よみがえるケインズ

ケインズの一般理論を基に日本の現代資本主義を読み解いています。
カテゴリーが多岐に渡りすぎて整理を検討中。

22:第6章 所得、貯蓄および投資の定義ーケインズは巨大化する資本装備に注目した

2021年06月13日 | 一般理論を読む
 今回から第6章 所得、貯蓄および投資の定義 に入る。

   計4回+「付論 使用費用について」2回の長丁場である。難解だとは言いたくないが簡単ではない。「期待」の概念を縦横無尽に駆使しないとわからない。

 所得、貯蓄、投資を定義することで恐るべき結論が出てくる。その一部は第3章有効需要の原理で展開されている。

所得の定義

 まず、所得を定義しようというわけである。

 売上高―外部購入費用が所得(粗利益)なのではないか?

 ケインズは違うと言う。なぜなら、利益の一部は期首の資本装備からもたらされたものであるから、今期の所得からこれを引かなければならない、というのだ。

 ここで「あ、減価償却のことね」と考えると以降理解できなくなる。
 しかし、ほぼ全員、減価償却のことと理解しているのではないだろうか?

 ここでケインズは期首資本装備と期中売上をトータルにとらえて論考を進めている。複式簿記の考え方である。ケインズの考え方はこうだ。

   期首資本装備額+期中売上高―外部購入費用=
付加価値(所得)+期末資本装備額
 
 これは、全くその通りである。ここまではついていける。
   賃金を外部購入費用とするか付加価値とするか、大きな問題であるが、ここでは、外部購入費用としておく。つまり付加価値(所得)は企業家が最大にしようとする費目である。

 しかし、先ほどのケインズの考え方に従えば、付加価値(所得)の一部は期首資本装備額に由来する。それを控除しなければ期中の付加価値は分からないということになる。

 ここで、それを検討するために外部購入費用が要素費用使用費用に分けられる。

要素費用:外部購入費用のうち全額(全価値)が完成品に移転される費用
使用費用:もっぱら資本装備の維持改善に使われる費用で新規設備投資も含まれる。


 勘のいい読者はBS/PLの費用項目と資産項目だと思われるだろう。ここではそれでもいいが、この使用費用には「期待」が入っていることに留意したほうがいい。そうでないと減価償却のことになってしまう。

 先ほどの式は、外部購入費用を二つに分けて

   外部購入費用=要素費用+使用費用だから

   期首資本装備額+期中売上高―使用費用―要素費用=
付加価値(所得)+期末資本装備額

と書き換えられる。

 実はミクロとマクロの接合などと言う経済学者は多いし、この使用費用が巨大化するとどうなるのかという問題と格闘した経済学者は多い。多いが、きちんと織り込めている理論は一般理論を除いてないのである。だから読むべきなのである。脱線だった。

使用費用には二種類ある

 ケインズはさらに使用費用を二つに分けている。引用すると

使用費用①:「企業者がその期間を通して他の企業者からの購入とみずからの働きとの双方によって資本装備を維持し改善させたこと、他方では生産を行うために装備を使用することによってその価値を消耗あるいは減価させたこと、これら双方の差し引き正味の結果」
これは資本装備の増価と減価の差し引きである。

使用費用②:「仮に彼がそれを生産を行うために使用しないと決意したとしても、それを維持し改善するために支出したほうが有利になる、ある最適額」

 ケインズはまとめて使用費用としているが、ここではあえて分けて考えてみた。その理由は次回以降で明らかとなる。

 ケインズの時代は重工業の時代である。資本設備は巨大なものとなり、使用費用も巨大な影響力を持つようになった。

 製鉄所をもう一つ作るか、とは簡単にいかないのである。



 

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