサツ」と「ザ・繊細」のコメディ風の掛け合いは、ファレリー監督のお家芸でもあり、テンポも良く真骨頂。
ちなみに自己肯定感の高さで言えば、二人は似たもの同士である。
そして会話の言葉がシンプルなだけに、表情や、一挙手一投足から目が離せない。
「君の世界は狭い」と言ったドンの心。「暴力ではなく、品位を保つことが勝利だ」と言い放つ強い目。ピアノを弾くドンを満足そうに見守るトニーの表情。そしてラストシーン。
二人の役者さん、ヴィゴ・モーテンセンと、マハーシャラ・アリに拍手と感謝を送りたい!
第91回アカデミー賞、作品賞/助演男優賞(マハーラシャ・アリ)/脚本賞受賞。主演男優賞(ヴィゴ・モーテンセン)/編集賞にノミネート。
第76回ゴールデングローブ賞、最優秀作品賞(コメディ/ミュージカル部門)/最優秀助演男優賞(マハーラシャ・アリ)/最優秀脚本賞受賞。最優秀主演男優賞(ヴィゴ・モーテンセン)/最優秀監督賞にノミネート。
その他、トロント国際映画祭観客賞など50賞を受賞。
ケンタッキーと言えばフライドチキンだろ!フライドチキンは手で食べるんだ!(byトニー)↓