第1編でケインズは古典派(リカードに源を持つ論客達)を相手にしていた。第2篇でケインズは目前の資本主義を相手にしている。それは、我々にとってもなじみ深い資本主義である。それは、資本装備が巨大化し「スクラップアンドビルド」が簡単ではなくなった資本主義であり、それは、ケインズが言うところの「アニマルスピリット」が欠けた「とりあえず」やってみようとはならない、長期期待が投資に大きく影響する資本主義であ . . . 本文を読む
この章はなぜ何のために存在するのか? 「第2編 定義と概念」は次の章から構成されている。第4章 単位の選定第5章 産出量と雇用の決定因としての期待第6章 所得、貯蓄および投資の定義付論 使用費用について第7章 貯蓄と投資の意味―続論 ケインズは第2編冒頭に次のように記している。「私が本書を執筆するさい、議論の進捗を図るうえで最も障害になり、そのためなんらかの解決を見るまでは自分の考えを適切に表 . . . 本文を読む
雇用量は期待で決まる! 第二の問題、「経済分析において果たす期待の役割」についての論述である。ただし、詳しくは「第12章長期期待の状態」を待たねばならない。均衡と期待の根本的な違い 均衡は事後的に訪れるものだが、雇用量は事前に「期待」によって決まる。これは日々投資量を決定している資本家には自明のことだが、世間知らずで事後的にしか経済事象が見えない経済学者にはどうしても理解できないことらしい。期待は . . . 本文を読む
「第二編 定義と概念」が書かれた理由は以下のとおりだった。 第一に、経済体系全体に関する問題にふさわしい単位の選定。 ⇒第4章 第二に、経済分析において果たす期待の役割。 ⇒第5章 第三に、所得の定義。 ⇒第6章 第6章は所得の定義に充てられており、そこから貯蓄および投資を定義することで恐るべき結論が出てくる。その一部は第3章有効需要の原理で展開されている。1 所得 . . . 本文を読む
使用費用についての精緻な検討は既に済ましたのでそちらを参照いただきたい。26:第6章付論 使用費用の厳密な考察 結局、使用費用は確定せずXはXのままであるhttps://blog.goo.ne.jp/thegeneraltheory/e/9c4930128dded4273c72c840f269adf2使用費用は使用された費用ではない この付論冒頭でケインズは以下のように述べている。「 . . . 本文を読む
ケインズの悪魔の恒等式:人は「貯蓄の分だけ」貧しくなる この章はハイエクの「強制貯蓄説」批判にあてられているが、少々面倒ではある。論争当時に生きた人には分かることが分かりにくくなっている。詳しくは岩波文庫版(上)383ページの訳注をご参照いただきたい。 現代に通じる問題としては、「中央銀行が国債を引き受けて政府が投資を増やせばどういう事態が起きるか」あるいは「銀行が信用創造を行い、企業がそれを原資 . . . 本文を読む
第3編は何気ないが重要な編:有効需要の構成要素、消費と投資の探求 第3編消費性向は以下の章からなっている。第8章 消費性向(1)―客観的要因第9章 消費性向(2)―主観的要因第10章 限界消費性向と乗数 一般理論を根底から覆すためには①「人は豊かになればなるほど消費性向が上昇する」という事実を示すだけでよい。あるいは②「低下した消費性向の分だけ必ず投資が増える」という事実を示すだけでよいのである。 . . . 本文を読む
限界消費性向低下の法則:豊かになるほど消費に回す割合は減る この章ではいろいろな議論が展開されているが、要は消費性向は安定した数値をもつ所得水準が上がるほど低下するということにつきる。なぜそんなことが言えるのか?人間の性向に関する経験的事実に基づいている、というしかない。消費性向の客観的要因として考えられるもの 消費性向=消費/所得と定義される。もちろん、このとき消費性向は様々な値を取りうる。ケイ . . . 本文を読む
内部留保や国債償還が消費に及ぼす影響 非常に重要な節である。ケインズは消費性向の客観的要因として6点を挙げていたが、この節ではマクロ経済が消費に及ぼす要因を取り上げている。 企業は減価償却を行う。減価償却をしなければ資産は減りやがては価値を産み出せなくなる。これが個人の住居なら住むに耐えない廃屋となってしまうだろう。この減価償却は内部留保と言う形で積み上がっていく。これが経済全体で見て期中に支出 . . . 本文を読む
いくら消費するか(貯蓄するか)は個人の判断である。主観が決める。これは争いがない。では利子が上がれば、今保有している現金を消費するのではなく、貯蓄して(増えてから)将来消費しようとするのだろうか?この問いに答えたのが「第9章消費性向(2)―主観的要因」である。利子率の上昇は貯蓄を減少させる 古典派・現代正統派は、人が消費するか貯蓄するかを決めるのは利子率だ、と考える。利子率の上昇は貯蓄を増やし、 . . . 本文を読む