「懐かしき人」
共に山を下りてもらえなければ我々は死罪になってしまうと岳飛に言う万俟离。同情心は少しもないのかと。「死罪にはならない」と静かに返す岳飛。万俟离は「朝廷の恩寵を得て統帥に出世しておきながら、今になって朝廷に逆らう気ですか?」と言う。岳飛は何を言われても「決意は変わらない。帰ってくれ」と言い部屋の奧へ行ってしまう。
「待て!兄弟まで見捨てる気か?」と言う王貴。孝娥は「勘違いしてるわ」と言い、部屋の中を見させる。「何も見えないの。ここから動けると思う?」と孝娥は話す。岳飛の目がこれほど悪くなっていると思っていなかった王機は驚く。
孝娥は「万俟殿、王貴、今日のところは帰って。陛下も事情を理解してくださるわ」と言う。
趙鼎の霊位の前で琴をく小満。“金炉の香冷え 鴛鴦の帳にわずかな残り香 誰も問わぬ 江南での憂い 沈約 病を患い痩せる 春衣 抜け落ちるを覚える 清明 近し 杏花 吹き尽くす 薄暮れに東風 緊し”と詠んでいた父を思い出す。形見の玉佩を手にし“金炉の香冷え 鴛鴦の帳にわずかな残り香 誰も問わぬ 江南での憂い 沈約 病を患い痩せる 春衣 抜け落ちるを覚える 清明 近し 杏花 吹き尽くす 薄暮れに東風 緊し”と小満も泣きながら言う。
そんな小満を窓の外から劉半仙と独眼竜も見て泣いていた。そこに孝娥と烏詩瑪が来る。
「何してるの?」と烏詩瑪から聞かれ「趙さんが哀れで…」と答える劉半仙。烏詩瑪は「大の男がみっともない」と言い、その場から2人を追い払う。
「丞相の令嬢から身を落とすなんて…つらいわよね。趙さんの気持ちをどう鎮める?」と素素に言う烏詩瑪。素素は「小満は秦檜に復讐するため、私と武芸を修練してるわ。でも習得には時間が必要よ」と話す。「秦檜がいるかぎり恨みは消えないわね」と烏詩瑪は言う。
素素は戻ってきた張用から、岳飛が医者の治療を何度も断わっていると聞く。「だが医者いわく、治療しても治らない可能性が高いとか」と。「岳殿が戦えないから、宋の将来は一層、危うくなる」と言う梁興。梁興は「君は以前、岳殿の目の治療をした。もう一度頼む」と素素に言う。しかし「私には無理よ。それに…会いたくない」とためらう素素。張用は「素素さんはまだ兄貴に思いを寄せてるのか」と言う。「だって…」と素素は困ってしまう。
素素と梁興は岳飛と会う。2人の声を聞いて、岳飛はすぐ素素と梁興だと分かる。
梁興は「眼疾を患ったと聞き、見舞いに来たんだ」と話す。素素が鍼を打ってくれると。さらに梁興は「良い知らせを持ってきたんだ。金軍が挙兵したと聞いて1万以上の民兵を集めた。岳殿の命令を待ってるぞ」と言う。しかし「俺は一介の民だ。戦など関係ない。今は自分と家族の安寧を願うのみだ」と返す岳飛。
梁興が持ってきた薬を煎じに行き、部屋には岳飛と素素だけになる。
素素が岳飛に鍼を打ち始めると「父君は息災か?」と聞く岳飛。素素は「うん」と答える。「君は変わりないか?」と岳飛が言い、素素はまた「うん」とだけ答える。
打った鍼を取り、素素は「症状が悪化しているようね。一時的に疲労を緩和する鍼を打ったの。私の力では治療は無理よ」と話す。「心から感謝している」と言う岳飛。
素素が出て行こうとすると、岳飛が「素素さん、すまない。俺には最愛の妻がいる。他の人は愛せない。俺のことは忘れろ。君を大切にしてくれる人が現れるよう願ってる。そうすれば、俺の胸のしこりも消える」と言う。その時、梁興が部屋に入ってくる。
梁興は素素の顔を見て何かあったとすぐ分かる。素素は梁興の手を取り岳飛のもとへ行くと「言い忘れてたことがあるの。来月、梁兄さんと結婚する」と話す。驚いた梁興も話を合わせ、岳飛は喜ぶ。「俺も必ず祝いに駆けつけるぞ」と言う岳飛。
帰り。「兄貴を安心させるための方便だろ」と素素に聞く梁興。素素は「ありがとう」とだけ言う。
汴京の景色を見ながら「これから、ここに住む」と兀朮は翎児に話す。「私は兄を失ったわ。約束して、必ず身を守ってね」と言う翎児。兀朮は「前回での戦では気の緩みから韓世忠と岳飛に大敗北を喫した。今回は決して負けない。倍にして返してやる」と言う。
1か月足らずでまた金に領地を奪われ、高宗は激怒し「岳飛を連れてくるまで参内は許さぬ」と秦檜に言い放つ。
岳飛が下山しない責任を問われ、斬られそうになる夢を見る秦檜。
秦檜はどんな病も治し、死人すらも生き返らせるという信空和尚に会いに行く。しかし、今日は7人の治療を終え修行に入られたと会ってももらえない。秦熺は無理やり修行の場に入り、秦檜もある人物の治療をしてもらいたいと頼む。「その者は国の危機と民の苦しみを取り除いてくれます。慈悲を示すにふさわしい人物かと」と。
背を向けたまま信空和尚は「秦殿よ、お主が言っているのは岳飛のことだな」と言う。「なぜ私の姓を?」と驚く秦檜。和尚は「知っているのはお主の姓だけではない。名もよく存じておるぞ。今の朝廷で丞相を努めておる。治療してほしい人物とは岳飛。つまり岳元帥であろう。お主は文官で岳飛は武将だ。お主らは“文官は筆を提げて天下を案じ、武将は馬上で乾坤を定む”を実践していた。協力して朝廷を支えていたのだ。だが都の南遷をきっかけに意見を違え、互いを敵視するようになった。お主は岳飛に何度も下山するよう頼んだが、聞き入れてもらえなかったのであろう。今の私の言葉に相違はないな?」と言う。
「なぜ知っている?一体、何者だ?」と言う秦檜。信空和尚はようやく秦檜に顔を見せる。秦檜はその顔を見て「劉将軍。なぜ、あなたが?」と眼を見開く。
岳飛が岳霖と歩いていると「“天は蒼々たり 路は茫々たり 眼 すでに傷み 心 いまだ滅びず”」という声が聞こえてくる。立ち止まった岳飛は「誰の声だ?」と岳霖に聞く。岳霖は「和尚ですよ」と答えるが「いや違う。俺はこの声をよく知っている」と言い、岳飛は目を覆っていた布を外す。
霞む目で痛みをこらえながら和尚を見る岳飛。「15年ぶりだな。自分が仏門に入るとは想像もしていなかった。お前と再会できたことに驚いている」と言う和尚の顔をはっきりと見た岳飛は駆けて行く。「本当に劉将軍ですね」と岳飛は涙を流す。生きておられたとは…と。
「なぜ雲隠れしていたのですか?」と岳飛が聞くと「私は俗世のことを忘れ、仏門に入った。再会できるかどうか、縁に任せていたのだ。まさか本当に再会できる日が来るとは思いもしなかった。直接見えぬのが残念だ」と和尚は言う。「将軍も視力を失ったのですね」と言う岳飛。
崖から飛び降りた劉韐は、倒れているところを師匠に助けられ治療をしてもらう。半年、養生し命を長らえることはできたが、目だけはどうしても治らなかった。
絶望し死を願っていたが、毎日、廟から聞こえてくる鐘の音や僧の読経の声に耳を傾けていると次第に心が落ち着き始めたと言う信空和尚。長年、戦場で殺りくに明け暮れた日々は民の苦しみと死に満ちていた、私は仏門でようやく心の平安を見いだしたのだと。
和尚は娟児に薬の塗った布をあぶらせ、岳飛の目にあてる。
「我々の15年ぶりの再会に秦檜が関わるとは思いもしなかった」と言う和尚。岳飛が「なぜ秦檜の言いなりに?」と聞くと、和尚は「秦檜に頼まれたからではない。私は天下のためにここへ来たのだ」と返す。
「俺はこれまで国土を回復するために一心に戦ってきました。しかし結局、私は陛下の捨て駒にすぎなかったのです。陛下は戦があると私を駆り出し、勝利すると俺を疑いました。そして戦のたびに和議を結びます。蘆山で過ごす間にすべてを悟ったゆえ下山したくないのです。下山したところで、戦に負ければ殺されます。勝てば陛下は和議を望むでしょう。和議になれば用済みの俺は殺されます。結局、死から逃れられない。下山するのは無意味です」と岳飛は言う。「仏門に入る前、私もそのように考えた。何の方策も持たぬ朝廷が和議を強硬に進めたせいで私は犬死にしかけたのだ。お前に背負われている時、私はこう考えた。“もう奮闘する必要はない”と。背負う荷が重くなればなるほど我々の足取りは遅くなっていく。荷を下ろすべき時かもしれない。お前にも決断の時が来たのだ。背負った荷を放棄してしまうのか、それとも担い続けるのか」と話す和尚。
岳飛は治療のおかげで目が見えるようになり「私は山から下りるべきなのでしょうか?」と聞く。信空和尚は「下山こそ、お前に定められた道だ。運命には逆らえぬ」と答える。
馬車に乗り下山する岳飛を見送る孝娥と娟児。「人はさまざまな夢を抱くものよ。昔は私にも夢があった。でも今は、ただ2人の生還だけを願ってる」と言う孝娥。また一緒にこの景色を眺めたい、まだ蘆山を散策し尽くしていないと。「人はなぜ争うのですか?仲良くすればいいのに」と娟児が聞く。孝娥は「夫が言ってたわ。“平和を取り戻すために戦うしかない”と。金と戦う使命を担う人は、宋の英雄よ」と答える。
ーつづくー
素素の気持ちは分かるけど、素素が好きな梁興は胸が痛かったかも(;_;)
劉韐が生きてたーーーーーー!!!Σ(・ω・ノ)ノ
えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ???
まさかの展開すぎて、本当にビックリ。
初め劉将軍て誰だっけ?って思ったくらい、本当にまさかすぎて。
絶対、あの時に死んだと思っていたから。
岳飛にとって大切な人だったから、生きてて本当に良かった(;д;)
岳飛の目が治ったのも良かったけど…戦にいくことはいいことなのか…(o´д`o)=3
孝娥もまたつらい日々をおくることになりそう。
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姐姐仰るように、梁興が更に優しくて。
彼女の医術でも治らず、
その結果、劉将軍が!!!
劉将軍は秦檜のためでなく、
宋のため、岳飛のために目を治してくださったのですよね。
”宋の英雄”として気持ちを入れ替えてほしいです。
素素と梁興は、とってもお似合いなのに。梁興も辛い。
他のカップルが皆幸せになっているから、素素にも幸せになってほしいです。
「懐かしい人」とは劉将軍だったんですね。
私も、人相が変わっていたのでピンときませんでした。
どんな病も治し、死人すらも生き返らせるという信空和尚になって生きていたとは!
視力を失った同士の再会、本当にびっくりでした。
「結局、死から逃れられない。」と岳飛自身も分かっているけど、やっぱり「定められた道。運命にはさからえない」のですね。
目が治ってよかったのか・・・・・それも、ああ運命。
目が治らずあのまま、気持ちも荒んでいく岳飛も見たくないけど、治ったら治ったで、苦労しか待ってないかと思うとそれもツライ。
劉将軍は岳飛の目を治しましたが、その後の岳飛の行く末は予想しているのでしょうか?何だか気になりました。