よみがえるケインズ

ケインズの一般理論を基に日本の現代資本主義を読み解いています。
カテゴリーが多岐に渡りすぎて整理を検討中。

政府の財政を考える ⑤ 政府の持つ再分配機能

2023年10月10日 | 先進国の経済学
*≪中央政府(いわゆる政府)+地方政府(地方自治体)+社会保障基金≫を連結したものを「一般政府」と呼ぶ。以下「政府」と呼称する。

政府の再分配機能について

 2021年の国民経済計算をもとにしている。

 

 家計の所得は財産所得、事業所得、賃金から成り立っている。合計301兆円だ。

 そこから税と社会保険料が差し引かれて183兆円となり、これが手取り収入である。というのが世の中で議論されている「そのように見えている世界」だ。
 
 ところが2021年の家計消費支出は288兆円となる。105兆円はどこからきたのだろうか?

見えている世界から抜けている再分配

 社会保険料には企業負担というものがある。国民経済計算上は賃金にこれ(雇主の社会負担)を加えたものが雇用者報酬となる。賃金総額の推移を追う時に用者報酬を追うと保険料が上がれば雇用者報酬も上がったように見えるので要注意となるが、家計消費の原資であることには間違いがない。

 上記の上記の図に雇主の社会負担と現金による社会給付(ほぼ年金)を加えたものが下図になる。

 

 雇主の社会負担は企業から家計への再分配、現金による社会給付は政府の再分配機能の結果である。再分配後の家計所得は429兆円となる。そこから税と社会負担が発生し、可処分所得は311兆円となる。これが家計消費支出288兆円の原資となっている。税と社会負担は賃金だけが負担しているわけではない。

 消費÷可処分所得=0.925。つまり消費性向は92.5%ということになる。2021年の家計調査によれば「二人以上の世帯のうち勤労者世帯」の消費性向は62.8%だ。再分配後の消費性向が30ポイント以上上がっているのだから日本の現在の再分配はうまく行っていると言ってもいいのではないか。

 賃金水準の低下、それに伴う絶対的貧困層の増加の問題は、まず需要の拡大によって賃金水準を上げることと税と社会負担の不合理な逆進性に資金を投入することである。

 次回は現物社会移転を取り上げる。これには発想の大転換が必要だ。

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